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リハビリ記録その48

2006-11-12
山内正敏

 発病(2001-10-29)から丁度5年がたちました。正確には5年とんで2週間なので、このメールは2週間前に出したかったのですが、10月後半は仕事(論文とか査読とか)の締め切りが立て続けにあり、先週はリハビリ記録のビデオの編集に時間がかかって、今週にずれ込んでしまいました。そのかわり、5年目の画像は(もちろん他のまとめページも)上記ホームページにしっかりアップしましたので、そちらを御参照下さい。特に今回からは、ビデオのみならずビデオから抽出した画像を 連続写真形式にまとめたページ を加えました。単にビデオを編集するより労力のかかる作業のようです。
 こうやってまとめると、過去の1年だけでも相当に回復したなと改めて実感します。上記写真ページにリストされた項目だけでもかいつまんで書いておきます。
 (1) walking: 前にも書きましたが、今夏の歩行能力の進展は距離に関しては予想以上のものがあって、雪で歩きにくくなった今でも普通の歩行器で時折2時間歩いています。今はアスファルトより2割程余計に時間がかかりますが、春までにはアスファルトで出した記録を雪の上でも更新出来るのではないかと感じています。一方、膝バンドを使わない歩行訓練は、寒い中をゆっくり歩くのが(介護にとって)大変なので、外出は買い物程度にして、代わりに病院リハビリ室の平行棒で膝バンド無し歩行の練習を始めました。同じく平行棒での「手放し歩行訓練」では、体操療養師に腰を支えてもらったら完全に手放しで歩けるようになって、今では同じ事を松葉杖で始めました(直線だけでなくカーブも訓練)。これは春先から狙っていた「5年目までに達成」の目標の一つだったので、ぎりぎり10月に達成出来て嬉しい限りです。来年には全くの補助無しでも(膝バンドさえ装着すれば)歩けるようになる筈です。
 (2) moving: 筋肉の回復自体は僅かでも、それによって、ある種の行為をする為のしきい値を越える事があり、その場合は行動の自由が大きく広がります。過去1年では起床とトイレがその例で、トイレに関しては、自力で尿袋を空けるのはもちろん、今では週に1〜2回は自力で大便にも行っています。但し、ベッドで裸になり、そこから→車椅子→電動式歩行器→便器と移動しなければならず(帰りは逆順)、途中の電動式歩行器がトラブってしまうと惨劇になるので、本当はもう少し脚力がつくまで待つ方が良いのでしょうが、介護が不在になる時間が増えるにつれて(最大連続4〜5時間)、その時間にトイレに行きたくなる事は確かにあるので、それなら週に1〜2回の練習を怠る訳にはいきません。ちなみに、尻をトイレットペーパーで拭うのは(体勢上、腰に悪いと分かってはいるものの)毎回自分でやっています。
 一方、夏以来、夜用の延長尿袋(普段装着している奴の先に更に大きなバッグを接続する)をやめてしまって、夜に尿袋がたまったら自力で起きて空けるようになったので、その副産物として、朝になって突然介護が来れなくなっても、大きく困る事がなくなりました(今までは尿袋2個で身動きが取れなかった)。もちろん、夜中に起きるプロセスは写真にもあるように大変で、結果として睡眠に必要な総時間が1時間近く長くなりましたが、同時に、今まで朝一に介護がやっていた、延長尿袋の処理という仕事が無くなったので、昨年に比べて介護が若干朝寝坊出来るようになって(6時半始業が7時〜7時半始業になる)介護にも歓迎されています。ともかく、介護が病気で来れなくてもどうにか室内生活が出来て、介護がいないと不安だった昨年までが嘘のようです。
 (3) finger: 今年と言うか今月の最大のニュースが右の親指で、なんと、過去4年以上も動かなかった親指付け根の筋肉がピクピクと動き始めました。左はまだです。もちろん普通に動くようになるまでには何年もかかるでしょうが、とにかく5年目にして初めて動き出したという事実が重要で、リハビリさえ続ければ、完全に死んだかに見える機能(全ての医者が匙を投げた部位)すら復活の可能性がある事を意味しています。という事は、今は動かない左にもチャンスがあり、ひいては足首なども回復のチャンスがある事になります。指の回復は親指だけでなく、他の指も昨年より若干良くなっているようで、たとえばゆっくりながらも文字を書いたり、冷凍庫から材料を出し入れしたり、醤油などの味付けを調理の際にしたり、お湯を沸かしてお茶を入れたり、CDやUSBをパソコンに差し込んだり(USBは時々失敗するけど)と、自力の部分がかなり大きくなっています。これは例えばCDの出し入れの為だけにわざわざ介護を呼ぶ手間だけは確実に省けている事を意味していて、私のようなせっかちには助かります。また、種類のよって携帯電話が使用できるようになったのも大きく、そのうち雪道を(緊急用の携帯だけ首にかけて)一人で歩くかも知れません。他に、手だけでなく足の指も力が入り始めていて、歩行の際のバランスの向上に寄与しているようです。
 (4) pool: 最も些細な回復がすぐさま目に見えるという意味ではプール訓練は最高で、昨年の写真と今年の写真を比較すれば違い(同じ訓練をしている水深の違い)は明らかでしょう。殆ど全ての訓練で目に見える進展があります。
 (5) floor: 1年前に毎朝5種目10分で始めた床運動(それまではやりたくても殆ど出来なかった)は、「出来るようになるまでは大変だけど、一旦出来はじめたら指数関数的に出来る内容が増える」、という話を地で行っていて、翌月に7種目15分、3月に18種目30分と内容が増えて、今では27種目45分に増えています。1種目当たりの回数も増えていて、昨年は5〜10回だった(それが限界だった)のが、今ではどの種目も10回〜30回やっています。にも関わらず1種目当たりの時間は変わっておらず、それだけ素早く動かせるようになった(筋力がついた)事を如実に物語っています。この訓練の良い所は、室内で出来る(外の天気と関係ない)という点と、全てのプロセス(準備など)が自力で出来るという点にあります。他の訓練は単に靴を履くだけでも、或いは自転車のサドルに座るだけでも介護の補助が必要ですが、これだとマットを敷いてそこに移動するだけの事ですから、準備にすら介護がいらず、介護が病気などで来れない時(そんな週末が確かにある)に大いに役立っています。
 (6) 今回の画像集には入れなかった項目でももちろん進展があります。自転車訓練や旅行がその例で、特に身障者用のホテルでなくても車椅子と歩行器の両方さえ持って行けば数泊できる、という経験にはかなり自信がつきました。そんなわけで、次回の日本行き(来年初夏)の際は前回よりは選択肢が広がるような気がします。

 さて、前回お知らせした、EUの決定に基づく労働時間の新規定の問題(曜日によらず、仕事の終業から翌日の始業まで11時間あけなければならないというもの)ですが、その後の調査で、例外規定が無いことが判明して、色々な所から不満の声が上がっています。11時間あけるという事は、たとえば朝と昼と夜、それぞれ1時間ずつしか介護を必要としない人間(私もそれに近い)が2泊3日の旅行をする場合、2人の介護を(自費で)連れて行かなければならないというもので、要するに「金持ちの身障者以外は旅行するな」と言っているのも同然です。不満が上がらない筈が無いのですが、今の所、マスコミ等の反応は鈍いようです。研究所の厚生部門の人が色々調べてくれた所によれば、例外を作る方法が一つだけあって、それは組合(介護)と雇用者(市)による労働協約に例外規定を盛り込む事らしく(まだ「らしい」という段階の情報ですが)、従って、来年の何処かの段階で更新する筈である協約の文案作成に積極的に関わっていかなければならないようです。そんな、他人任せという法律が良い筈がないので、現在、色々なチャンネルから「法律そのものに例外規定を設ける」ように申請する予定で、一応、その英語文案(こういう文章のスウェーデン語版はスウェーデン人の特に文章の上手い人に翻訳を頼む必要がある)は書いたので、 英語の部分 だけ載せておきます。まあ、この国では日本と違って、法律を作っても不具合が見つかったら施行前に修正する事がありえますから、来年9月のフランス出張には間に合うでしょう。ちなみに初夏の日本出張では(前回同様)現地介護に半分お願いするので、あまり影響はないと思うのですが、正確なところは自信ありません。
 介護と言えば、また介護が変わりました。今年の春に3人目が見つかって、やっと臨時介護のつなぎ状態から脱したのですが、そのうちの一人は、今まで住んでいたアパート契約の終了後の代わりのアパートが通勤圏内にまったく見つからず、泣く泣くキルナを離れたという奇妙な事情のせいです。それほどにキルナのアパート事情は逼迫しています。鉱山の拡張計画が発表されるまで空き部屋ばかりだったのですが、拡張計画が街の一部移転を含む事が分かって以来事情が反転し、その準備の為のインフラ工事が始まった一昨年から一気に移入労働者が増えて、今ではアパートの空き部屋は何処にも無く、空き部屋の待ち期間が最低半年、市の中心部では1年半以上という異常な状況が続いています。そんなわけで、たとえば夏の季節労働者などは、高いホテルに泊まっているような状況です。
 アパート不足の一因に国とキルナ市の政策ミスがあり、5年前に「空き部屋を減らして家賃を適正価格にする為に」という名目で市営アパートを次々に閉鎖してしまった直後に、鉱山の拡張計画が発表され、その時にアパートを再開しなかったという馬鹿げた話があります。現在の仕事ブーム(アパートに換算して1800室足りないらしい)は街の移転終了と共に終るので、新しくアパートを建てる事が無駄な事は分かっていて、古い市営アパートを最大限に利用しなければならないのですが、閉鎖を少し待つ事も、それを再開する事も無かったのだから、キルナ市(全政党)が馬鹿だったとしか言いようがありません。もっとも再開出来なかった正式の理由は、閉鎖の為の国が出した補助金に付帯する契約の「アパートとしては再開しない」条項に縛られた為で、そういう意味では国も馬鹿です。ともかく、その馬鹿げた政策のツケで、仕事はあれど住む場所なし、という状況に陥り、介護がキルナを離れざるを得なくなりました。好況というか(キルナに住む所がある人の)人手不足という事は、他の職業に人が回って来ない事をも意味していて、介護も同じく、今や、臨時介護の質を云々言える状況ではありません。他にも仕事を持っている人に時間外(夕方や週末)に来て貰ってやりくりしていますが、それでも足りずに、極めて質の悪い人間(飲み過ぎで朝の介護をすっぽかすような女の子)にも来て貰っているような状況で、これが3〜4年前(介護がいないと本当に困っていた頃)だったら、と思うとぞっとします。今は新しい3人目(男)が見つかってほっとしていますが。

 最後に軽い話です。歩行距離が延びるに連れて、半郊外の住宅街の方まで歩く事が増えて、そこのスーパーでも月1度ぐらいで買い物をするのですが、そこの「ベストセラー」ワゴン(他に本は置いていない)に置いてある30冊ぐらいの本のうち、4冊までが日本の漫画だったのでびっくりしました。昔、ストックホルム空港の雑誌専門店で日本の漫画雑誌を見掛けた事がありますが、単行本は初めてで、しかもキルナの片田舎。日本の漫画の国際的に認知は想像を超えるものがあります。こういう下地があるから、宮崎アニメあたりが評価されるんでしょうか。見つけた「manga」は以下の4冊(ちなみにどれも知らなかった)
青山剛昌/名探偵コナン
高橋留美子/犬夜叉+らんま
渡瀬悠宇/ふしぎ遊戯
 驚いたついでにスウェーデン語で manga を検索してみました。百科のスウェーデン語版にもしっかりと manga 記事があり、日本の出版物の4割が漫画だとか、日本の漫画は葛飾北斎と手塚治の2人がすべてを決めたとか、そんな事が書いてあります。検索のトップには スウェーデンにおける日本漫画サイト が出て来ました。但し、私は日本における漫画サイトを知らないのでこのサイトに関してコメントのしようもありません。
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