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リハビリ記録その61
2007-12-2
山内正敏
本格的に普通の冬の寒さがやってきて、道路が滑り難くなって、歩き易くなっています。しかし、寒さの方が問題で、今日なんかは吹雪の癖に最高気温すら−10度を超えず(風と湿度で数値以上に寒く感じる)、昨日共々、本格歩行訓練なぞ不可能な天気でした。
スリップの心配が減ったので、当初の予定どおり、膝バンドなしでの歩行器訓練を再開しました。道路は雪かきしてあるとは云え、路面が雪に覆われているので、車輪の摩擦が大きく時間がかかりますが、その分、夏には出来ない良い訓練になっています。最長は、4キロを1時間44分で、雪の前に歩いた5キロ2時間に比べてそこまで遜色はありません。現在、買い物程度(往復2キロ)は大抵膝バンド無しで行っており、春までには、もっと早く歩けるようになるだろうと期待しています。
一方、夏に何どもタイムを計っている6キロコースの方は、膝バンドをつけて1度歩きましたが、雪の重さに2時間以上もかかって(夏のベストは1時間12分)、さすがに疲れました。なお、このくらいの歩行時間になると、介護には寒過ぎるので、途中まで付き合ってもらったら(一ヶ所、スノースクーター専用道との交差点があって、ここは雪が溜まるので介護に手伝って貰わないと渡れない)、その後は、ゴールのショッピングセンターで待ってもらうというアレンジになっています。
屋外での訓練の減った分、室内での訓練が増えています。例えば病院の長い廊下(往復320メートル、半地下で殆ど人が通らない)での松葉杖訓練を再開し、昨日は7往復(単調!)を1時間半かけて歩きました。松葉杖は昨年に比べてタイムは全然変わっていませんが、春先に杖の長さを長くした効果(腰痛対策)で、明らかに姿勢が良くなっていて、今年の冬は、このまま、タイムよりも姿勢の改善して、一歩一歩のバランスの安定感を高めたいと思います。数値に出難い進展だけに、若干のもやもや感はありますが、プールとかでの進展が着実に見えているので焦りはまったくありません。
また、アパートでの自転車訓練も増えています。昨年までは全力で15分も漕ぐと尻が擦り剥けて、数日休まなければなりませんでしたが、今年は脚力が良くなったのか、パンツを変えたのが良かったのか、15分ぐらいでは平気で、数日連続で20分以上という時もあります。昨年は尻の問題の他に腰痛もあって、やりすぎると、それで夜が眠れなかったりしたのですが、今年は春からの腰痛対策が功を奏して、こちらの問題も軽減されており、それで前月は1ヶ月で19日も漕いでいました。それでも、やりすぎると尻が擦り剥けるのはどうしようもなく、一気に30分ではなく、10〜15分セッションを3回ぐらい行うのが良いようです。
プールでは階段4段目(水深50cm)の四つん這いで、片足ずつ上の段に持ち上げる訓練を新しく始めています。床運動の際にも類似の訓練を始めていて、両膝で立った状態で、両手をベッドにつけて片足ずつ片膝にするのを繰り返しています。訓練の目的は、歩行器に自力で立ち上がる事です。というのも、片膝をたてた状態になれれば、歩行器に手をつけて腰を浮かすのはそこまで難しくないからです。片膝をたてる為には、腹筋や脚力をつけるだけでなく、腰をもっと柔らかくする必要があり、腰の柔軟運動を兼ねて、こういう訓練に落ち着きました。プールでは、他に階段3段目(水深65cm)で膝に手を当ててバランス/立ち上がる訓練で、立ち上がる際に手すりを省略して一気に腰を伸ばす事が可能になっています(先月の
動画
より更にスムーズに立ち上がっている)。
話は変わって、介護の話。昨年から何度も問題点を書いている、EUの労働時間の規則(毎日連続11時間の休みを取らなければならない)ですが、最新情報によると、スウェーデンだけでなくヨーロッパ中で不満の声が上がっていて、それでEUコミッションが規則の見直しを始めるという報道がつい最近ありました。今頃か、という気はするし、本当に改善されるのかまだ予断は許しませんが、それでも施行した年にこういう動きがあるのは有り難い事です。とにかく、介護の中でこの規則を喜んでいる人は一人もいませんから。
介護と云えば、介護の一人(5年前からの人)がタクシーの免許を取りました。正確には試験に通って、健康診断待ちの状態ですが、とにかく、近々、タクシー運転手のアルバイトをフリータイムに始めるようです。免許をとるのにかかった費用の元を取る為だけでも週末(彼女は平日の朝昼担当で週末は休み)を5回程働かなければならないみたいですが、その後は二次収入源となる訳で、悪い話ではありません。ただ、介護を止めてタクシー運転手になるかというと、その気はない様で、理由は楽だから。まあ確かに、僕の場合、介護のやる事は少ないかもしれません。ただ、それ故に気になる事がずっとあって、それは、楽な仕事をずっと続けると、いざ、僕が介護を必要としなくなった時に困るという事です。もちろん、介護はキルナ市に正式雇用されていて、僕が介護を必要としなくなったら、キルナ市が別の身障者を斡旋しますが、普通はデマンドが遥かに高い訳で、僕の正式介護(2人)の健康状態を考えると(あちこちが痛いと訴えている)、僕以外の人間の介護はかなり厳しいのではないかと思ってしまいます。実際、高齢者の介護をやっていた中年女性が、その高齢者が亡くなった後に、別の人の介護をしようとしても上手く行かずに、最終的に失業する例(キルナ市は3ヶ月間だけ猶予を出して、その間に次の身障者を見つけなければならない)が多く、楽なのが良いとは限りません。そんな訳で、今回のタクシー免許には僕もほっとしました。
安心した所で、キルナ市の担当者に、もしも僕が結婚した場合の介護について尋ねました。病気になる前には結婚話は進んでいた僕も、病気でとても結婚なんか考えられない状態になって、ずっとリハビリに専念していましたが、ここ1〜2年、急に生活(トイレなど)が楽になって、ようやく、結婚と云うものを(相手がいればの話ですが)具体的目標として考える事が出来るようになりました。
結婚・同棲した場合の(国から認められる)介護時間と、独身の場合の介護時間は、スウェーデンでも違っていて、
(1)家事は全て配偶者の責任で、介護時間に含まれない。
(2)介護にあたる部分には、社会保険庁から介護費用がでる。
(3)その介護職を配偶者/親/子がやっても良い(やらなくても良い)。
(4)介護職ばかりか、キルナ市のように介護をアレンジする担当すら配偶者/親/子がやってもよい。
現在の僕の介護は週87時間で、家事の部分を引き、更に近い将来の身体状態を考え、結婚相手に介護職を優先させると、それ以外につく介護時間は多くて週20時間で、それは現在の正規介護が不要になる事を意味しているのと同時に、プライベート時間を確保出来る結婚生活が可能な事も意味しています。
それにしても、面白いと思ったのは、1990年代に僕を悩ませた『妻の仕事』問題(キルナというのは環境的に仕事がないとやってられないので専業主婦は不可能)が、少なくとも僕の病気の『お陰』で解決している事で、まあ、病気の全てが悪い訳ではないという実利的な例です。加えて、インターネットの普及やアジア食の人気で、キルナで普通の東洋人が生活する為の環境は格段に改善されていて、1990年代とは雲泥の差です。だから、今や、相手を見つける事だけの問題になってます。もちろん身障者の身の上では、それは非常に厳しい訳ですが。
最後に例によって無駄話。3人目の介護(50%)はポーランド出身で、今年の春にキルナに来たばかりの人ですが、こういう人がいるとポーランドの政情というのが良く分かります。なんでも、双子の大統領・首相コンビは、アメリカの歓心を買う事ばかりで、EUとの関係を構築しようという気が全く無かったのだそうです。それで失業率が異常に高くなって多くの人が外国に出稼ぎに出ているとか。そんな訳で、先日の選挙の結果に喜んでいました。
あと、昔の介護で1年半前に
鉱山会社(LKAB)
に移った人の話では、鉱山会社の好況は相当なものらしく、今年の純益が1000億円を越える見込みだそうです。会社の規模で割った純益としては、マイクロソフトやコカコーラよりも上だそうで、自慢していました。キルナ市民は、暫くは中国に足を向けて眠れないようです。
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