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リハビリ記録その49
2006-12-10
山内正敏
記録的に雪の多い初冬で、既に3月のレベルにまで雪が積もっています。もっとも気候は温暖で、ほんの300キロ南のルーリオやロバニエーミでは雨ばかり降って雪が欠片もないそうです。雨にしろ雪にしろラップランド一帯が毎日雲に覆われている事には変わりなく、極夜にもならないうちから太陽のない日々です。今日は久々に太陽を拝みましたが、極夜という事もあって地平線から半分しか顔を出さず、もしかすると今年最後のお日様かも知れなません。
夏の間に予想(予定?)以上の回復を見せた体ですが、好事魔多しとは言ったもので、3週間前に感染症(昔で云えば破傷風)に罹って尿管(膀胱ろう)を4年3ヶ月ぶりに外さなければならなくなりました。現在は尿道経由で尿管を入れていますが、あらゆる意味において不便きわまりないものです。
大抵の病気と同じく、今回の感染症も色々な間接原因が絡んでいて、3ヶ月前に尿管用穴の回りの肉腫を除去した為に細菌が入り込みやすい環境にあったとか、このところちょっと忙しくて睡眠時間が毎日30分程足りなかった事とか(8時間と8時間半では大いに違う)が挙げられますが、直接の原因は足のすり傷らしく、これが尿管用の穴の回りに元々感染していた細菌を暴走させたようです。
すり傷と言っても、右足首のちょっと上の直径1センチ強の小さなものです。こんなものが感染症の原因になるとは普通の人には信じられないでしょうが、私にはこれが鬼門で、特に長時間の摩擦の場合はほとんど確実に化膿します。但し化膿するのは摩擦性のすり傷のみで、切り傷はほとんど化膿しません。化膿するという事は、細菌が暴走する事であり、それは免疫が十分に働いていない事を意味しますが、なぜ直径1〜2センチ程度の軽いすり傷に限って化膿するのかは分かりません。とにかく化膿すると云うのが経験則です。以前も、絨毯にじっと1時間座った程度の極めて軽い擦れで痛みを感じ、見れば「これは化膿する」という赤い腫れを見せていたので、薬など随分手当をしたものの、力及ばず、案の定化膿してしまって全治2ヶ月かかった事があります。これはもう体質なのでしょう。こういう奇妙な化膿は医者に言っても殆ど信じて貰えない性質のもので、ましてや介護に分かって貰える筈が無く、どうしても対策が後手後手に回ってしまい(いちいち消毒したりするのは面倒だしあまり常識的でもない)、それで今回の感染症を防げなかった面があります。
今回のすり傷は、足首を固定する固定器のはめ方が2重に間違っていた為に出来たものです。固定器をズボンの下から肌に直接当てていたのが間違いの一つ目で、もう一つの間違いは、足首固定器の内側についている肌を守る為のゴムが裏返ったままだったという事です。そんな最悪のセッティングで重い雪道を3キロ半(1時間)も歩いた為に、この擦り傷が出来てしまいました。昨年までならこんな距離は歩かなかった訳で、回復で歩行距離が増えた分、摩擦の量も増えて、それがそのまま危険レベルを超えるすり傷に繋がったようです。また、これが夏なら早めに擦れを感じたのでしょうが、感覚の麻痺する冬だったため、寒い外気から暖かい室内にもどって皮膚神経の感覚が戻って来た時には既に遅く、見事な摩擦性すり傷になっていました。丁度4週間前の事です。
もっとも、足首固定器の装着が悪いと軽いすり傷が出来る事は昨年あたりからも経験し始めていて、それで今年に入ってから、肌を守るような装着をするように介護には言っています。でも何度か云えば介護だって了解する筈で、同じ注意を毎回繰り返すのは介護の気分を損ねるだけの事ですから、数回言った後は単純に任せるようにしているのですが、今回はそれが裏目に出たようです。介護の方だって個人的事情で注意力散漫な事があり、「膚を守る装着」というのを手が覚えていなければ(頭で覚えている段階では)、間違える事もあるのです。不幸にして、膝バンドをはめていると、その向こう側の足首固定器の状態を私が確認する事が出来ませんから、装着が正しいことを信用せざるを得ません。
ともかく傷は出来てしまったのです。今までに何度も擦り傷=化膿の憂き目に遭っていますから、危険を直ぐに感じて、消毒などの手当の他、プールに入る時は防水性テープを貼るなど、介護があきれる程の万全の体勢で、なんとか化膿せずに回復に持っては行きました。10日経ち、かなりよくなった所までは良かったのですが、介護の怪訝そうな表情に耐えられずに防水絆創膏を貼らずにプールに入ったのが祟って、その晩一気に悪化して、プールから6時間後には足の擦り傷と尿管用の穴が同時に腫れて痛み出し(プールの時に入念に体を洗ったときは正常だった)、翌々日には高熱まで出して、その翌朝に外科で相談したところ、即座に緊急外科に回されて、尿管経路の変更や抗生物質の投与等を受けた訳です。まさに細菌の「暴走」でした。幸い、キルナにいる時だったから良かったものの、これが旅行中だったらと思うとぞっとします。
かくも恐ろしい細菌「暴走」ですが、そのメカニズムは分かりません。以上の経緯から分かる事は、大雑把に言って、
(1)擦り傷が免疫システムを混乱させた。
(2)もともと感染しているので、擦り傷が化膿しやすかった。
のどちらか(或いは両方)の類いではないかと云うことぐらいです。これに間接要因(3ヶ月前の手術や疲れ)が絡んでいるのでしょう。
ちなみに、高熱のあと、いきなり外科で相談するというのはスウェーデンの正式なルート(一般外来に予約して行くか、救急病棟の受付で長々と待たされるか)とはちょっと違いますが、私のような「常連」には、看護師で済む内容に関しては、判断がより的確で迅速な別ルートがあります。
この感染症騒ぎで、合唱の発表会3つのうちの1つ目に出られなかったり(始めの2つは他の合唱団への友情出演で、最後の一つが所属合唱団のコンサート)、トレーニングを中止したりしていましたが、数日前からやっと正常に戻って、一昨日は半月ぶりにプールに行き、昨日は3週間ぶりに5キロを、今日は6週間ぶりに7キロ歩いて来ました。長く間が空いたので記録が落ちていると覚悟しました(実際疲労は大きい)、歩行タイム自体はさほど悪くないのでほっとしています。室内用自転車も数日前に再開したのですが、再開早々ちょっと頑張りすぎて(記録が伸びるときはつい頑張りすぎてしまう)尻の皮が剥けてしまって、今は自粛中です。他に汗を余りかかないバランス系の訓練は1週間前から再開していて、松葉杖の片杖のみによる歩行が600m/28分とか、両杖を上げたまま数歩補助無しで歩くとか、そんな事も出来ています。
感染症以外にも悪い事はあって、それは腰です。日本人の腰の弱い事は有名な話ですが、私もその例にもれず、リハビが進む程に腰痛も悪化しています。これは病気の前、ランニングをしていた事にも経験した事ですが、今は昔と違って車椅子生活なので腰を伸ばす機会が圧倒的に少なく、それで、症状もちょっと深刻で、レントゲンを撮ったりもしていますが、なんせ、非緊急の疾患に対しては亀のように遅い対応しかしない病院故に(スウェーデンは何処でもそうらしい)、レントゲンから1ヶ月半以上たった来週/再来週になってやっと医者に会ったり、MRを撮ったりする事になっていて、それで再来週にはエリバレ病院(120キロ離れている)に日帰りで行きます。タクシーを使う訳ですが、専門の診療科をキルナに作らない代償としてタクシー代は無料になります。当たり前の話の筈ですが、日本ではきっと事情は違うのでしょう。
過去1ヶ月の混乱は体だけでなく、先月お知らせした労働時間規定の問題とか、介護の問題(正確にはキルナ市にアパート空室が全く無い事:現在の空室待ちが5年)とかがあります。先月は介護が変わりましたと書きましたが、実はその新しい3人目になる筈だった人間が、仕事を始める前日になって、別の仕事が見つかって来なくなり(まだ契約をしていなかった)、再び臨時介護(他の仕事との掛け持ち組)で凌いでおりました。やっと(今度こそ)3人目を獲得して先週から来て貰っています(3ヶ月の契約ずみ)。但し、塞翁が馬の例そのもので、滅多にいない「当たり」の介護なので、今までの混乱も許せる気分です。
最後に軽い話、と思ったのですが、京都条約締結国会議で二酸化炭素を自然のサイクルから切り離すという悪魔の技術が議論されたのを、地学関係者として看過する訳に行かないので、今回は
真面目な話
です。
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