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リハビリ記録その84
2009-11-1
山内正敏
キルナはすっかり冬景色で、その雪道の上に冷雨(氷点以下の雨)が降ったりして歩き難い状態が続いています。
発病から8年となったので、ビデオ撮影をして上記ホームページの記録の方も更新しました。以下、ここ1年の進展がもっとも見られる部分です。
1a. 階段(膝バンド無し)
【一昨年は出来ず、
昨年=0.8 MB=発病7年、
今年=1.4 MB=発病8年】:
昨年は片手が手すりで、もう一方の片手が肩にすがっていたのが、今年は肩の代わりに松葉杖にすがってで昇降するようになり、しかも登る速度も倍以上になっています。
1b. 階段(膝バンド付き)
【一昨年は出来ず、
昨年=0.8 MB=発病7年、
今年=1.8 MB=発病8年】:
昨年、手すりと肩を使っていたのが、今年は両方とも松葉杖(手すりにもたれ掛かっているけど)で登れるようになっています。
2. 松葉杖(膝バンド無し)
【一昨年は出来ず、
昨年=0.5 MB=発病7年、
今年1.1 MB=発病8年】:
昨年、3点確保で歩いていたのが、今年は片方の杖を上げたままで足を踏み出す『交互杖』が難なく出来るようになっています。また、今年は屋外でも歩き始めて、緩い坂道も交互杖になっています。
3. 平行棒
【一昨年=1.0 MB=発病6年、
昨年=0.8 MB=発病7年、
今年=1.5 MB=発病8年】:
一昨年は膝バンドをしての手放しですが、今年は後向きすら膝バンド無しで手放し歩行を始めています。
4a. プール(四つん這いの出来る段の変化)
【一昨年=1.1 MB=発病6年、
昨年=1.3 MB=発病7年、
今年=1.6 MB=発病8年】:
四つん這いが出来る深さが半段ずつ上がっています。
4b. プール(水深50cm+65cmの段での昇降)
【一昨年=1.6 MB=発病6年、
昨年=1.0 MB=発病7年、
今年=1.8 MB=発病8年】:
一昨年は両手とも手すりに頼り、昨年は片手のみ手すりに頼り、今年は手すりでなく膝に手を当てて立ち上がっています。
5. 新しい事
【落花生の殻割り=1.4 MB
歩行器に立ち上がる=1.4 MB】:
歩行器に立ち上がるのは2年前から出来ていましたが、座る方から昨冬からです。
相変わらず全体的に回復が続いていて、3年前(発病5年=その後の回復が全く期待されない年数)が遠い昔の様です。身体的な回復は生活面にも及び、ここ1年でも色々ありました。最大の進展はバスを使用するようになった事と、身障者用トイレの一部(大)に自力で行けるようになった事でしょう。両者とも、長距離旅行の可能性を飛躍的に拡大させるものです。バス通勤は道路が凍結して雪道になった10月も続けており(通勤の7割近くがバス)、タクシーを使うのは、バスのない昼に、病院と研究所の間の移動に使うばかりです。トイレの方も不完全成功(介護に一部手伝って貰う)を繰り返しながらも成功率が高くなっていて、この分だと来年の日本行きではどの空港でも問題ないと思います。従って、日本行きでも現地介護だけで済ませる事は余り問題なさそうです。
さて、10月はリハビリ以外で色々ありました。1つ目は身障者タクシー資格の更新(毎年)で、今年から担当者が変わってきちんとした電話インタビューが入ったりしましたが、介護同乗については向うにマニュアルがあるのか去年と同じ聞き方(タクシーの『中』で介護が必要かという聞き方で、半年前の各政党からの(法律解釈に基づく)返事にある条件とは違う)で、いちいちトラブルのも面倒なので、『必要』という最小限情報だけで済ませました。2つ目は身障者保護法(LSS法)に基づく被保護者(中程度以上の身障者に対するもの)を更新する為の審査が7年ぶりにあって、こちらのインタビューでは逆に介護を必要とする項目が非常に多くて、すんなりとLSS被保護者を更新しました。3つ目は病院受付の改築問題です。
夏に工事していた病院入り口の改装が10日前に一部完成して、一般外来(リハビリ科を含む)の受付と待合室がそこに移動したのですが、窓口のそれぞれがプライバシー保護の観点で個室になったのは良いものの、その入り口に自動ドアが付けられていない事に始まって、個室が余りに小さ過ぎて電動式車椅子が受付に入れないし、待ち合い室のソファーはどれも低過ぎて歩行器や松葉杖の人間には座れず、しかも受付窓口の位置を示す電光掲示板が待合室から見えない位置にあって、何処に呼び出されたのか分からない構造になっていて、要するにデザイン段階から非機能的な受付なのです。
もちろんこの国には、公共施設を改築する際は公共部分は身障者対応にしなければならないという法律があります。それに完全に違反した改築が実際に為されてしまったという事は、身障者の事を全く考えずにデザインした案が、そのまま承認されてしまった事を意味しています。デザインした人が無能だった(都市工学の大学を出ている筈だから、身障者対応に関するデザイン上の制限も習っている筈)以外に、途中で身障者対応を調べるチェックが働かなかった事(この手のデザインでは作業療養師の承認が必要な筈)をも意味していて、これはどう見ても責任問題ものですが、身障者と云うのはこういう時に追及活動が出来ない人が多く、動きが鈍いので仕方なく私が動いています。
田舎の事とて単純なミスは常にあり、いちいち責任を追究しても仕方ないと思っていますが、再発防止の為には、多少は厳しく行動する必要もあり、仕方なくメールや手紙(スウェーデン語)を出したり電話をかけたりしています。先ず上記のLSS経由で病院長に改善を申し入れ(LSSはまさにこういう時に身障者を助ける為にある)、私も個人名でメール並びに実際の手紙を病院長に出しています。同時に地方新聞社(県庁所在地のルーレオ市に本社がある)2社のメールサービスに病院受付の問題を箇条書きにしたメールを送って、取材を促しました。病院長への手紙には、今回の改築にかかわる責任者全員の名前を公表するように書いていますが、通るとは思えないので、メールのコピーを全国の身障者組織と身障者差別に関するオンブズマンにも送信しています。これが改築2日目〜3日目(休日を除く)。
病院長にメールした翌日(火曜)には、メールの返事が無い事を確認の上で地方新聞社のキルナ出張所にも電話して、記事(木曜)にして貰いました。改築4日目のこの段階でキルナ特派員は問題を全く知らず、他の身障者(受付で車椅子の人が困っているのを何度も見かけた)が何の行動もとっていない事が分かった他、ルーレオ本社に出したメールが特派員に届いていない事も分かって、県庁所在地ルーレオ市の連中が(新聞社ですら)いかにキルナを軽視しているかがよく分かりました。ちなみに新聞記事を見た人からはこぞって『よくぞ言ってくれた』と感謝された事から、キルナの人かこういう事に疎いのが良く分かります。
現段階で反応が良いのはLSSとキルナ特派員で、全国組織からは何の返事もありません。病院長からのLSSや特派員への返事によれば、改築は身障者対応を考えている筈だ、との事で、要するに病院長は改築の内容を知らないばかりか、この段階で問題の受付を見てもいない事が分かります。新聞紙面での病院長の返事では、予算の関係で再改築は予定は全く無いとの事で、それはそれで大問題なので、このあたりは更に文書できちんとやり取りして、素早い対策並びに再発防止策をきちんと求めていかないといけません。他に動く人がいないと云うのは、どうにも不便なものです。
最後に無駄話。今回は詐欺まがいの出版商法です。不況のせいか、ネットでのフィッシング詐欺が多く巧妙になった気がする(たとえば、メールでなくファックスで情報を教えろと言って来る類い)のですが、今回は合法的な詐欺です。
半月前にイギリスの(自称)出版社からオフォスに電話がかかり、科学研究費(4年前に認められたもので5年間の総予算が140万クローナ)で研究している題目について記事が欲しいと行ってきました。取りあえずこの手の電話やメールは
『新しい科学雑誌を創刊するから寄稿して下さい』
というのが殆どで、その手の類いの場合は労力と出版価値の勘案で決める(大抵は無視するけど、たまに大胆なアイデアを出すのに良い雑誌がある)のですが、その労力について聞くと、出版社が簡単にインタビューして2ページ程の記事を書くとの事です。どんな記事でも出版前に内容を確認する主義ですが、2ページなら全面書き直しでも大した事は無く、まあ、悪い話ではないな、と思って、ついでに読者層(科学者向けか一般向けかは記事を書く上で重要)を聞いた所、自称3万部で政治家も読んでいるとか。それにしても、政治家を強調するなと思った矢先、相手は
『あ、そうだ、言い忘れたけど、お金がかかる』
とびっくりする事を言って来ました。
一般に科学誌に論文を投稿する時は投稿料が必要で著者が払い、一般向け雑誌の為に記事を書く場合は逆に原稿料を貰います。そのどちらでもないと言うので混乱していると、相手はおかまい無し雑誌の宣伝を続けて、肝心の金額は言いません。業を煮やして金額を聞くと、
『2800ユーロ(30万〜40万円)』
と言って来て再びびっくりしました。私が普段投稿する科学雑誌(科学は万人に行き渡るべきだという当たり前の思想を実行する為に
creative commons という再配布自由化運動に加わっている所で、投稿料も出版経費を全額取る)ですら2ページで高々100ユーロで、桁が全然違います。桁か単位の聞き間違いかと思って再確認しても矢張りユーロで4桁だったので、即座に電話を切りました。そもそも、電話をかけて来て、本来なら無料であるべき(或いはこっちが原稿料を貰うべき)一般向けの記事に対して『金を出せ』と言ってきた時点で詐欺です。
いったい、2ページの記事にどれだけの時間を彼らは使うか? 税金の使い先を公開する原理に従って、私を含む全ての科学研究費受領者の予算申請書(本文はおろか連絡先すら書いてある)も科学振興会の web site に公開されていて、その一般市民向け説明をそのままコピーすれば記事は殆ど出来るし、内容に対する審査(科学雑誌の常識)は無いし、電話インタビューなんて10分そこらだから、一つの記事に校訂まで含めて一人が丸一日かければpdfまで出来上がります。3万部刷って無料配布しても日当ぐらいのお釣りが出る訳で、まるでマイナー雑誌や広告専用紙の広告記事なみの料金です。
そういう広告料並みの金額を要求するという事は、逆に言えば、電話をかけて来た自称出版社は、この手の影響力の無い媒体だという事になります。そんな所には時間をかけて記事を書く価値すら無く、ましてや金を出せなんて論外です。ちゃんとした一般向け科学雑誌の中の記事ならいざ知らず、他の媒体での記事で政治家の研究に対する認識が変わる程、世の中は甘くありません。逆にそんな『金を使った』記事を鵜呑みにして予算獲得の為に政治家が奔走したら、それこそ科学研究費のあり方として間違いです。
彼らはたまたま私で失敗しましたが、カモはいくらでもいます。スウェーデンの『科学研究費』を持っている科学者は数千人おり、その中の1%でもカモになれば、十分な『合法的』収入になります。私のような基礎研究と違って政治家に受ける事が重要な研究だってあり、公開されている情報から、カモにするべき相手の情報は全部相手にあり、詐欺をするには絶好の状況が揃っている言えるでしょう。だから、今にして思えば、相手の名前をきちんと聞いて、この『合法詐欺』の内容と相手を科学振興会に連絡すべきでした。呆れて直ぐに電話を切ったのは失敗だったようです。
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