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リハビリ記録その93

2010-8-1
山内正敏

 6月に続いての不順な天候で、夏のトレーニングの出来る日が少なく、ベランダでの日光浴すら殆ど出来ませんでした。雷雨が多く、退院以来、最も日焼けの出来なかった夏休みだと思います。
 先月はご心配をおかけしましたが、胃薬を止め、しかも休暇でストレスが無かったお陰で、おおむね復調しております。胃カメラでは異常は全く無く、近々、普通のレントゲンで噴門(胃に入口)付近の機能の検査をする予定です。病気のせいで膀胱が開かなくなる程ですから、噴門もおかしくなっても不思議はありませんが、ギランバレーがらみでそのような障害が出た例はないので、単なるストレスかもしれません。もしもストレス性なら、その意味では、ヨーロッパ式の長い怠惰な休暇と云うのは確かに体に良いものです。

 休暇のトレーニングといえば、殆どが長距離歩行と松葉杖ですが、天候不順のせいで距離はそこまで伸びておらず、7km以上の歩行は週に2回程度で、5月とかわりません。もっとも、他にも1時間以内の散歩は良くやっているので、それで充分では無いかと言われればその通りで、実際に記録は伸びているのですが、日本と違って気持よい散歩日和の少ないキルナでは、やはり勿体ない気がします。
 それでも折角の休暇だから挑戦ぐらいはする訳で、今年はスキーコースを歩行器で歩いて来ました。砂利道+急坂という大変なコースなので、2km半を1時間半という松葉杖並のペースでしたが、ともかく20%の勾配の砂利道を標高差50mも登るという難所をもなんとか乗切って無事に完歩しております。この坂を歩行器で登った人は恐らく他にはいないでしょう。ここまできつい坂だと、歩行器は介護に支えて貰うので、私よりも介護の方が大変だったかもしれません。だから少なくとも向う2年(介護の負担が減るだろう時まで)は同じコースを行く事はないと思います。
 他に新しい事と云えば、10kmのレース(坂が6割)に参加して来ました。ハーフマラソンと同じコースの10km部門(ハーフは2周する)で、他に6km部門もあります。歩きの連中は6kmに出ていましたが、それでは全然面白くないので私は10kmに参加しました。ハーフより15分遅れて出走なので、ハーフの連中に抜かれるまでに何処まで歩けるかというのも興味のある所です。結局、2km地点でハーフの先頭ランナーに抜かれ、9km地点でハーフの最後のランナーに抜かれてのゴールで、お陰で飽きる事のまったくないレースになりました。同じ感じで近い将来にはハーフマラソンにも参加したい(フルマラソンと同じコースの同時スタートの場合)とは思っているのですが、今の所、適当なレースが見つかっていません。ちなみに、歩行器は私一人の参加で、10km部門での歩きも私一人でした。
 歩行の記録の方は、5月に出した記録(8kmコース)を僅かに更新した他、1年ぶりの挑戦になる野外松葉杖や400mトラック15周(6000m)などで、それなりのタイムで歩いています。松葉杖は1.7kmのコースで昨年のベストの97分から、今年は一気に80分になっていて、冬場の練習の成果がそのまま出た感じです。もっとも、目標の1時間にはまだまだで、達成は来年になるでしょう。トラック6000mの方は、昨年の60分30秒から、今年は57分30秒になって、始めて6.0km/hを越えました。瞬間的に100mだけ6.0km/hを超えることなら一昨年でもぎりぎり出来ていましたが、それを1時間続けるのは別の話で、ようやく『分速100m』でなく『時速6km』と公言出来ます。

 そんな具合でリハビリは平常に戻りましたが、介護の方で混乱がありました。2人いる夏介護のうちの一人が、突然辞めてしまったのです。辞める直前の様子から鬱の可能性が高いのでどうにもなりません。4月に私の介護(スポーツでない人)から夏介護として紹介して貰った時に、線の細さを気にしたものの、紹介ではあるし、始めのうちは本人もやりたがっていたし、何よりも景気の回復に伴って介護関係は市も民間も深刻な人手不足に陥っていたので、介護をお願いしたらこういう事になりました。
 キルナでは移民を除くと実質失業率がゼロなので、直ぐに代わりが見つかる筈も無く、結局、いろいろな人に少しずつ担当して貰う綱渡りになりました。綱渡りは8月末まで続きます。ちなみに9月からの介護はまだ決まっていませんが(夏介護のもう一人は軍隊訓練に行く)、スポーツ系にこだわらなければどうにかなるので楽観しています。
 なお、この今回の混乱で、リトアニア人とブルガリア人が介護に来ました。これで介護経験は出張を含めると16カ国になります(他はスウェーデン、ノルウェー、フィンランド、ポーランド、ルーマニア、ロシア、レバノン、タイ、フィリピン、日本、ソマリア、フランス、オーストリア、ケニア)。この中で一番大変なのが英語の喋れない難民系移民で、というのも結婚移民以外の移民は家族でくる事が多いので、なかなかスウェーデン語が上達しないのです。こうなると私にもお手上げですが、この夏だけはそんな事を言ってられないので、下手なスウェーデン語(私のスウェーデン語も酷いですが)でコミュニケートしています。

 最後に例によって無駄話です。
 成層圏雲が出やすいキルナは、当然ながら成層圏と対流圏の境目の層雲も良く出ます。日本で言う高層雲と違って、レンズ雲のように局所的な雲で、そのレンズ効果のせいか、虹色になる事が良くあります。もっとも、1月に出る 真珠雲 とは太陽光からの角度や雲の感じが全然違っているので、俗に言う彩雲の仲間と言った方が良いかもしれません。でも、日本の彩雲とは違って、明らかに大規模なレンズ雲ですから、形成メカニズムは真珠雲に近いと云うべきでしょう。そういう、色付き層雲が対流圏と成層圏の境界付近に沢山見えるのがキルナです。
 さて、この種の雲は真珠雲と違って年中出て、夏でも結構見えます。にも関わらず、一般人はおろか、雲科学者も殆ど指摘しません。私がここに来た20年前からずっとそうです。その最大の理由は単に彼らに虹色が見えないからです。私が見ると、太陽の近くの雲の多くが奇麗な虹色で、それがレンズ雲になると一層鮮やかで広範囲になるのですが、その同じ雲を介護や他の研究者に言っても全然分かってくれません。相手はサングラスをしているにも関わらずです。理由は単に眩しいから。南国育ちだと、明るい対象をきちんと見るように目の受光メカニズムが調整されているけど、スウェーデン人は暗い方に目が調整されているから、そこに違いが出て来ているのでしょう。いずれにせよ、あの美しい色付き雲の数々を楽しめないとは勿体ないというのが正直な感想で、北の方を旅行される方がいたら是非とも色付き雲を楽しんで下さい。

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