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放射能汚染のモニター方法(4月23日版)
(http://www.irf.se/~yamau/jpn/1104-monitor.html)
=== これは色々な分野の研究者の有志による『専門家知識交流ML』のまとめの一部です ===
=== 議論はまだ途中なので、今後大きく変更するかも知れません ===
=== 一部を詳細に書いた旧まとめは
こちら(4月10日版) ===
課題
1. 大気汚染 (主に将来対策、危険区域では現在も問題)
1.1. 将来の不測の突発性流出の際に、リアルタイムでダストの行き先をモニターする。
2. 海洋汚染 (現在進行中の問題、将来対策)
2.1. 放射性物質の3次元的広がりを把握する。
2.2. 放射性物質による海洋系への影響を調べる。
3. 土壌汚染 (現状把握、将来対策)
3.1. 放出された放射性物質の正確な分布図を作る(速報は福島大から出ている)。
3.2. 放射性物質の2次汚染ルートを把握する(水圏、生体濃縮、ダスト舞い上がり)。
4. 森林汚染 (現状把握、将来対策)
4.1. どういう地形のどういう森林が一番放射能を貯め易いか調べる。
4.2. 放射性物質の2次汚染ルートを把握する(土壌とは違う)。
5. 河川湖沼汚染 (現状把握と今後の変化)
5.1. 放射性物質の3次元的広がりを時間を追って把握する。
5.2. 放射性物質の3次汚染の可能性とそのルートを把握する。
6. 地下水汚染 (現状把握と今後の変化)
6.1. 放射性物質の広がる経路と速度を把握する。
6.2. 放射性物質の3次汚染の可能性とそのルートを把握する。
7. 魚介類内・家畜内濃縮(現状把握と今後の変化)
7.1. 長期に渡る濃縮過程のモニターの為に、定期的に幅広いサンプリングをする。
7.2. 異なる放射性物質の影響の違いを予測する
8. 植物・菌内濃縮(現状把握と今後の変化)
8.1. 長期に渡る濃縮過程のモニターの為に、定期的に幅広いサンプリングをする。
8.2. 異なる放射性物質の影響の違いを予測する(動物とは違う)
測定の主な手法
a. 専門家によるサンプリング
b. 地域住民に協力してもらうサンプリング
c. ロボットや浮標、携帯を使った無人サンプリング
d. 飛行機や船を使った走査(有人/無人)
e. 電磁波などを使ったリモートセンシング(衛星、航空機、船、地上)
f. シミュレーションの限界を知った上での有効な活用
* 直接探知が出来る範囲はシミュレーションは誤解を招く元になるので直接探知が望ましい(3月25日付け原子力安全委員会)
* 直接探知が困難な範囲(海洋、水系)はシミュレーションで大まかな分布を掴む事が、何処を測定すれば良いかの目安になる。
必要な対策
A. アルカリ族であるストロンチウムやセシウムの土壌や水での化学的性質を知る
B. 生活・復興で被曝を減らす為にどういう場所を避けるべきかを地球科学的に示す
C. スウェーデンやフィンランドでとった対策のうちのどれが日本に有効であるかを調べる
D. 動植物を積極的に放射性物質除去に使う方法を考える
詳細
1a. 大気汚染のリアルタイムモニター(既設固定点)
* 各地で10分置きに計測されているが、発表がリアルタイム化されていない。
1b. 大気汚染のリアルタイムモニター(30キロ圏の外)
* 原発80キロ圏に生活している人(官民個人を問わない)からネット発信してもらう。
* その為の機材並びに専門の設置人員が地域住民以外に必要。
* データを集積する場所(科学博物館?)が必要。
* データの質を均質化する自動プログラムと、パニックを一番避ける形でのアメダス型表示のプログラムが必要。
* あくまで、今後起こるかもしれない大量放出のみに専念する。
現状:技術=クリア、機材費用=必要、地域協力者=必要
1c. 大気汚染のリアルタイムモニター設置(30キロ圏内)
* 線量計+GPS+携帯+電源のセットで機能するリモートモニター装置で無人発信する。
* 30キロ圏外でも、学校の先生とかに渡し置くと有効。
* 観測装置のメンテを出来るだけ少なくする対策が必要。
* データに関しては上記1.1aと同じ。
現状:技術=原理的には可能だが、安価な統一フォーマットを模索中、機材費用=必要、地域協力者=必要
1d/3d. 大気汚染/地表汚染の空中測定
* 現在既に行われている方法は有人なので、いざと云う時(放射能値が高いとき)に使えない。
* 簡易測定が出来るラジコン(無人飛行機)は短時間で開発可能な筈。
1e/3e. 突発性流出そのものや、その高さのリモート探知
* 大気電場は明らかに変化するので、各地方気象台で観測をやって貰うと効果がある。
* 大気の電気伝導度の変化やヨウ素濃度の変化を水平方向のリモートセンシングで調べられるかもしれないが、技術的に可能かどうかは不明。
* 酸化セシウムなどの吸収線を使う方法が可能かも知れないが、技術的に可能かどうかは不明。
* 人工衛星からの直接探知は今のところ困難である。
2a. 海洋汚染のサンプリング調査
* 現在行われているサンプル調査ではリソース不足で間に合わない。
* 海洋系への影響に至っては、複雑だろうという漠然な感覚と、サンプル的な例のみが紹介されただけで、難題の一つ。
2c. 海洋汚染の無人調査
* 浮標に通信機を付けて、水に流れと、放射線の推移を調べる事は出来ないか?(アイデア段階)
2d/2e. 海洋汚染の空中や船からのリモート探査
* 空気中と違って水中の電気伝導度への寄与は期待出来ない。
* 海面付近の放射性物質は、そこの空気の電気伝導度を高めるが、それ利用する方法は未確定
* 水中にケーブルなどを敷いて電磁的に調べる方法は有効であるか?(今の所ネガティブな意見の
2f,4f-8f. シミュレーションの活用
* 海洋汚染のシミュレーションは始まっている。
* 陸の表層水はまだで、地下水は地下水系が分からないとシミュレーションそのものが困難。
* 生体濃縮に関して、モデル・シミュレーションの議論はまだ始まっていない。
3a. 土壌汚染の正確な分布図
* 土壌由来の放射線量は福島大から出ている
* ヨードとセシウムは既に原子核関係者や地球化学会が始めている。
* ストロンチウムについては、分析器が少ないので、これを解決する必要がある。
* 測定発表に当たっては、Bq/m2 と Bq/kg の両方の表示、更にサンプル場所での空中放射線濃度の併記が望ましい。
3b. 土壌汚染の詳細
* 事業車(郵便、宅配、タクシー、電気ガス水道)に線量計を乗せて相対的に何処が危険であるかを100m以下の距離ごとに全ての道路できめ細かく調べる(危険値を示した所は良い測定器で再調査する)。
3A. アルカリ族としての土壌中のストロンチウムやセシウム
* 影響評価が、化合物の測定と共に必要である。
* セシウムやストロンチウムが土壌内でどういう形の分子(酸化物としてか水酸化物としては他の物質としてか)を知っておくと、その吸収線とか分かって、リモートセンシングの助けになる。
3B/4B. 生活対策
* 分布が極めて非均一なので、文部科学省の新ガイドライン(4月20日)にある限界値に子供の行動範囲が収まっているかどうか調べる必要がある。
* 風上(原発向き)斜面の森が一番あぶないので、そこを避ける。
* 類似の情報は学校・保育所以外でも重要。
4a/5a. 森林汚染/河川湖沼汚染把握
* 本格調査はまだ始まっていない。
* 系統だった調査方法の確立が急務。
4b/5b. 森林汚染/河川湖沼汚染把握
* 漁業・林業従事者への協力をどのように依頼するかが決まっていない。
6a. 地下水汚染把握
* 本格調査はまだ始まっていない。
* いくつかの試験井戸を掘る必要があるが、人も金も足りない。
6b. 地下水汚染把握
* 農家の協力が不可欠だが、危険値が出た場合の心理的社会的問題を考える必要がある。
* 農家への協力依頼は自治体が窓口にならないといけない。
7a/7b. 魚介類内・家畜内濃縮
* 推移を見るため早急の調査開始とその継続が必要。
* 漁業従事者への協力をどのように依頼するかが決まっていない。
8. 植物・菌内濃縮(現状把握と今後の変化)
* 推移を見るため早急の調査開始とその継続が必要。
実行手法
* 学術会議や政府に提案する事が前提(恐らく一番遅いがこれは最優先)。
* 繊細な手法以外は、測定方法を学会などのホームページに流して、ボランティアを集め易い環境を作る。
* どういう知識の人間に何が出来るか、っというリストはあった方が便利。
* 企業を動かす事も視野に入れるべきで、どういう企業が放射能情報を欲しがっているか考える必要がある(運送会社とか)。
* 出来るだけスポンサー(物品提供)を捜す。
* ボランティアがやる場合、そのとりまとめ役は科学者である必要は全然ない。寧ろボランティアの組織に任せた方が良い。