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リハビリ記録その29

2005-4-03 山内正敏

 10日前に突如として暖波の襲ったキルナでは、そのまま、まさかの雪融けに突入し多くの路面から雪が2週間早く消えています。野山の方は近年に無い積雪量のお陰で雪は残っているようですが、これも早めに消えるかも知れません。
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 スキー客にとっては迷惑であろう雪融けは、新しい 野外用歩行器 (低い歩行器)を使い始めた私にとっては有難いもので、お陰でこの2週間は毎日2キロ以上歩いています。ただし、その成果は足よりも手首に現れているようで、つい1ヶ月前までは一度使うと手首が痛くなって数日休んでいたのに、今では毎日使っても痛みが残りません。一方、以前からの(肘で支える)歩行器は、長く歩く練習よりも、別のタイプの訓練(例えば膝を曲げながら歩く)に使うようになって来ています。
 プール訓練の方は、 ? 階段2段目(水深80cm)での手放し立ち が、やっと1分以上出来るようになりました。10秒とか20秒というのはずっと出来ていたのですが、ちょっとバランスを崩すと回復出来ず、それで30秒以上立ち続けられず、それがやっと克服された事になります。また、 3段目(水深65cm)での手放し立ち も2〜3ヶ月前から始めており、現在5秒ほどが可能です。
 かように全般的に回復はしているのですが、問題点は相変わらずで、筋肉では親指と向こう脛と膀胱が、生体的には腰痛と胃石が頭の痛い所です。それに加えて、半年程前から、膀胱カテーテルの穴の回りの肉塊が勝手に増殖するようになって、紆余曲折の末に泌尿器専門の看護婦に巡り合えて、即、細菌性イボと診察されてしまいました(イボと言う最終判断をするのは医師ですが)。20年ぐらい前に肘に出来た事のある頑固なイボと同じらしく普通の薬では治らない奴で、現在、強力な薬を使っていますが、それが駄目なら、切り取らなければならず、最悪の場合、膀胱にもう1個、新しく穴をあけなければならないかも知れません。まあ、癌でなかっただけラッキーと言うべきかも知れませんが。

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 さて、3年半近くしても回復のほとんど見られない筋肉ですが、せっかくこの秋に日本に行く予定なので(行くと決まった訳ではありませんが)、その際に鍼治療を試す事を考えています。鍼については余り分かっていないようです。鍼灸師の国家試験で1年おき程度にギランバレーについての設問がある事から需要はあるらしいものの、その功罪についてはきちんと調べられていないらしく、検索した限り、統計的には調べられた結果はありませんでした。ギランバレーの統計で厄介なのは、治療をしてもしなくてもどのみち回復すると云う事で、調べなければならない事は治療によって回復が促進されたかどうか(短期的だけでなく長期的にも)、或いは後遺症が減ったかどうかなのですが、それを調べるには大学病院あたりで試さなければ駄目で、そういう研究は今の所見当たりません。国家試験の問題でもギランバレーの一般知識を問うばかりで、鍼との関係を触れた設問は一つもありません。おそらく、ギランバレーの患者で鍼マッサージを受けに行く人が多いと云う現実に対応して、取りあえず知識を問うているのではないでしょうか。
 具体的に罪の可能性をあげると、私のように神経が完全に断線されて極めて細い神経線しか回復していない場合、僅かに残っている神経線を損傷する危険もある訳です。でも、どのみち親指などは全く回復していないのだから、ダメもとで実験的にやってみる価値はありそうです。で、どうせやるなら効果も知りたいので、片手片脛だけやってくれる(宮崎市内の)鍼灸師を探しています。
 ちなみに初期段階の鍼は効くのではないかと考えています。というのも、発病2ヶ月後の人工呼吸の時、一度、採血の針を間違って打たれた事があって、その時だけ打たれた右中指が微かに動いたのですが、3年以上たった今、指で一番回復が良いのがこの右中指という事実があります。偶然にしてはちょっと一致し過ぎているような気はします。ただ、鍼治療自体は全く受けていません。神経回復を決める始めの1年は、鍼を受ける機会を得なかったばかりか、それ以前の指のトレーニング自体も不十分だったので(指だけは体操療養師でなく作業療養師の縄張りになるという不合理な分担制度のせいですが)、鍼を考えるどころではなかったのです。
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 その鍼マッサージのチャンスと言える日本行き(10月上旬の宮崎帰省)ですが、日程は、ヘルシンキ経由で成田叉は関西を経て、何処にも立ち寄らずに宮崎に飛び、4ー5泊だけして帰るという線が強くなっています。私と介護の2人分の旅費(計40万円近く)を自腹で出す割には余りにも短い日程ですが、出来るだけ無理をしない事が肝要なので、この日程は余り変わらないと思います。で、それに伴う準備のほうはまだ進めていません。日本の自治体には社会福祉協議会という組織があるらしいですが、そこへの問い合わせもまだです。ですが、一応、現時点での懸案を書いておきます。
(1)介護:一番無理が無いのは、日本までの往復をスウェーデン人介護(叉はストックホルムの人)に任せ、こっちの日本滞在中は彼に休暇を取って貰って(過労を避けると云う意味、昨年の教訓より)、代わりに日本の介護に任せるというものです。今まで高卒直後の介護が何人も来て問題ないので、高価な介護保険外サービス(4000円/時?)でなくても、たとえば看護学校に行っているような人とか、高校の看護科を出た人のアルバイトでも全然構わないのですが、未だに連絡先すら見つけていません。給与のほうは前回舌足らずだったので補足しておくと、キルナ市から出るのは、恐らくは1日15ー18時間介護×時給1500円以上の2万〜4万円/日で、時給といっても通勤の時間とか全部含めた時間で出るので、日本的な意味での時給はもう少し高くなると思います。あと社会保険庁からキルナ市に出ている介護関連全費用は 250kr/h で(週に40万円ぐらい)、そのうちの6〜7割が実際の介護の費用(給与+厚生関係)だから、実際の時給がどこまで認められるかは分かりません。
(2)宿:ホテルの条件は昨年の コロラド旅行記 に書いた通りで、とにかく段差と戸口の広さとトイレの3点をクリアーすれば何処でも構いません。風呂には入れないのでシャワーしかないところが有難いものの、これは絶対条件ではないし、トイレも自室から段差無しでいける範囲に大きなやつがあれば良いので、かなり多くのホテルが可能ではないかと考えています。今までの所、関西空港の近くは心配いらないようですが、他の情報はまだです。特に宮崎の宿は、webを見る限り、身障者仕様はシーガイア(=結果的には外資の為に自然公園を潰し多大な公共投資をした植民地政治の見本)しか宣伝しておらず、シーガイアのように不便な場所にはとても泊れませんから、市内の情報を集めているところです。
(3)車:未だに誤解があるようですが、タクシーに乗る際は、普通の車の助手席に座っています。移動方式は 写真 の通りで、空になった車椅子はタクシーの後ろに積んでいます。スウェーデンのタクシーはほぼ無条件に小型ワゴン車なので問題ないのですが、日本のタクシーはほぼセダン型なので車椅子を積めません。かといって、いわゆる 車椅子用のバン は馬鹿でかくて、普通のタクシーの5倍の費用がかかります。2年も前に使うのを止めた代物ですから馬鹿馬鹿しくて使ってられません。そういう訳で、ハッチバック車(中型5ドア)のタクシーを探しています。
(4)車いすや歩行器の借用:住民票があれば短期借用は可能なようですが、私の場合は不明です。ただし、同級生に医者がたくさんいるので、最悪でもその方面を通して借りられるのではないかと思います。
(5)医療保険:日本に住民票がないので、自治体がらみの補助は期待できません。もしも国の方が駄目なら(駄目だろうなあ)、旅行保険という事になりますが、これは現在調査中です。裏わざとして、1ヶ月間だけ宮崎に住民登録して国民保険に入るというのがありますが、恐らく非合法でしょう。企業等からの海外派遣で、赴任中に重い病気になった人が日本で医療を受ける事って多くありそうな気がしますが、そのあたりの事情は良く分かりません。

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 最後にオーロラ。先月お知らせしたスウェーデン大使館発行の雑誌に載せた オーロラの話 ですが(ええと、昔からこの雑誌からだけは原稿料等を一切受け取らない事にしておりますので、その点は誤解なきよう)、そのリアルタイムシステムを手弁当で作ってくれた人(和歌山の田舎のふつうの人)が何かの 科学教育賞 を貰ったようで、賞嫌いの私もこの人選には大いに納得してしまいました。

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