2014-6-1
山内正敏
例年春の忙しい季節(学会や申請書)が2週間前に一通り終わった事もあって、やっとリハビリに専念出来る季節になりました。幸い、4ヶ月続いた例年より寒い気候も終わって一気に暖かくなり、例年より遅かった道路脇の新緑をあざ笑うかのように、例年より早く木々が息吹き初めていて、外に出るのが楽しい気候となっています。
5月の最大のイベントは4度目になるハーフマラソン(先週末)で、今年は介護の要望に合わせて、介護の車で330キロ南の街に行きました(ちなみに費用はバスで往復する倍かかった)。片道4時間弱の距離ですが、考えてみれば普通の意味で車でこの街に行くのは初めてで、その意味では良い経験でもありました。ちなみに途中で、年に1度あるかないかの雷雨(稲妻が何度も見えた)に見舞われて、100キロの高速を70キロ徐行せざるを得ないほどだったのも良い経験でした。
肝心のハーフマラソン
ですが、4度目となると認知度も高くなって、正式部門として「競技男子」「競技女子」「一般男子」「一般女子」の他に「一般特殊クラス」が登録の段階で新たに設けられ、私に限らす、身障者等、特別な考慮の必要な人に門戸がひらかれました。参ちなみに昨年は、結果の所だけ「Yamauchi部門」という名前で記録が出て、一昨年と3年前は一般男子部門です。
継続は力なりという言葉を地で行っているのは報道の方も同じで、今年はとうとう事前インタビューがあり、その記事が大会当日の朝刊に書かれて、スタート地点で「あの人、新聞に出てた」という囁きをあちこちから聞きたばかりか、レース後には、知らない老人から電話で「あなたの使った歩行器はどうやって手に入れたのか」という問い合わせまであったほどです。
そういう期待を受けたレースでしたが、肝心の記録の方は、昨年出した世界記録に1分及ばない3時間47分20秒に終わってしまいました。特に20キロ地点で昨年より2分速く(17キロ地点では4分速かった)、最後に失速する典型的な「前半飛ばし過ぎのクラッシュ」型だったので、本当に「あと少し」と言えます。もっとも、ロスタイム(昨年は1周目3分弱、2周目2分弱あったロスタイムは今年はなかった)まで入れると、実質的には昨年や一昨年よりも6分遅いので、そこまで「惜しい」という訳ではありませんが、公式タイム世界記録の連続更新が途絶えたという意味では心残りです。
ただし、記録にそこまで不満はありません。というのも、先月書いた通り、新しい歩行器が古い歩行器よりも重くて、同じ体調でも3〜5%余分に時間がかかること(差は長距離ほど大きくなり)が分かっていたからです。しかも手の握り部分が極めて硬く、更に一部凸状になっていて、5キロ以上歩くと次第に手が痛くなる類いのものだからです。10キロ歩いた時に、嫌だなあという感触はあったのですが、案の定、20キロでは影響が大きく出て、掌に酷いマメができてしまいました。ラスト4キロが実質で昨年よりも7分近く余分にかかっているのは、ひとえに、新しい歩行器の握り部のせいといえるでしょう。その教訓で、早速、握り部をナイフで削り取ってもらって、新しい握りをつけたほどです(というか、もっと以前にそうしておくべきだった)。他にも左の手すりが右より1センチ低いとか、いろいろ問題があり、これら歩行器に関するハンディをロスタイムに換算したら、記録を更新しているのは間違いありません。そんな訳で、それなりには満足していますが、それでもラスト1キロで記録更新を逃したには変わりなく、多少悔しいことには変わりありません。
逆に、古い歩行器がどれだけ良いものかを今更ながらに実感した訳ですが、これを使えなかったのには訳があります。実は、新しい歩行器の調整が終わるまで古い歩行器を捨てないように、病院の修理室(そこで身障者関係の用品を調整・修理する)の工員の方にお願いして、了承もして貰ったのですが、年末年始のどさくさで、清掃担当か勝手に捨ててしまったという、まさにお役所的な理由で、一番使いやすい歩行器がなくなってしまったのでした。そして、新しい型の歩行器は、この世の「技術革新」の例に漏れず、流行に乗ったタイプの機能を加える形で、オーダーメード的な修正がし難くなって、私のように「距離を歩く」人間には改悪になってしまったのでした。要するにパソコンなんかと同じです。
とはいえ、今後も毎年ハーフマラソンに出ておれば、いずれは認知度が全国レベルで高まる筈だから、最終的にはそれに合うような歩行器が製作されると思うので、気長に「身障者・歩行器長距離部門」を実践し続けていこうと思います。
最後に例によって無駄話です。
330キロ南の街には車で行ったのですが、ちょうど雪融け直後という事もあって、雪が一番早く溶ける道路横だけに下草が生え始めていて、それを食べるトナカイが大量に道路脇にでていました。ちなみにこのトナカイですが、アラスカや北海道(完全野生)と違って、全てのトナカイに所有者がいます。つまり放牧されている事になります。なので、トナカイをひき殺すと、その所有者に国か市が保証金をだす関係で、警察に連絡しなければなりません。ちなみに、トナカイはどのような動きをするか予想出来ません。最悪、道路に飛び込む事もあり、馬なんかと全然違うので、トナカイを見かけたら徐行するのがドライバーの常識となっています。