2013-4-14
山内正敏
前回の報告から暫く風邪気味で、それが治った途端に欧州地球科学学会(参加1万人以上)の出張で、あまり訓練の出来ない1ヶ月でした。とは云え、復活祭休日には10キロ強の坂道を2時間余りで往復したりしています。
前回の報告で少し触れた欧州地球科学学会ですが、今年は発表4件に加えて、セッションの主世話人の仕事が1日半あって、結果的には昨年よりもくたくたになって昨日戻って来ました。天候も最悪で、到着時は飛行機から地面を見ると雪が残っており、到着後も連日寒風が吹き荒れて、ストックホルムはおろか、キルナよりも寒く、結局風邪をぶり返してしまったほどです。もっとも、病気後初めての大きな会議だった昨年に比べると、今年は慣れた感じがして、広い会場をそれほど苦に感じないようになりました。この分だと、他の類いの大きな会議も今後は参加出来そうです(予定はありませんが)。
会議に臨んでは、昨年よりも精神的に余裕があったせいか、今年はウイーンの中心部にも15〜16年ぶりに行ってみました。記憶では、中心部は石畳の歩き難い道路だった筈ですが、グラーツやブルージュなどの石畳に比べればマシなもので、これなら街中に泊まっても困らないと感じたのが収穫です。もっとも、朝のラッシュに会場まで地下鉄で行くのは危険過ぎるので、今後も歩ける範囲に泊まるとは思います。
ウイーンでは、学会の他に国連の建物にも出掛けました。というのも、学会の世話人の一人(ウクライナ人)が2月からIAEAで1年余り勤める事になって、その伝手で、IAEAエネルギー局の環境部の人たちと面会する事になったからです。名目は「国連チェルノブイリ・フォーラム報告書」の翻訳関係者として表敬訪問で、広範な内容を誇る巨大文書の日本語訳をした事だけでなく、学会のチェルノブイリ・福島セッションで66件(64人)もの発表があった事に素直に感心されたりしました。面談の内容は、地球科学者の視点とIAEAの視点の違いと、お互いの協力の必要の確認で、もしかすると2年後ぐらいに共同で小さな会議を開くかも知れません。結局のところ、こうして仕事はいつまでも増え続けるものなのでしょう。
この訪問の際に驚いたのが、地下鉄の国連側入口にエレーベーターがないどころか、メイン道路から上がる歩道が石畳で全然身障者対応でない事で、建物内(一般公開用のレストラン)こそ身障者対応だったものの、ちょっと国連周辺としては有り得ないと感じてしまいました。身障者対応が不十分なのはホテルも同じで、一番近いホテルには正式は身障者部屋はありません。トイレに歩行器が十分に入るスペースがあるとの話だっらので、今回の忙しさを考えてそこに泊まった所、旅行用のポータブル歩行器を後ろ向きに入れてやっとギリギリ納まる広さで、普段使っている安定感の高い歩行器だったらトイレに入れない所でした。外への道も、階段以外は非常に遠回りする様になっていて(エレベータを使って出られる筈の通路をケチっている)、国連に訪問するような人が泊まる唯一の大型ホテルとして、ここまで身障者対策がない建物をウイーン市が良くも認可したものだと呆れてしまいました。
身障者対応といえば、会場の部屋もそうで、例えば福島セッションの部屋は入口のドアが狭くて、歩行器がそのままとおらず、半回転するようにしてやっと入室した次第です。会場のドアは他も部屋もどれも重く、誰かに手伝って貰わないと開閉出来ません(それはホテルのドアも同じ)。ただし、この手の問題はほとんど全ての会議場に当てはまる事なので、目くじらをたてる程ではありません。
肝心の福島セッションですが、100席が完全に埋まって、立ち見が入口の外まで続いて、世話人のうちの2人までが入るのを諦めた程です。その意味では苦労が報われた気がします。もっとも、「身障者でもこのくらいは出来る」という自信が、むしろ無意味な弊害かもしれませんが(=仕事が増えるだけだから)。
ちなみに、会議の終わった週末である今日は3万人超規模のウイーン市マラソン大会が開かれて、ハーフマラソンの部門もあります。マラソンも会議も毎年この時期ではあり、週末が重なるのも今回だけではありません(昨年と来年は2週間程ずれていましたが)。なので、何年か後には、このハーフマラソン(制限3時間)に参加するのも目標の一つに掲げようと思います。
最後に例によって無駄話です。
大きな国際会議では面白い話も聞けますが、今回はとりわけ興味をそそる話がありました。それは、惑星の長期的な配置(100年平均:例えば100年で起こる惑星直列の累計影響)が、その引力(正確には潮汐力という)を通して、太陽内部(地球で言えばマントルあたりの深さ)に影響を与え、太陽活動の長期的な変動を決めているらしい事です。示されたデータを見るとかなり説得力のある内容で、メカニズムも納得出来るものです。これが正しければ、この先100年程の太陽活動も予想できて、それによると、向う50年以上、太陽活動極大期の黒点数が減り続けるそうです。というわけで、10年後の太陽活動極大期は、今回にもましてオーロラが見え難くなるかも知れません。