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リハビリ記録その71
2008-10-5
山内正敏
初積雪で道路も屋根も今朝から真っ白になっています。但し、キルナにしては例年より2〜3週間遅く、お陰で長距離訓練が存分に出来た秋でした。夏が上順だった分を取り返した形です。
その長距離歩行ですが、9月は研究所から自宅までの8キロを3度歩き、いずれも1時間41〜43分で歩いていて、登りと平地だけなら平均時速5キロを安定して出しています。また、体操療養師とのトラック競争(彼が5周で私が2周)では、体操療養師が昨年より15秒速く走ったにもかかわらず、私はそれを更に5秒速く歩いて、念願の時速6キロ(分速100m)の壁を越えると共に水泳800mの男子日本記録並みになりました。昨年、膝バンドを付けてすら出せなかったタイムなので、私は非常に喜んでいますが、同時に体操療養師の方は自己ベストにもかかわらず負けたので非常に悔しがっています。これで昨年来の対戦成績が2勝2敗となりました。第5戦は来年の6月にハンディーを変えて行われます。ちなみにこのレースは体操療養師の時間外に行われていて、あくまでも仕事ではなく趣味の競争ですが、それでもリハビリ部門では非常に有吊になっていて、会う人ごとに結果を訊かれました。
正規の体操療養師の時間(月2回で担当は競争相手と違う)では、膝バンド無しで松葉杖を使う訓練を始めています。但し、常に3点確保する歩き方で、これが可能だという自信は春からありましたが、実際にそれをやるのは、やはり立派な進展でしょう。今後の課題は、出来るだけスムーズに歩くようになる事で、その為には一瞬でも良いから片杖片足という状態で膝が体重を支えられるようにならなければなりません。その訓練に平行棒を活用しています。具体的には、一旦片足を上げてしまった瞬間に両手を離して、そのまま足を踏み出して足だけでバランスを取る訓練をやっております。今の感触では、来春までには、両手を離したまま、片足を踏み出す訓練も可能になるとは思います。それがスムーズになれば、松葉杖も交互にしか使わない普通の歩き方が出来る筈で、来年の秋を予定しています。ちなみに平行棒は結構時間がかかるトレーニングで、10mにも満たない平行棒を30往復するだけで1時間かかります。
体操療養師の時間には、他に階段の昇降訓練があります。半年前に始めたこの訓練では、膝バンドをつけて、片腕を体操療養師の肩に回し、片手を手すりで支えて階段を昇降します。当初は登りだけ、しかも片足ずつ一段ずつしか登れなかったものでしたが、夏明けに下りが可能となり、先月は登りだけなら片足ごと交互に踏み出して登るところまで進んでいます。次の目標は膝バンド無しで1人補助+手すりでの昇降という事になります。或いは手すりの代わりに松葉杖を使う訓練になるかも知れません。
膝バンド無しの松葉杖訓練を始めたとは云え、松葉杖での訓練のほとんどは膝バンド着用で、それでバランスをとったり(横歩きや8の字歩き)、道路を長い時間歩いたりしています。夏の標準コースは、始めの1キロ半が比較的坂が少なく、そこを1時間程歩いて若干疲れたところで、急坂150m(勾配10%弱)を一気に登って、その後600〜700m歩いて終るもので、全部で1時間30〜40分かかります。この急坂部分はタイムを取っていますが、なかなか速くなりません。トータルタイムの進展も夏の間全体で5%程度で、歩行器に比べると少ないのですが、そもそも松葉杖は膝の筋肉が本格的に回復するまでは速く歩く意味が無いし、確実に進展している訳ですから、あまり気になりません。少なくとも春より秋の方が楽になったのは確かです。
松葉杖では、脚力の他に腰の安定性が進展の鍵を握りますが、腰の方は朝の床運動とプールで集中的に訓練しています。特に床運動では、ベッド横に片膝で立ってバランスを取る訓練を2年以上やっていて、それが1〜2ヶ月前から急に安定性が増して、手を離して5秒以上静止する事が出来るようになりました。2年近く進展が非常に遅かったメニューなので、つい最近の急な変化には嬉しいとともに首を傾げざるを得ません。おそらく、どこか決定的に足りなかった筋肉が、安定に必要な値に達したのではないかと思います。
プールの方は2ヶ月の夏休み(長過ぎる!)ですっかり出来なくなったメニューがいくつかありましたが、1ヶ月以上を経て、概ね夏前の状態に戻り、中には大きく進展したものもあります。とくに体を左右に捻るバランスや、しゃがんだ状態から立ち上がる訓練(手放しも両腕を使っても)では夏前よりも水深の浅いところで出来るようになっています。立ち上がる訓練がかなり順調になっている現在の重点項目は、クラウチングスタートの「位置について《の状態から「ヨーイ《の状態に腰を上げる訓練(これを出来るだけ浅い段でする事)と、膝を曲げた状態で静止する事(これも出来るだけ浅い段でする事)で、将来的にはこれらを水の外でする事が目標です。前者は「立ち上がり《の訓練に上可欠で後者は「トイレでのズボンの上げ下ろし《の訓練に上可欠な要素です。これらが出来るようになるのにはまだ時間がかかりますが、少なくとも、そういう具体目標が組み立てられるようになったのは大きい事で、訓練の励みになります。
プール前後のシャワーでも進展があります。シャワー用の寝台に足を伸ばして座った状態で体を洗っているのですが、手の届く範囲(正確にはタオルで擦れるぐらいに力の入る範囲)が徐々に拡大し、春に脇の下が可能になったら、最近では肩の後ろも可能になって、届かないのは背中の真ん中だけ(普通の成人男性並みまであと僅か)になっています。7年目にして更に肩が柔らかくなってきたと云う事は、今まで、充分には柔らかく無かった事を意味している訳で、即ち「概ね回復《が「完全回復《でない事を意味しています。ポジティブに言えば、いくら回復しても、まだまだ良くなる可能性が残っている事を意味し、要するにリハビリ訓練はどういう意味においても無駄ではないという訳です。こういう回復曲線に対して、昨年あたりから、回復は皆が漠然と信じているような指数関数(減衰関数)でなく、寧ろ対数関数(log)的に永遠に続くものではないかと感じています。そうであれば、医学誌に出すだけの価値のある情報ですが、いかんせん、回復をどうやって数量化すれば良いのか分からず、このアイデアは今の所塩漬けになっています。
最後に例によって無駄話。最近の話題の証券の話(スウェーデンの国立銀行はいち早く大銀行の救済を語っている)とも思ったのですが、それでは芸が無いので(オーロラ季節到来の話も芸が無いし)、ここは料理の話でも。
キルナには日本人が数人済んでいて、北極圏最大の日本人数を誇っており、その一方で日本の食品が余り無いところから、誕生会などの口実で日本的な料理やお菓子を作ったりします。参加者にスウェーデン人を含むのが普通であることから、こちらの人間の口にも合うもので且つ大量に作れるものという事でメニューが選択されて、巻寿司は当然ながら、豚まん(イーストを使って皮から作る)、お好み焼き(トナカイ)、餃子(皮が難しい)、ラーメン(麺から作る)など無難なものが続いていましたが、昨日は豚まんならぬトナカイ饅頭に挑戦してみました。トナカイのような鹿肉は、日本人は生姜味みたいなものを好みますが、こちらの人はトナカイのバラ肉を野苺ジャム(勿論甘い)で食べます。そんなわけで両方作った所、案の定、こちらの人にはトナカイ+ジャムの組み合わせの饅頭が好まれました。ちなみに北スウェーデンではハンバーグもジャム+ソースで食べます。なお、饅頭自体は、今回は皮(私が担当)に問題があったので、近い将来、トナカイ饅頭を再挑戦する事になると思います。
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