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リハビリ記録その64

2008-3-2
山内正敏

 せっかく日が高くなって来たのに、雨期に入ったのか、大雪だの曇りだのの日々が多くて、暖かく春らしい快晴はまだ1度だけです。こちらに長い人に聞くと、年々冬の曇天が増えているそうで、寒地で雲が増えると云うのは二酸化炭素以上の温室効果があるから、それで冬が年々(と云っても10年平均で)マイルドになっているのかも知れません。ちなみに、二酸化炭素による温暖化だと冬は晴れの日が増える筈ですが、ICPPはそういう事実には一言も触れておりません。

 理由はともかく、問題は距離歩行に不向きな日々が続いているという事です。というのも、私の場合、温度はさほど問題ではなくて、路面の状態が問題だから。もっとも、距離歩行に不向きな日々が続いている本当の理由は、天候よりも寧ろ雪かき方法の変化にあります。
 スウェーデンでは今冬から『アルファルトに優しい』雪かき方法(もちろん理論上の話)というのが採用されて、雪を完全にさらうのでなく、1センチ程の雪を残してさらうようになっています。そうすれば車のスパイクタイヤによるアスファルトの被害が少なくなる『筈だ』との事。
 たった1センチだけをきちんと残す事は、完全にさらうよりも数倍技術的に難しく、その分雪かきの手間が増えます。結果的に、大通りの車道しかきちんと雪かきする余裕が無くなります。一方、雪かきの効率が落ちた結果、歩道とか、横断歩道とかの雪かきがおろそかになり、1センチどころか5セント以上残るケースも少なくありません。
 一体、スパイクタイヤの影響が大きい大通りは、1センチ残そうが残すまいが轍部分は直ぐに雪が無くなって、1センチ残す効果はありません。車道から雪が無くなる一方、歩道の方は、唯でさえ通りに比べて高い歩道が、雪で更に高く(しかめ斜めに)なって、とても道路とは云えない代物になっています。現に横断歩道のいくつかは激しい段差になっていて、介護に歩行器を支えて貰っても横断が困難です。更に、もしも0度を超える日が一度でもあると、それが融けて再凍結する事により、交通量の少ないところや歩道は歩行不可能な程にツルツルになります。キルナはまだマシですが、600キロ南のウーミオの同僚などは最悪だと云っていました。
 要するに『アルファルトに優しい』1センチ法は、歩行者にとって(特に歩行器や車椅子の老人/身障者にとって)非常に悪い雪かきです。そのせいか、今冬は車椅子や歩行器で街の中心部を出歩く人が減っています。これは、老人等の運動不足を引き起こし、足腰を弱める事、すなわち長期的な医療福祉費用の増大を意味します。そればかりか、悪路面が原因の事故も多くなっていて、夏の道路補修が少なくなる以上の余分なコストがかかっているしか思えません。もちろん『アルファルトに優しい=地球に優しい』をコスト以上に優先すべきだという議論は存在し得ますが、近視眼的に道路を守ったところで、余分な事故や医療福祉の必要は、結局はエネルギーを余計に使うという事ではね返るのだから、長期的には決して地球に優しく無い訳です。
 まあ、スウェーデンは実験国ですから、こういう机上の空論を実際に試してみたりする訳で、今は仕方ないと諦めていますが、今冬限りで止めて貰いたいものです。止めなかったら、例によって全政党に投書するしかありませんが。

 そんな訳で、歩行にとっては最悪の冬です。しかし、そういう悪コンディションを訓練に結びつけるのが工夫というもので、悪い路面状態を、寧ろバランス歩行の訓練の場として活用しております。現にその成果があがったのか、膝バンド無しでの歩行が、ここにきて急に楽になった気がします。例えば1キロ先のスーパーへの買い物ですが、行き(下り)はともかく、帰り(登り)は雪の降る前のタイム(25分以内)で歩くようになっています。また、平行棒歩行の訓練では、片足を持ち上げた状態からだと、そこで両手を離して足を踏み出せるようになりました。これは体重のかなりの部分を片足で支えて膝に無理が来ない事を意味しています。一方、病院廊下での松葉杖訓練(これは膝バンドを付けている)では、距離が8往復(2キロ半)1時間35分程度にまで伸びました。昨年は6往復で膝が限界でしたから、膝の筋肉の持久力もついた事になります。ただし、素っ気ない廊下で8往復ともなると、足の疲れよりも退屈さとの闘いで、いくら雪道より安全とはいえ、そして、いくら膝が楽になったとは言え、これ以上距離を伸ばす気になれません。
 膝と腰の両方の筋肉を必要とする『起き上がる』訓練でも進展があります。例えば、今まで2年近くプールの階段4段目(水深 50cm)でしか出来なかった 四つん這いでの腰上げ が、先週からは、右足を5段目(水深 35cm)に置いても(左足は4段目のまま)1〜2回出来るようになりました。左はまだまだですが、とにかく2年ぶりに半段上がった事になります。それから、朝の床運動での正座から膝立ちなる訓練では、手を使わずに腰を伸ばす事が出来るようになっています。今年の目標が『床から自力で歩行器に立つ』事ですから、その予備ステップがクリアーされた事になります。
 一方、手の方はシャワーの際に脇の下や肩や背中の下の方を(力を入れて)洗う事が出来るようになった他、車椅子でなく歩行器(於研究所)を使った状態でのトイレ(小便というかも尿袋を空ける事:歩行器を壁で支えながら、歩行器の上に座っての作業)で、殆ど自力で尿袋の開閉が出来るようになっていて、秋までには介護を煩わさなくても良くなる予定です。これは、出張の際に車椅子でなく歩行器だけで行けるかも知れない事を意味していて、今年の5月のオーストリア出張こそ車椅子で行きますが、それが車椅子での出張の最後になるかも知れません(そう期待しています)。トイレ問題の軽減は、同時に、介護時間を更に減らせる事をも意味しています。

 もっとも、実際の介護時間削減は雇用関係の問題が絡み、これはこれで結構 面倒 です。というのも、2005年当たりを境に、私の介護は他の身障者の介護よりも楽になって来ていて、特に昨年からは、他の介護に不公平な程に楽になっているので(現在の3人目の介護がもう一ヶ所掛け持っていて、違いを色々教えてくれる)、今までと違って、介護が自ら辞める可能性が殆どないからです。そんな訳で、市の担当者(日本で云うマネージャー)には、遅くとも2009年頭から介護時間が減る事を既に予告していますが、実際にどうなるかは、その時になってみないと分かりません。
 こうなって来ると、出張や旅行に介護を連れて行く場合にも『公平』かどうかを考える必要が出て来ます。というのも、旅行というのは少なくとも私の場合は介護の役得であって(家事とかリハビリ訓練とかの面倒が無いのに、タダで外国に行けて、更に出張手当まで出るから)、しかも、キルナ市の身障者のうちで外国旅行(ちなみにキルナの感覚ではラップランドは外国ではありません)をするのが私だけだからです。身障者の旅行の際の介護の労働時間の規定をキルナ市が今まで作らなかったのも頷けます。
 普段の介護で楽している上に、更に『私の』介護だからという理由だけで旅行に行けるというのは、他の身障者の所で働いている介護に対して不公平極まりません。だから、来年からは、今までみたいに、介護に順番で行って貰うのでなく、旅行に最適の人(語学+健康状態+子供の有無)を選ぶと云う方針に変える事になると思います。特に日本旅行に関しては、介護を連れて行くのは今回が最後の予定で、次回からは、3年前にも模索したように(今回の出来にもよりけりですが)、日本国内は現地介護のみで過ごし、日本までの往復だけを世話してくれる人を探す事になると思います。それどころか、もしかしたらストックホルム空港での現地介護のみで済ませるかも知れません。
 その日本帰省ですが、2週間前にやっと青信号がそろいました。1ヶ月前は諦めかけていたのですが、せっかく青信号が出そろったので、行く事にしました。OKの出た翌日にはチケットを予約かつ購入して、日本でのホテルや介護のアレンジも終わりましたが、費用は、介護の旅費やホテル代(健康な頃はホテルの必要がなかった)などで、純粋に飛行機宿泊費だけでも健康な時の3〜4倍に当たる65〜70万円前後という数字になっております。ちなみに 前回(2005年10月) は45万円でした。
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