こちらは夏本番です。とにかく最高の気候と景色です。
例年より3週間早く雨期に入ったラップランドは、梅雨明けも非常に早くて、1週間ほど前から好天の高気温(最高が20度以上)が続いています。内陸ラップランドと九州とは気候が同期している筈なので、日本の梅雨明けも早いのではないかと思いますが如何でしょうか?ともかく夏空が夏至祭に間に合ったのは過去10年で初めてで、当然ながら週末は日光浴を兼ねて遊び回りました。
連休初日の金曜は同僚7人でラップランドで最も有名な「Lapporten」というところにハイキングに行ってきました。訳すれば「ラップの門」というこの二重山は、2つの山があたかも門柱の如くコの字型にそびえて、その真中に平坦な丘陵が広がり、その風変わりで安定感のある地形ゆえに昔から原住民に神聖視され、かつ画家の目を引き付けて来ました。このLapporten、キルナの北西90キロのアビスコという村にあって交通の便も非常に良いので、当然今までに何度か行っていておかしくないのですが、実は今回が初めてです。別にさほど遠い訳ではありません。「門」に挟まれた丘陵にある湖まで片道10キロ少々で、その間にだらだらと600メートル登るだけだから、ほとんど平地です。それでも7人で行くとペースが落ちるので、結局3時間余りかかりました。昼食後は、5人が湖のほとりでのんびりしている間に別動隊を組んで(といっても私ともう一人だけ)で、「門」の片割れに向かい、1時間10分かけて標高1633メートル(湖からの標高差が680メートル)の頂上にたどり着きました。「門」だけあって、360度の眺望は抜群で、眼下の湖はもとより標高差1000メートル以上の「下界」を眺めて満喫しておりました。山の麓から頂上に至るまで花が満開で、道もさほどぬかっておらず、気持ちの良い山歩き+山登りでしたが、すでに蚊が出始めていたのには悩まされました。花は例年より2〜3週間早いようです。下山は途中に150メートル程の崖がある為に迂回する必要があり、結局この山だけで往復3時間の行程になりました。入山が9時半、湖が1時ちょっと前、別動が1時半から4時半、下山が7時15分です。下山後はまっすぐにはキルナに戻らず、近くの友人のところで10時半まで遊び、帰宅は12時過ぎ。費用は分乗した車のガス代のみで、一人当り800円です。
で、そのあおりで土曜は朝寝坊したので、16キロのランニング(真面目に走ったのは10キロだけだけど)でお茶を濁しましたが、元気の回復した昨日はこんどはサイクリング登山に行ってきました。場所はキルナの西60キロ余りのニカロクタで、そこから一番近い山に登って来ましたが、片道5〜6キロの標高差700メートルとという、金曜のわずか半分の行程とは言え、釣鐘状にそびえ立ったその山は眺望の上ではLapportenに引けを取りません。写真をバチバチ撮って時間を潰し、さらに崖下りに時間がかかった(迂回道がない)ため、たった一人にもかかわらず山歩き部分だけで4時間ほどかかりましたが、まあ、自転車を前後に控えていたから、こんなペースでちょうど良いのでしょう。
まだ6月と云うのに山路は乾燥しており、花は満開、蚊は少なく、しかも崖のくぼみには雪まで残って、そこからしたたり落ちる水で給水の心配すらなく(山歩きだけで3リットルほど飲んだように思う)、要するに登山にはベストのタイミングだったと云えます。ただ唯一大変だったのが風運の悪さで、行きが弱い逆風だったから帰りは凪か追風だろうと思っていたら、気圧配置が移動したらしく向い風が吹き出して、最後の20キロはかなりバテました。キルナ発が10時少し前、ニカロクタ着12時40分、13時に歩き出して途中20分ほど寄り道をしたあと、14時に釣鐘山の崖の麓、そこからの登り降りで約2時間で、下山が17時、キルナ着20時過ぎです。さすがに疲れました。来年のバサロペットの練習みたいなものです。
山歩きと言えば実は先週日曜も出かけています。オーロラ観測の大先輩で、また父の(旧制高校の山岳部の)先輩でもある大先生(77歳)が土曜の夜に突然電話を掛けてきて、今夫妻でキルナの宿にいるとの事で、さっそく我が家でトナカイを食べて貰いつつ話を聞くと、既に一週間前にキルナ入りして、その後アビスコに3泊、ケブネカイゼ山荘に2泊、ニカロクタに1泊してこの辺り山を歩き回っているとか。あの歳で夫婦そろってニカロクタからケブネカイゼ山荘までの20キロ山路を往復とも歩くのだから凄じいばかりです。さすがに第一回南極探検隊のメンバーだけのことはあります。本来ならアビスコ/ニカロクタの大旅行をしたかったのだそうですが、あいにく天気が悪いのでローフォーテンへ変更するとの事で、それで、翌日曜にナルビクまで汽車で付き合いまして、午後1時にそこのバス停で別れたあと、曇天のなかナルビクの山路を楽しんだという訳です。これも初めて。で、地図を見ながら1400メートルの山を目指して歩き始めたものの、700メートル地点の湖から先は氷の残った岩場で、しかも帰りの汽車の時刻が気になったので、これは後日の楽しみに残す事にして今回は諦めました。この時はまだ雪解けの真っ最中で、長靴だからこそ歩けたという感じでしたが、それでも山路からのフィヨルド眺めは格別で気持ちの良い往復4時間ほどの散策でした。で、大先生が雨を嫌ってキルナを出た翌日からキルナは好天に恵まれています。まあ、こんなものでしょうか。次のVisitorは10日後に来ますが、そうするとまた天気が悪くなるのでしょう。天気の悪い方が仕事ははかどるのですが、、、。
2001-6-25 「夏至祭の代わり」 山内正敏