2017-9-3
山内正敏
雨と寒風ばかりの例年より寒い8月でしたが、2001年の異常に寒い8月を経験している身としては、許容範囲で、7月ほどの密度はないにしてもかなり練習しています。
訓練で進展のあったのは、足首固定器を使わない(=足に補助具を何も付けない)歩行器歩行で、今夏の歩行の殆んどはこれでした。坂の少ない道なら最長10kmを2時間20分以内で歩くようになったほか、山手のほうへの半日旅行(
8km登りを1時間40分)
でも足首固定器なしで敢行して、研究所からアパートまで8kmも行き帰りともに1度ずつ歩いています。現時点で一番調子の良いときは、足首固定器をつけた時の85%程度の速度が出ており、100mだけなら分速100m(時速6km)も達成しています。ピッチも毎分104歩を10分以上続けられるようになっていて、満足出来る夏でした。
もっとも、調子が良かったのは前半だけで、後半は疲れがたまったのか、ムラのある歩きになっています。あと、足首固定器をつけた時より足を高く上げるようになった為に、足首固定器をつけて歩く際に下りの安定性が落ちて(下りは出来るだけ重心を低くするために、足もあまり上げないほうが安定する)、その結果、参加した月末の市民レース(健康5.5kmコース)では、下り部だけで例年の7分も余分にかかって、2010年以来の悪タイムに終わっています。タイムがリハビリの進展を必ずしも示さない好例ともいえるでしょう。
さて足首固定器を使わなかった(だから松葉杖も少なかった)最大の理由は、かかとの脇に出来た魚の目です。先月、トラック1万メートルを歩いた際に、靴のはめ方が悪かったのか、足首固定器がかかと外側を擦り続けたのが原因です。その擦れ跡が悪化して皮膚の奥深くまで化膿して、魚の目になってしまいました。そのため、足首固定器をつけると痛みが襲い、足首固定器なしで歩かざるを得なくなりました。6週間たった今もまだ治っておらず(かなり浅くはなった)、そのあとに出来た転倒擦り傷(全治3週間と2週間)のほうが先に治っている次第です。
転倒が多かったのは、足首固定器を使わないで歩く際に、使用時と同じぐらいに気を抜いた(集中力が切れた)のが原因です。足で踏ん張ることを深く考えずに歩けるようになるまでには、まだ何度も転倒が必要なようです(スキーみたいなもので、転倒自体は通過儀式みたいなもの)。
歩行以外では、先週ようやくプールが再開しました。10週間も間が空いているので、例年ならかなり逆戻りしている筈ですが、今年は意外なほどに、この逆戻りが少なく、気持ちよく訓練しています。なので、夏の成果は確かにあったということになりそうです。
最後に無駄話です。
新しい介護が来るたびに色々オリエンテーションをするのですが、その中で一番難しいものに指関節の柔軟があります(未だに効果があがっている)。その際、ベテランが右手右足で手本を見せると同時に、新人に左手左足を担当してもらうのですが、新人の3分の1ぐらいは、左右対称にする真似が出来ず、もっとも単純な、右足首を右にひねる動きですら、それを見て、左足首を右(左でなく)にひねろうとします。指の関節を普通に曲げる動きすら、右手が左手に変わっただけで混乱する次第で、このことから、「左右対称を理解するのは大変だな」とずっと思っていたのですが、近年、難民出身の介護を経験する機会が増えて、普通のサポートで同じ間違いを何度もする人が(難民に限らず)結構多いことに気付いて、真似での応用自体が困難なのでないかと思い至りました。
考えてみれば中学高校の数学で公式を当てはめる問題というのがありますが、まったく同じ公式に異なる数字を入れるだけの問題(応用でなく、数字と公式が与えられている基礎問題)を答えられない人がいるわけで、実は「公式を丸暗記」して、その公式に「数字を入れる」という行為が高度な素養を必要とするのかも知れません。そういう世界と縁のない環境で育ってきたので、その意味でもこちらの介護を受ける経験には新鮮なものがあります。