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リハビリ記録その32

2005-7-10 山内正敏

 北スウェーデンでは30年ぶりとも40年ぶりとも言われる連続猛暑で(熱夏日=最高気温25度以上が1週間連続)、昨年の雨冷夏で陽光を浴びれなかったキルナ住人はせっせと日光浴をしています。昨年、日光浴不足から免疫不十分となって冬に風邪ばかり引いていた人々が例年になく多かったので、このチャンスに免疫力を高めない手は無いという訳です。ところが私は運悪く、この日光浴義務の週を トロムソ での学会(+その準備)で潰してしまい、土曜日の昨日になって、やっと陽光を楽しんでいる次第です。
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 という事で、今年の学会旅行は一番近いトロムソでした。車でたったの5時間ですから、昨年( 米国コロラド )一昨年( フィンランド )と違って旅行準備も実際の旅行も気楽なもので、現に、帰った翌日にはリハビリのトレーニングで新記録を出したり、こうして記録を書いたりするぐらいに疲れから回復しています。過去2回は帰宅後1週間ほどダウンしていました。
 今回は同僚の車に車椅子と普通の低い歩行器を積んで行きました。この歩行器は普段の外出に使っているものと違い、研究所に置いてあるものです。昨年の秋にはじめて低い歩行器を使うにあたって手に入れたのですが、雪の上を歩けない事が分かって別の歩行器に変える羽目になった際、折角ブレーキ等を特別に調整したものをそのまま福祉課に返すのも勿体ないので、研究所で使う為に研究所に改めて借りてもらったものです( リハビリ記録その28 を参照)。旅行ではより軽くてコンパクトな歩行器を選ぶべきですから、今回はそちらを持って行ったのですが、軽過ぎる歩行器は、雪に有無にかかわらず屋外には向かない様です。到着した夕方に腰を伸ばすついでにちょっと散歩したのですが、アスファルトの凸凹に軽くつまずいた際に軽い前のめりになっただけで、歩行器が前に走り、そのまま転倒してしまいました。低い歩行器で転倒したのは初めてで、介護が泡食っていました。同じ程度のつまずきは、もう一つの(普段使う)低い歩行器でもしょっちゅう起こしていますが、ちょっと重いお陰で歩行器が前に走るなどという事はありません。幸いかすり傷で済んだものの、身体障害の度合いと路面状態の両方に合致した妥当な歩行器というものが確かに存在するものだと痛感しました。軽ければ良いという訳ではありません。
 とは言え、そのくらいで外出を止める私ではありません。なんといっても素晴らしい陽光の爽やかな真夏なのです。毎日散歩に出掛け、会議の中休みの水曜午後は、他の連中がバス(普通のバスなので私には乗れない)でフィールドトリップ(=観光)をしているさなかに、全長 1000m余り(標高差 35m)の トロムソ大橋登って きました。これは2年前の研究所の慰安旅行( 病気後の初旅行2泊3日 )の際に車椅子で渡ろうと思い立ったものの、介護が疲れていて断念したもので、今回はそれを車椅子どころか歩行器で登った訳です。で、頂上で引き返せば良いものを、恐らく対岸にベンチぐらいあるだろう(=そこで休めるだろう)との期待で 対岸まで渡った のですが、確かにバス停まで行けばベンチがあったものの、陽光を浴びるポジションに無かったので、休み無くそのまま反対車線の歩道を戻って来てしまいました。往復だけで約1時間半。で、そのまま今度は港の防波堤を先端近くまで行って橋に一番近い所から橋を見上げ、トータルで4〜5キロ歩いた挙げ句にやっと部屋に戻りました。疲れたの一言です。低い歩行器で一気に3時間も歩いたのはもしかしたら初めてかも知れません。それでも転ばなかったのですから、軽くて危険な歩行器でも危険と分っていれば歩けない事はありません。
 他に前回の旅行からの進展といえば、会議参加者との夕食に介護無しで行った事でしょう。移動の時に誰かに一緒にいて貰い、あとナイフで切る作業など簡単な事だけ肩代わりして貰えば、食事自体は自分で出来るようになったから可能になりました。いままでは、移動の際に経験者が必要でした。今回の様にバリアフリーのホテルがそのまま会議場になっていて、そこに他の会議参加者が泊まっているから可能なのでしょう。さすがにスカンジナビアの 会議場付きホテル だけあって、物理的にバリアフリーなのがデフォルトで、過去2回とは違います。ちなみに5泊している間に、車椅子の客を2人も見ました。
 ただ、会議場のパソコン(発表用もインターネット用も)のマウスに右クリックと左クリックの両方があって(典型的ウインドーズ)、私の手で操作が困難だったのには閉口しました。私のように指に深刻な問題がある場合、マウスは(マック型)の単一クリックでないと用を成しません。ネット環境のバリアフリー化ももっと進めて貰えると有難いですが、今の世界マーケットの趨勢は、手先の不自由な人間には不便な方向に走っているので(例えば留守電一つにしても、基本型はボタンの極めて小さなものに変わって、キルナではもはや私の扱える留守電は売っていない)、ホテルでバリアフリーなネット環境を整えるのは難しいかも知れません。もっとも、そのお陰でインターネットから完全に離れた一週間となって、それはそれで良かったのですが。
 発表は、せっかくの楽な旅行という事を利用して、口頭とポスターの計2件を準備しました。これもリハビリの一環で、ポスター会場には車椅子だけでなく歩行器でも行ってみたりしています。しかしながら、歩行器にせよ車椅子にせよ、しょせん人込みの中を行けるものではなく、身障者にポスター会場は向かないというのが結論です(ポスターをじっくり見れたのは口頭セッションが開かれているガラガラの時)。発表にしても、例えば出入り口に一番近い場所だと通行人が多すぎて危険だし、逆に一番奥だと全く身動きが取れません。他の場所は論外です。
 今回は私以外に学生の初発表もあって、出発前はむしろそちらの方に時間を取られました。大学院が急速に広き門になった影響で、たまたま手取り足取り教えなければ(教えても?)何も出来ない学生が昨年来たのですが(ちなみに私が選んだ訳でない)、不自由な身体でそういう学生を指導するのは不可能ではないかと感じる次第です。入学試験も進級試験もない制度の限界を感じています。
 まあ、何はともあれ、5泊6日の旅行をスムーズに終え、次は日本です。10月の体育の日3連休当たりに行く事になりそうですが、今回、介護が旅行中ずっと風邪気味できつそうにしていたので(だからこそ夕食は他の人と出掛けた)、日本行きの際のアレンジはまだ決まっていません。

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 最後に例によって軽い(?)話。今回は 北海道固有通貨論 です。暇を持て余している方はどうぞ。
 それから、会議中にロンドンテロが起こりましたが、ニューヨーク911やマドリード311の時に比べて騒ぎは小さかったように思います。いつかは来るだろうと予想されていたからかも知れませんが、戦争での民間人被害と同じく、民間人を狙ったテロですら習慣化すると反応が(自分を含めて)鈍くなる恐ろしさを少し感じました。

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