Encode is "iso-2022-jp" or just "Japanese" (if the text is "moji-bake")

[リハビリ記録その52]     [ホーム]     [概略表]     [リハビリ記録その54]
============================================

リハビリ記録その53

2007-4-8
山内正敏

 3月下旬に季節外れの雪解けを迎えたキルナは、アパートの前の道を除いて(!)アスファルトの上を歩けるようになって、歩行訓練には良い季節を迎えています。ただし、アパートの前だけが2週間近く歩行不可能な程に凍結かつ凸凹で(4月に入って寒波が戻って氷のまま)、それを避けて病院敷地や急坂の駐車場を通って通りに出ておりますが、それでも氷を避ける事は不可能で、運動靴が使えないのが癪に障るところでしょう。キルナ市街で歩行不可能な道は身障者が5〜6人も入っている我がアパートの前の道以外になく、どうにも異常な街の対応ですが、その根本原因は除雪作業の下請け化にあるようで、近年はやりの民営化がサービスを低下させる例のようです。そのうち、効果的な投書をしようと思いますが、このところ他の件で立て続けに投書したのと、この件はスウェーデン語でなければならないのとで、ちょっと精神的余裕がありません。それほどに投書の類いを書いた(論文も書いたなあ)1ヶ月でした。

 投書の一つ目はスノーモービルと歩道の交差点で、スノーモービルが引きずる雪で歩道に30〜40センチの段差が出来て、それでとても歩けない状態だったので、その改善を要求するメールをスウェーデン語で出したものです。身障者や老人の通行量の多い歩道だったので、誰かがクレームを付けるだろうと思っていたのに、3週間近く放っとかれ、仕方なしに私が書いたのですが、これは投書の直後から即座に対応がありました。どうやら、誰も「誰かがクレームする」のを待っていたようです。
 2つ目の投書は先月にも書いた介護の航空券の問題(介護が病気の時に代わり介護がそのチケットを使えない問題)で、それを今度は連立政権の4党(前回は野党の最大政党に出した)に スウェーデン語で出した ら、一両日中に3党から好意的な返事が来ました。石は投げてみるものです。
 3つ目は投書ではなく問い合わせで、9月末のフランス出張の際に現地介護が可能かどうか、現地の旅行案内に尋ねたもので、私からのメールに加えてフランス人主催者からも別途問い合わせて貰ったら、さすがに無視出来ないとみえて捜してくれる模様です。もっとも、その前に、フランス人の知り合い(物理博士を取得したあと修道女になった人)にフランス全国組織の介護サービスの名前を調べて貰って、その名前を現地の旅行案内に提案していますから、無理な調査を頼んでいる訳ではありません。
 4つ目も投書というより寧ろクレームに近く、NHK 並びに、その下請けの制作会社に出したものです。ただ、問題が日本のテレビ取材全般に当てはまりそうだったので、 記録に残すつもりで書きました。 書いてみれば原稿用紙20枚近くにのぼり、こんな分量は確かに腹を立てなければ書けない訳ですが、だからといって制作会社(下請け)を単純に責める気にはなれません。というのも、生放送番組の第1回にリハビリ(リハビリと研究の両立)を取り上げるという視点そのものは褒たいからです。今までオーロラがらみの取材依頼(テレビ取材は全部断っています)は数多くあったものの、福祉やリハビリがメインというのは今回が始めてで、それで取材に協力(+出演)する気になった訳ですから、腹立ちは腹立ちとして別にとっといて、番組には協力する予定です。
   NHK 衛星放送(BS-1)
   2007年4月15日 午後 21:10~22:00
   「地球アゴラ」
 それにしても理解しがたいのはNHK本体の対応で、この件に関して3日たった現在、NHKから一言も返事がありません。取材全体を通しても一度も連絡が無く、NHK側の責任者の名前も分かりません。いくら下請け制作会社とNHKとNHKエンタープライズの3者の代表が角突き合わせて番組を作っている(生放送ですから)とはいえ、私から見えるのが制作会社だけというにはいただけないものです。BBC ではこんな事はありませんでした。総務省によるテレビたたき(テレビ番組を総務省の検閲下において、戦前のように思いの通りに動かそうという腹黒い意図が見え見え)が激しい昨今、こういう隙を見せるようでは困るのですが。

 文句はともかく、3月最後の週は取材でリハビリの映像を大量に撮っており、ついでに、一番古い記録との比較と言う事で、一番古い映像(発病10ヶ月の2002年8月〜10月)を久々に見ました。実は、このテープだけ今まで私のホームページにアップしていません。というのも、2年前にまさにアップしようとした時に、バックアップを取る前にパソコンがクラッシュした(原因は Power Point のプログラム)からです。それ以来、再ひ読み込み・編集する気合いが抜けて今に至っていましたが、今回の取材を機会にパソコンに読み込んで、1週間以上かけてやっと編集が終りました(まだ画像抜き出し作業が残っているけど)。これで 動画のバックログ がやっとカバーできた事になります。こうして古い画像を編集すると、今までに随分と回復した事が分かりますが、その回復は先月も止まっていません。

 まずプールですが、階段2段目(水深80cm)で手を使わずにしゃがむ訓練を始めた他、階段3段目(水深65cm)での膝頭に手をついての昇降は毎回10回は出来るようになっています。瞬間的な静止時間(静止の方が難しい)も長くなって最大2秒ほど静止する事があります(大抵はダメですが)。また、階段6段目(水深20cm)の手放し静止は1分続くようになりました。
 毎朝の床運動では、右腰(股関節)の筋肉の強化の為の腹這い訓練+四つん這い訓練(いずれも足を蹴り出したり上げたりするもの)がややスムーズになった他、腹筋訓練の方も、仰向きで両足を上げる訓練で、腰を浮かせる事が出来るようになっています。また、膝立ち訓練では、今まで膝に手をついて座り上がって(立ち上がって)いたのを、四つん這い状態からいきなり膝立ち出来るようになっています。そんなこんなでメニューが難しくなって、平均してトータル50分ほどかかっています。
 懸案の腰の方ですが、歩行器をやや高くして歩くうちに、腰をちゃんと伸ばして歩くのが普通となり、それによって、歩行器が再び低く感じられるようになったので、更に2cm程高くしました。ここまで高くなると、自然と姿勢が良くなって、歩行器はそれに乗っかかって体重を支える為でなく、単にバランスを支える為のものになります。姿勢の変化は松葉杖にも影響し、松葉杖の丈も数センチ高くしましたが、それで歩くとしっくりした高さで、今までが低過ぎた事を実感します。それは歩行器も同様で、今にして思えば、つい1ヶ月半前まで5cmも低い歩行器で歩いていた事が信じられません。これでは股関節が傷む筈です。
 ただ、良い事ばかりではありません。老人の腰が曲がるのと同じく、筋肉の弱い私は腰をやや曲げる事によって、腰椎〜脊椎への負担を抑えていた面もあり、体重が真っすぐにかかるようになって、早速腰の上の方(腰椎)の回りの筋肉が筋肉痛を起こすようになりました。これは歩行器、松葉杖共通で、これを無理しすぎると故障の原因になりますから、今は歩く速度を抑えています(というかスピードが出ませんが)。そんな訳で、現在の歩行速度は昨年の春並の遅さです。もちろん、フォームを矯正した直後に遅くなるのはランニングでもスキーでも経験済みなので、焦る事はありません。唯一の実際的問題は、歩行器が高いと、急な上り坂でバランスと取る(ブレーキが困難なタイプの歩行器でともすれば歩行器が逆走しそうになる)点で、10%クラスの急坂では念のため介護に支えて貰っています。
 あと、いくら姿勢が良くなった為とはいえ、今まで無かった腰椎〜脊椎への負担による筋肉痛は、それが腰痛に繋がる前に対策を立てなければなりません。一つはゆっくりと、やや短い時間歩くというものですが、それだけでは訓練としては不足で、負荷のやや高い訓練も必要です。それで、その時の腰痛防止としてコルセット(というか腰バンド)を試してみました。腰バンドは股関節を支える事は出来ませんが、骨盤上部を支える事はできますから、役に立つ可能性はあります。キルナにコルセットはありませんが、幸い、2ヶ月前のレポートでコルセットの可能性を書いたら、早速、使い古しを送ってくれた人がいたので、それを使ってみました。結果から言えば、腰バンドは確かに股関節には役に立たないけど、腰椎には効くようです。あと、腰を真っすぐにする矯正にも良いようです。ただ、コルセットは諸刃の刃で、そればかり使うと筋肉がつきません(退化する事もある)。だから、使ったり使わなかったり、適当にミックスさせようと思います。
 腰が伸びて姿勢が良くなった代償として、歩行速度が遅くなった他に、松葉杖でのバランスも難しくなりました。逆に言えば、両杖を上げてふらふらとヤジロベー原理でバランスを取るのは腰に負担が大きいと言う事です。実際、腰バンド(コルセット)をして歩くとヤジロベーのようなバランスの取り方が出来ず、結果的に両杖を持ち上げて数歩以上歩く事も出来ません。おそらくこれが正しい姿なのでしょう。リハビリ訓練に於いては、それが実行可能という事と、それを実行する事がリハビリの役に立つという事は全くの別物です。だから、2ヶ月前に両杖を持ち上げて1キロ以上歩いた訓練の方が異常だったと思われます。

 3月は介護と体操療養師と作業療養師を交えた各種の見直しもやりました。柔軟運動は介護の「もっと楽をしたい」という要望(中年女性が2人もいる為)を聞き入れてメニューを減らし、あとシャワー用の椅子とか、トイレの高さとか、アパートの作りとかを、今の私の行動レベルに合わせたものに変える話(エレベーターの手動ドアに自動ボタンをつけるなど)も決まっています。考えてみれば4年ぶりのアパート見直しです、さすがに沢山ありました。今回の改造要望が全部通れば、介護なしで外出先(例えば研究所)から私のアパートに帰る事が出来るし、洗濯も一番始めの開始にだけ介護が立ち会ってくれれば、あとは全部自力で出来る筈(あくまで「筈」)です。
 介護といえば、11月から来ていた若い(20歳)介護が、この夏に結婚して南の街に行く事になりました。久々の大当たりの介護だったので残念ですが、出来の良い人間というのは得てしてこんなものです。彼女は4月末で止めるので、本来ならまた次の介護探しで憂鬱になる所ですが、幸い、10月にキルナのアパート事情故にキルナから離れていた介護(bestじゃないけど能力はある)が5月から戻って来るらしいので、混乱にはなりません。

 最後に軽い話と思ったのですが、3月は書きもの(上記の投書類+論文)に追われ、過去2週間はNHK騒ぎとリハビリ動画のバックログと多くの訪問者で休みが全部潰れて、今回はパスです。ちなみに6月に予定していた日本行きもパスです。忙しすぎる。
============================================
   []