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リハビリ記録その186

2018-5-5
山内正敏

 1月〜3月の寒い3ヶ月を吹き飛ばすぐらいに温暖な4月で、あっという間に雪が消え、凍結時の滑り止め用の土砂で歩道がドロドロの状態です。

 そんなわけで、2週間前から(松葉杖の代わりに)距離歩行を再開しています。ただし道路の状態が完璧でないので6km強程度の中途半端な距離ばかりで、1kmごとのラップもイマイチで、不十分と言えば不十分ですが、この時期としては十分です。ハーフマラソンまで3週間あるので、それまでにはマトモな状態まで上がると思います。ちなみに、砂利とかが多くて足首が不安定なので、とりあえず足首固定器は使っていますが、昨年までのように臑の部分まで固定はせず、機能を半分使うだけにとどめています。これは足首への負担を高める代わりに、踵や臑への圧迫をなくしてくれて、昨年までこの方法に気付かなかったのが今更ながらに残念です。
 あと、3月に寒風などで出来なかったスキーが、やっと4月第2週末に可能になって、土曜日曜続けて滑りました。昨年春もスキー日和が全くなく断念していたので2年ぶりとなりますが、2日で勘が戻り好調時のタイムで滑っています。とはいえ、それ以上は簡単ではなく、松葉杖が速くなってもスキーにはあまり差が出ないようです。結局のところ、脚力の問題ではなく足首の安定性の問題のようです。
 あと調子が良いのは自転車で、ここ3年ほど停滞していたのに、急速に記録が良くなっています。これは先月も書いたようにズボンを自転車用からジーンズに替えたお陰ですが、それにしてもたかがズボンでここまで差が出るとは思いませんでした。

 さて、先月はウイーン出張を現地介護のみに頼って、国際線乗り継ぎのストックホルム空港ですら介護を手配しないという単独行動(アパートからホテルまで8時間半、帰りは接続が悪くて介護と別れてからアパートまで10時間)に挑戦しました。欧州内の国外旅行で現地介護に頼ったのは4年前のロンドン以来2度目ですが、ロンドンの時は行き帰り共に同僚が同じ飛行機だったので、それよりは一歩前進したことになります。他には足首固定器を外して過ごしたのも進歩でした。最低でも片道(2km半)は会場まで歩き、長い昼休みをとって5km近く歩いた日もありました。もっとも、日本のような点字ブロックと段差スロープの塊のような道路に比べると全然楽だったという印象です。他には地下鉄も足首歩行器なしで利用しています。こちらは挑戦と言えますが、日本と違って危険を車両とホームの間で不安を感じることはありませんでした。
 現地介護のほうですが、非常に良い介護会社に恵まれたお陰で気持ちの良い滞在が出来ました。さらに現地人ということで事実上のドイツ語通訳がいた状態なので、その点でもプラスでした。欧州地球科学会総会は少なくとも2022年まではウイーンなので、今後も利用させてもらうことになります。
 もっとも、アレンジの為に色々問い合わせたり、介護会社と何度もメールのやり取りをしたりで、恐ろしく手間と時間がかかったのも事実で、一回限りの訪問先では現地介護をアレンジするメリットはあまり無いようにも思えました。欧州内だけなら早めにチケットを買えばキルナから往復7万円程度で手に入る上に、介護が26歳未満だったりストックホルムからのアレンジだったりしたら、3〜4万円程度で済むからです(もっともホテル代が馬鹿にならないけど)。
 介護と言えば、今月また週末・休暇時用の臨時介護を入れ替えました。高校3年生の卒業シーズンだからで、少なくとも前回よりはマシなメンバーになった気がします。

 さて、例によって無駄話です。
 昨日ノーベル文学賞選考の延期が正式に発表されました。これに関しては日本でも色々報道されていると思いますが、(こっちにとっては当たり前の情報が)色々抜けているので、その補足を。
(1) ノーベル物理・化学賞を出している王立科学アカデミー(Kungliga Vetenskapsakademien:1739年設立)は10の科学部門に計650人程度(うち外国人が175人で、65歳以下のスウェーデン人も175人)を擁する組織で、きちんとした手続きで科学研究環境を整えることを目的にしています(日本の学術会議と学士院の両方を兼ね備えた組織)。ちなみにキルナの研究所の歴代専任教授は5人ともこのメンバーで、これが大学だと教授かつ重鎮ということになって遥かに選定率が少なくなりますが、いずれにしてもそういうレベルの人が集まるそしきです。それに対して、文学賞を出しているスウェーデン・アカデミー(Svenska Akademien:1786年設立でこちらも王立=非政府組織)は定員18人終身制(5月2日までは脱退すら出来なかった)の小さな組織で、サイズ故に組織を近代化する必要もあまりなかった組織です。医学生理学賞を決める組織はカロリンスカ研究所が主体ですが、こちらも近代化が進んで王立科学アカデミーに近くなっています。
(2) ノーベル物理学賞は、これだけ沢山いるアカデミー会員が「推薦者」を推薦するところから始まります。そして、各分野が総意で「重要」と感じた項目に対して出され、受賞者はその付け足しに過ぎないので、「分野の総意」という点が重要であり、多くの研究者が同時に取り組んでいるような分野が選ばれやすくなります。プラズマ物理(磁気リコネクションとか)での受賞がないのは、意見の対立が未だに残って「総意」にならないからで、その意味ではノーベル賞が出ない現状の方が私には健全な気がするのですが、それはまた別の話です。ともかく、そういう感じで選ばれるので、作品・作家に対して選ぶ文学賞とは性質も違い、当然ながら、今回のスウェーデン・アカデミーのスキャンダルでは影響は全くありません。むしろ、この状態で文学賞なんか出されてノーベル賞の価値を落とされるほうがよほど嫌な訳で、それで今回の延期決定を歓迎するコメントが相次いでいます(国王のコメントも延期せざるを得ない事態に対して残念という内容で、延期そののものに対して残念とは言っていない)。
(3) 今回のスキャンダルは人間相手の写真家という「被写体の(性的)魅力を最大に出す」という、セクハラに関してグレーな職業と関係しており、性犯罪にうるさいスウェーデン警察も捜査には乗り出しておらず(少なくともレイプではないということ)、日本ならおそらくスキャンダルにならなかったのではないかと思われます。それよりは、パワハラに近いセクハラを行なった財務次官(財務次官も写真家もセクハラを否定しているところは同じ)のほうが遥かに「スウェーデン的には問題」でしょう。しかも、財務次官をかばった財務大臣には任命責任がありますが、写真家の方はスウェーデン・アカデミーの会員の配偶者という関係なだけです(まあ、お金が動いているし、アカデミーの建物内での事件という面もあるので、そっちが問題なのだけど)、関係性は財務大臣よりか低い訳で、それに対する反応の違いにスウェーデンと日本の違いを感じました。
(4) 今回の決定は、ToMe運動発祥のアメリカに例えるならアカデミー賞を延期するようなものであって、スウェーデンと米国の差すら浮き彫りにしていると思いました。

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