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土壌サンプルのデータと放射線測定ネットワークのデータを比較する方法(2012年1月)
(http://www.irf.se/~yamau/jpn/1111-movement2.html)

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放射性ダストの再浮上による2次汚染の全体的傾向
 大気電場と放射線測定ネットワークのデータを比較する手法 によって、放射線によってイオン化したダストが、3月〜4月にかけて再び舞い上がった事が推定出来た。となれば舞い上がったのがイオンだけか、放射性物質も一緒に舞い上がったかが問題になる。
 このような舞い上がりを繰り返せば、日本のように風向きの変わり易い地域では、上空の放射性物質は一種のランダム運動により、次第に放射能汚染の場所から放射能汚染の少ない場所へと移動する事が予想される。つまり至近の2地点の放射線量の比率が1に近づく事が予想される。それを柿岡に一番近い放射線測定ネットワークで調べたのが 図7 である。これによると、福島原発から130kmも離れているにも関わらず、比率が次第に変化し、その変化が4月末で終わっている事を示している。逆に言えば、4月末まで再浮遊した放射性物質による内部被曝の危険があり、それが4月末に収束した事が伺える。
 同じ事を原発70キロ圏の放射線値( 図8 )で調べたのが 図9 である。飯館付近と高萩付近を除いて、いずれも1に近づきつつあることが見て取れる。


原発の真南と北西について
 次に例外的な飯館付近と高萩付近についてより詳しく調べよう。まず、高萩付近であるが、図8によると、3月20日の大汚染では、高萩の方が北茨城やいわきよりも原発から遠いにもかかわらず、放射線値が高くなり、更にその後の減衰が北茨城やいわきよりも急激で、すぐに北茨城やいわきの放射線値を下回るようになっている。これはランダムな風の動きでは説明出来ず、高萩に向かった放射性ダスト雲と北茨城やいわきに向かった放射性ダスト雲が(全く同じ時刻の放射性ダスト雲であるにもかかわらず)異なっている事を意味している。つまり、高萩に向かった放射性ダスト雲はいったん太平洋に出て、海側から高萩に入った事になる。実際、風のデータはこの経路が妥当であることを示唆している。
 更に、減衰率の違いは2つのダスト雲のヨウ素(半減期8日)/セシウム(半減期2〜30年)の比が異なる事を示唆している。つまり、高萩に向かったダスト雲はいわきや北茨城に向かったダスト雲よりもヨウ素の比率が高く、それで早く減衰したと推定出来る。これを別のデータから確認する為に作ったのが。 図10 である。これは土壌サンプルのヨウ素/セシウム比の時間変化をプロットしたもので、地方別に色分けしている(同じ地方内の異なる地域には同じ色の異なる印を使っている)。
 ヨウ素の半減期がセシウムの半減期に比べて遥かに短いことから(100分の1〜1000分の1)、この比率は、ほとんどヨウ素の半減期と同じ減り方(半減期8日)をする。比をとっているお陰で、雨で流されたり二次汚染したりして総量が半減期どおりに減らなくても、比の半減期は8日と変わらない筈で、実際、各点を線で結ぶと、ぴったり8日の半減期曲線(縦軸が対数表示なので直線になる)が得られる。この直線を3月20日にまで伸ばすと、3月20日の段階でのヨウ素/セシウム比が得られるのである。それによると、地方ごとに倍どころか一桁違うケースも見られ、特に多いのが南である事が分かる。特に 経路図 に示すように、真南(海)に向かったダスト雲が一番ヨウ素比が高かった事が推定出来る。こうして、上に推定したシナリオの正しさが別のデータセットで確認された事になる。
 一方、もう一ヶ所の異常な地点である飯館方面は、その回りに比べてヨウ素/セシウム比はそこまで変わらない。つまり、飯館方面の減衰が他と少し違っているのは組成ではない事がいえる。この事は飯館の減衰曲線(4月上中旬)が、他の地方に比べてスムーズさに欠ける事(図8)からも分かる。残った可能性は、特殊な二次汚染をしているという事である。特に4月前半は他の地方よりも減衰が遅く、ランダム以上の流入が起こっている事を伺わせる。
 可能性は2つある。一つは森の引っ掛かった放射性ダストが落下したというもので、もう一つは原発から海風に乗って流入したというものである。いずれのシナリオでも、4月中旬まで相当量の内部被曝の可能性があった事が伺われる。



山内正敏
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