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地球アゴラ制作会社に出したメール
以下は4月5日(日本時間4月6日)に制作会社に出し、そのコピーをNHKの意見コーナー(受付番号#844166)にも送ったものです。公開する理由は、これがNHKに限らず、日本のテレビ界全体に関わる問題と思われるからです。ただし、今回に関して言えば。新番組特有の問題という面があるうえ、生放送番組の第1回にリハビリを取り上げるという視点そのものは褒めたいと思うので、主に対応(改善策)の方を気にしております。
早速、4月6日朝には、制作会社の制作最高責任者より素早い初期対応を受けており、その後の進展は、少なくとも現段階(放映前々日)では初期対応として満足の行くものです。今後の対応・改善をチェックして行きたいと思います。
しかしながら、NHK 本体の方からは、企画承認並びに放映の責任者であるにもかかわらず、スカイプの問題を含めて4月9日まで連絡がなく、この時点まで全くNHKの顔が見えなかったというのは極めて問題なので、今後改めてもらいたいものです。
なお、日本では、問題の多い取材や番組を理由に、放送法を改訂して政府(総務省)の監視下に置こうとしていますが、これには断固反対なので、その点だけは誤解なきよう。政府でなく、政府と全く独立なオンブズマンが監視するのが筋であって、これが欧州のやり方です。
山内正敏
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From: ***@***
Subject: 地球アゴラの技術サポート並びに取材に関する問題点と提言と要請
Date: April 5, 2007 23:12:06 GMT+02:00
To: info@****.co.jp
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株式会社****代表取締役
****様
cc **A**様(地球アゴラ担当)
cc **B**様(地球アゴラ担当)
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-50-11明星ビル4階
TEL: 03-5770*-****
http://www.****.co.jp
地球アゴラの技術サポート並びに取材に関する問題点と提言と要請。
来る4月15日の放送に向けて、貴社の地球アゴラに出演する予定になっておりますスウェーデン国キルナ市在住の山内正敏です。去る2月22日に貴社の**A**氏からの電話並びにメールで取材の打診を受け、私とオーロラとを絡ませないという条件合意の元で取材が決まり、その後は貴社の**B**氏とメールと電話で取材準備を打ち合わせた上で、先週(3月26日〜31日)、*B*氏による取材を受けました。この取材の際に、看過出来ない問題点が多く出て来ましたので、*A*氏や*B*氏に伝えるだけでは不十分と考え、代表取締役の****様にメールを差し上げる次第です。記録並びに後学のため、このメール全文を私のホームページに4月8日に載せて公表します。
大きな問題点は2つあり、一つはスカイプ(ネットを使ったテレビ電話)で、もう一つは担当ディレクターの未熟ぶりです。前者に関しては貴社の技術レベルの疑わせるものであり、後者に関しては、未熟な人を海外取材に起用すた貴社の人材レベルを疑わせるものです。
(1)まずスカイプです。
ネットを使ったテレビ電話の使用は「地球アゴラ」の根幹に拘る技術ですが、決定的な問題が二つあります。まず、スカイプそのものの問題点です。日本でWinnyによる情報漏洩が問題になった時に、セキュリティにうるさい業界ではWinnyなどP2Pソフトを業務用のPCにインストールしないようにとの指示が出ており、関係者に一覧が送られてきています。P2Pソフトの一つがスカイプで、業務用には使用禁止となっています。にも拘らず、貴社による「地球アゴラ」の構想では、取材を受ける者が、その個人(または会社)所持のパソコンにスカイプを入れる事を前提にしております。そもそも、他人のパソコンに、その人間が使用しないソフトをインストールするように要求する事自体が甚だしく礼儀を失ったもので、これはスカイプに限りませんが、ことスカイプとなるとセキュリティー上で言語道断の要求であり、貴社の会社としての見識を疑います。たまたま私の勤める研究所の研究者が使うパソコンの場合は漏洩されて困る情報とかありませんが、リスク存在する事には変わりありません。もしも情報漏洩とかがあった場合に貴社に全面的な責任が出て来ます。その場合の損害賠償額は、相手が先進国の場合、貴社の経営を危うくさせる充分な金額になり得ると覚悟して下さい。
もう1点はOSとの相性ならびにパソコンへの負担です。スカイプに限らず全てのパソコン応用ソフトにはパソコンならびにOSとの相性があり、かつパソコンに余分な負担をかける事になります。OSへの相性という意味は、きちんと機能しているパソコンのOSのバージンを最新版に変えると今まで働いていたプログラムが働かなくなる事が往々にしてあるという事です。酷い場合の場合、バージョンアップによってファイルの一部が損傷または消失する事があります。従って、既にきちんと機能しているパソコンのOSは出来るだけ弄くらないというのがパソコン使用の常識で、重要度の低いソフトの為に、わざわざOSのバージョンをあげるのは自殺行為になります。どうしてもOSのバージョンアップをしなければならない場合は、全ファイルのバックアップをいちいち取らなければなりません。その際、バックアップがきちんとバックアップとして機能している事を確認する事も当然です。OSを変更させないのと同じ理由で、新しいサポートファイルを入れる事も出来るだけ避けるのが普通です。例えば、私の場合は、古いデータを読み込む能力を保持する為に、1990年当時のプログラムのいくつかが最小限度のレベルで起動するように、パソコンのOSをやや古いバージョンを選んであり、サポートファイルも最低限にして、ネットを使ったテレビ電話のソフトをサポートしません。
相性の問題はそれだけではありません。すべてのソフトには、どのOSのどのバージョンで働くかについて能書きがありますが、これは必ず作動する保障ではありません。全てのサポートファイルがそろって、他の環境も理想的な場合に、はじめで、そのOSバージョンで動くという意味です。従って、新たにインストールする場合は、本当にインストールできるかインストールしてみるまで分かりません。という事は前もってインストールを試す必要があり、上手く行かない場合には対応策(OSのバージョンを弄くらない対応策)まで考えなければなりません。実際、今回インストールを予定していたパソコン(友人所有)では、対応出来る筈のOSであったにも拘らずインストール出来ませんでした。
にもかかわらず、ネットを使ったテレビ電話のソフト(今の場合スカイプ)をインストールできるかチェックを現地取材の週に行っており、これは綱渡りとしか言いようがありません。それどころか、そちらのスタッフの指定するスカイプが予定していたパソコンにインストール出来ない事が分かったとき、取材に来ていた人のみならず、日本側のスタッフすら理由が分からず、お手上げの状態でした。貴社のパソコン知識の低さを露呈しています。たまたま直後にパソコンに詳しい私の同僚が来てくれたので、OSのバージョンアップによってインストール出来るようになったのですが、その際も、貴社のスタッフは、全ファイルのバックアップを取る必要を知りませんでした。これは技術以前のパソコン常識の問題です。私の同僚が技術的アドバイスをしなければ、インストールできなかったかも知れないし、友人のパソコンの貴重なファイルが失われたかも知れません。
そもそも生中継を中継相手所有のパソコンで済ませてしまおうという発想が間違っています。どうしてもネット中継をしたかったら、少なくともソフト(スカイプでも何でも良いですが)を既にインストールしたパソコンを番組出演者に貸し出すのがす筋ではないでしょうか? 返送の方法は前もってアレンジすれば可能な筈ですし、第一、それによってスタッフの出張が短くなるなら安いパソコンを提供しても金銭的には差はない筈です。特に技術にさほど強くないスタッフで番組を続けるなら、パソコンの貸し出し(又は提供)は絶対条件です。
ちなみに、貴社のパソコン知識、ネットワーク知識の貧弱さは一番始めの連絡の際にも現れています。今や、大抵の会社や研究所では協力なスパム(迷惑メール)フィルターを備えており、yahoo のようなフリーメールからの添付付きメールは無条件にはねつけ、スパムリストにすら載りません。にもかかわらず、一番始めのメールで、@yahoo.co.jpから、添付メール(その内容は、わざわざ添付にする必要のないもの)を送って来ました。そもそも、フリーメールを業務用に使う事自体が、いかなる理由(海外滞在中など)であれ間違っています。私がサーバー管理人に私宛の全メール(過去12時間)をリストするように頼んだからこそ、このメールが見つかりましたが、さも無ければ分からなかったところです。そして、この一回目のメールを最後に*A*氏からメールが途絶えている事も理解に苦しむ所で、善意に解釈したところで、未だにフリーメール以外のアドレスを持たないとしか考えられません。たとい海外出張中であれ、日本の同僚による転送という形で、その後の対応報告するのがマナーだと思います。
(2)次に、取材の問題です。問題は初日(3月26日)の午前からありました。
(2a )違法取材
取材前の担当者からの最後のメールに
On Mar 23, 2007, at 16:50, ***@amazone.co.jp wrote:
>できれば初日は、いろいろロケハンさせて頂いて、よく理解した上で、
>後日、撮影させて頂く形をとりたいと考えております。
とあったので、少なくとも初日の午前中は打ち合わせとか説明だろうとと思っていたら、お茶を交えての簡単な自己紹介の後に私がオフォスに戻るや、予告無しにいきなりカメラを回して質問を始め、しかもその質問がオーロラ関係の誘導質問だったので、さすがに唖然としてしまいました。彼女は既に
On Feb 23, 2007, at 11:23, ***@amazone.co.jp wrote:
>山内さんの危惧されている、オーロラ研究者としてのご紹介に関しまして、
>了解致しました。オーロラに関しましては、名所として有名だという、町の
>魅力としてのご紹介と、もしも伺った時に、運よく立ち会うことができまし
>たら、撮影するという形に、とどめたいと考えております。
と書いており、私の一番始めに出した取材条件を了解しています。それを誘導質問という形で引き出そうとするのは明らかな約束違反であり、しかも不意打ちという姑息な手段を使っている所など、弁解の余地はありません。初日の段階で私が以後の協力を一切断っても不思議は無く(昔の私ならそうしていたかも知れない)、しかも、北欧に於いては、このような撮影は肖像権を侵害するものとして厳しく禁止されています。こういう形で得られた映像が放映された場合は、少なくとも先進国では損害賠償訴訟が起こり得て、人権に煩い北欧では確実にテレビ局(今の場合NHKと貴社)が負けます。マナーの問題あり、かつ法律上の問題ですので、以後気をつけて下さい。そもそも、撮影の際に、これから撮影を始めるという説明をディレクターが一言入れるのは基本マナーで、どの取材陣もやっている事です。それが今回の担当者では殆どありませんでした。
撮影に於ける相手への配慮の不足は、介護へのインタビューにも現れています。取材前のメールのやりとりで、介護へのインタビューという要求が無く、初日の打ち合わせでもその話が出ませんでしたので、介護にはインタビューの可能性は伝えてありません。しかるに、とっさの思いつきの如く、木曜日に私への事前連絡なしに介護へのインタビューを行っておりましたが、これは介護に対して失礼であるばかりか、法律的に危険な行為です。というのも、介護には、介護している相手の個人情報について密秘義務があるからで、私の事前了解の無い項目に関して答える事は出来ません。答えた場合、最悪、懲戒解雇プラス罰金になり、それを誘導質問した場合には質問した側も問題になります。思いつきの取材が法律に触れる事があり得る事は肝に命じて下さい。
(2b )文書の不在
初日の打ち合わせで、放送のタイムラインを見せて頂きましたが、それを含めて、取材の最中の貴社からのプリント類(名刺すら)を一切頂いておりません。そちらから頂いた情報で手元に残っているのは、一番始めの(上記で問題になった)yahoo 発のメール並びに添付ファイルと、その後の担当者からの質問のメールだけで、少なくとも担当者からは何の資料も頂いておりません。yahoo 発の一度きりのメール(+添付ファイル)にしても、放送内容に関しては
世界各地で暮らす日本人、世界を転々とする日本人など海外で活躍する一般の日本人と
スタジオをウェブカメラで繋ぎ、情報交換や会話を楽しむ番組です。
放送時間6分程度のVTRをつくり、さらに4月15日の放送当日、
スカイプというネット電話カメラを使い、NHKのスタジオと結びお話して頂くと
いうものです。
という説明しか頂いておりません。取材相手に放送内容の詳細を文書またはメールで知らせない態度は相手に対して極めて失礼です。
(2c )番組構想の不在
取材開始はおろか取材の終わりになっても、私を紹介する6分のビデオの構想が見えず、インタビューに対してどういう答え方が最適であるか私にすら判断出来ない状況というのは異常です。前もってメールで頂いた質問には、出来るだけ簡潔にきちんと答えたつもりですし、初日からの強引な(半ば非合法的な)取材に対しても、出来るだけ多くの資料を与える意味で、出来るだけ多く語ったつもりです。ちゃんとしたディレクターなら、6分のビデオの大まかな構成(しかも取材相手が納得できるもの)を初日のうちに提示して、取材とともにその予定に変更を加えるものです。そこまでのベテランでなくとも、取材を3日もすれば、大まかな構成が提示出来る筈です。そういう構想が見えないと、取材される側も落ち着かないし、残りの取材やインタビューへのアドバイスも出来ません。
そもそも、私を放映する価値は、リハビリ(しかも介護を受けた状態)と仕事(しかも世界最先端の惑星研究)の両立という点と、それを異国の日本人の極めて少ない田舎町で実践している点です。その事は一番始めのメール以来、何度も繰り返し担当者に伝えています。にも拘らず、番組の大雑把な構想が最後まで決まらないというのは、いやしくもディレクターに選ばれる人には有り得ない話で、私の見受けるところ、そういう視点でなく、「オーロラ研究者の1日」のような番組イメージに固執して、それを微調整するだけで済ませようとしている様に思われます。これでは番組は成立しません。そもそも、番組はディレクター(今の場合、取材者)のみで作るものでなく、取材する人と取材される人との共同で作るものです。そこのところが今回の担当者には分かっていないように見受けられます。取材される人間の意向を無視して、ディレクターのイメージのみで番組を作っては、昨今問題になっている番組捏造と五十歩百歩で、貴社並びにNHKの信用にも関わる倫理問題に発展しかねません。今後は、そこの所の教育をきちんと受けた人を取材に派遣するようにお願いします。
(2d )プライバシーと個人情報
上記とも関係しますが、たった6分のビデオに、どうしてここまで些細な事をフィルムに撮るのか、と理解に苦しむ事が何度もありました。個人情報やプライバシーに煩い現代に於いて、番組に不必要な映像(とくにプライバシーに拘ること)を撮るのは、極めて危険な行為です。私の寝る所を撮る必要が何処にあるのでしょう? 買い物のレシートの内容がどうして必要なのでしょう? 少なくとも、上記の「情報交換や会話を楽しむ番組」という説明から逸脱しています。個人を徹底的に紹介する番組であれば、或る程度のプライバシーに立ち入る事も有り得ますが、その際は、取材の前からその旨を伝えるべきです。
プライバシー管理の重要さについては、取材前のメールで「病院で他の患者を映したらいけない」とか「合唱すら取材許可がいる」と伝えて、きちんと知らせているつもりです。余分な映像を撮らないように、という原則は取材対象者でも変わりありません。いくらフィルムに収めたところで、肖像権は常に取材される者にあります。これは私に限りません。
にも拘らず、今回の担当者からのメールには、私の屋外活動(散歩、買い物)等に関して「密着取材させて下さい」との要請があり、それに対して、私が「程度による」と返事したものの、それでも取材は密着状態でした。私が類推するに、密着取材を格好よいものと勘違いしているとしか思えません。プライバシーに煩い現代に於いて、個人への「密着取材」というのは恥ずかしい取材形態以外の何ものでもありません。というのも。能力があれば、四六時中一緒にいなくても、一番重要な部分はきちんと取材しているからです。今後、個人情報やプライバシーの取り扱いに十分配慮するようにお願いします。
(2e )拘束時間への配慮
先述のスカイプ設定などでも見られましたが、他人の時間を使っているという事に対して無神経過ぎます。私は過去にもマスコミの取材を受けた経験があるので、或る程度の拘束は覚悟していましたが、今回は今までの例を遥かに超える拘束であり、かつ、スカイプ設定に携わった友人や同僚に至っては、全くの予想外の時間を割く事になってしまいました。拘束時間が伸びそうな場合、少なくとも相手の了解を取り、その際に日を改めるオプションを提示するのは最低限のマナーです(大抵は。このままやってしまおう、という事になるでしょうが)。
(3)最後に、4月15日に向けての事務事項です。
現在、番組構成に関して貴社に対する信頼を甚だしく失っている状態であり、当初予定していた、オーロラ映像の提供を止めざるを得なかったのも、信頼喪失に起因します。今の状態では、番組構成に関する具体的情報が与えられない限り、番組に協力する事は極めて難しいと言わざるを得ません。というのも、番組構成が当初の約束が守られない形であれば、番組に協力する筋合いは全く無いし、加えて、番組の科学内容に関しても私の知識の及ぶ範囲で責任があるからです。
関西テレビの捏造事件を受けて、日本学術会議は、科学者に、番組に協力する際に、その内容をチェックする事を推奨しており、それに従えば、私のコメントが編集使用される番組の科学内容に関して、その使い方が正しいかをチェックする道義的義務があります。これは私に限らず全ての科学者に当てはまります。番組構成に関する信頼が無い以上、番組の内容の責任の一端を担う私が、事前時チェックするのは私の義務であると考えます。
従いまして、番組の正確なプロット(ビデオの内容)を放映の2日前までにお送り頂きたいと思います。それを元に私がコメントを出し、少なくとも放映前日までには私の妥協出来る(私が妥協出来る範囲で良いです)プロットに仕上げて頂きたいと思います。これは決して無理な要求ではありません。私が今までに協力した局は、1週間以上前に正確なプロットを私に送っています。万が一、放映の5時間前までにこれが出来ない場合は、放送の延期を要求します。
本来は、こういう厳しい事は言いたくないのですが、残念ながら、そちらに丸投げ出来るだけの信頼を、取材の際に得る事が出来ませんでした。肖像権はあくまで私にあり、その不当な形での使用は私として避けなければなりません。これは私に限りません。
以上よろしくお願いします。最終的に視聴者からも関係者からも喜ばれる番組になる事を心から願っています。良い番組にするべく、敢えてこのメールを出させて頂きます。
山内正敏
M. Yamauchi
Kiruna, Sweden
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