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リハビリ記録その51

2007-2-4 立春
山内正敏

 新しい尿管(膀胱ロウ)を入れる手術から1ヶ月を大過なく過ごし、戻って来た太陽と共に順調にリハビリを再開しております。2月1日にはストックホリムの日帰り出張(飛行機が6時発、23時10分着)もなんとかこなして、一応正常に戻った感じですが、トイレの我慢は3〜4時間が限界なので、日本行きがいつになるかは分かりません。

 今回のストックホルム出張では男性の現地介護を頼んだのですが、介護経験が全くない人ではないかと思われるぐらいの初心者で、さらに悪い事に出張先の大学のトイレの位置が全然不便で、同じ出張をもう一度と言われたら二の足を踏んでしまうようなものでした。とにかく、ノーベル賞物理学者まで出したほどの有名な学科でありながら、コの字の4階建て建物(会議室はコの上辺の3階)で車椅子が入るトイレが2個しか無く、その2個とも会議室と反対側(コの字の下辺)にあって、そこに行くまでにコの字の縦棒の部分を通過しなければならないのですが、そこがどの階であれ独立した講座であるために鍵付きのドアが2ヶ所あって(どの講座も、その両端が鍵付きドアになっている)、その講座が今回の会合の主催者と違う事から誰も鍵を持っておらず、結局、トイレに行くのに、一旦荷物用エレベーターで4階にあがり、ドアがロックされているセクションを通過して、再びエレベーターで降りなければならないという大変なものです(開閉すべきドアはトイレを除いて片道だけで廊下が4個、エレベーターは4度)。しかも2個のトイレのうちの1個(3階、エレベータの正面)は電動式車椅子用の、便器も手すりも高いもので、私には使用できず、唯一使えるトイレは、エレベーターから更に離れたコのじの隅っこの2階で、片道だけで5分かかるという異常な仕組みです。
 なぜこんな事になるかというと、古い建物の多いスウェーデン(特にストックホルム地域)では、身障者用の施設は職員なり学生なり、それが必要な人間がレギュラーに利用する事が決まってから、その身障者に合うように工事を始めるからで、要するに必要最低限の施設しかないからです。無駄が無いと言えば無いですが、その分。身障者が普段行かない所に行く場合には、前もって気をつける必要があります。有名な講座での会議だからと楽観していたので、行ってみてびっくりしました。まあ、でも、ともかく、酷い建物の、未熟な介護で、ハードな出張(丸一日20時間、腰を伸ばす事が全くできなかった)を、大過なく済ませたのだから、それはそれで満足しています。

 出張以外では、松葉杖とプールに進展がありました。先月末に両杖を持ち上げたまま(ふらふらながらも)初めて歩く事が出来たと書きましたが、手術を挟んだにも関わらず1ヶ月後には1キロ以上歩く事が出来て、私自身驚いております。左右にふらふらと、それこそヤジロベーのように(松葉杖がヤジロベーの腕の代わりをしている)バランスを取る事が可能になったからで、実際、頑張って真っすぐ歩こうとすると2歩が限界ですが、どういう歩き方にせよ、発病5年を過ぎてから急に歩行バランスが良くなったという事実には変わりなく、神経系統の病気の回復事例としては珍しいのではないかと喜んでおります。
 プールのほうは11月中旬から丸2ヶ月殆ど練習出来なかったので、ある種のバランスなどでは10月当たりの状態にまで戻っていますが、それでも新しく、階段4段目(水深 50cm)で半屈伸(手すりは使う)や、階段3段目(水深 65cm)で水中に座った状態から手を膝について立ち上がる訓練(しかし成功しない)を始めた他、手放しバランスの高さを一段高くして階段6段目(水深 20cm)で行っています。それから階段での水中四つん這い訓練では、階段4段目で四つん這いのまま、片足を3段目に下ろして再び4段目に持ち上げる訓練も始めています。
 あと歩行器ですが、昨春以来時折歩いている6キロコースを1時間37分で歩き、雪上ながらも、アスファルトでのベスト(10月)の9割の速さで歩き切ったので満足しています。ただ、これだけ歩くようになると歩行器の高さが問題になり、底の分厚い冬靴だと歩行器が相対的に低くなりすぎて、それが右腰の激しい痛みの原因になっているようです。わずか5センチでも腰への負担は全然違いますから、どうにかしなければならないのですが、どういう訳か、この歩行器はこれ以上高くする事が出来ず、現在、最善策を捜している所です。
 その腰ですが、10日前に隣町エリバレにある県病院整形外科に行って来ました。キルナの医者が「正常」と判断した同じレントゲンを一目見るなり「骨盤と大腿骨との繋ぎの間接の軟骨が摩滅している」という(老人に多い)問題点に気付いてくれまして(こっちは腰痛の段階で気付いていた)、10月頭に医師に始めて会って以来、4ヶ月ぶりに正しい認識にたどり着きました。慢性病の場合は、これが最速の診断です。で、唯一の治療法は手術だそうですが、それは最後の手段であって今考えるべきでなく(というも自力である程度治り得るから)、今は、筋力トレーニングをして腰の関節を筋肉で守るしかないとの事です。そもそも筋肉が回復しないから腰に負担が来たのであって、何のアドバイスにもなっていないのですが、まあ、ギランバレーの後遺症の詳しい所まで整形外科の先生が知っている筈も無く、仕方がありません。ちなみに、これが日本だったら、即座にコルセットをしろと言われるのでしょうが、そう言う事は一言も言われず、そのあとに立ち寄った整形外科補助用具技師も、コルセットは無いとか言っております。こういう反応を見ると、一体(日本で流行っている)腰痛防止コルセットというのは本当に役立つのか疑問になりますが、ともかく試してみる機会が無いので(試してはみたい)、こればっかりは分かりません。

 最後に、軽いというか実は軽くない話。今回は 作者の死後の著作権 問題です。
 アインシュタインの相対論の成果を使った製品(GPSとか)に関して、アインシュタインの孫がその「使用料」を貰うというような馬鹿げた話は科学にはありませんで、特許ですらアイデアの登録から15年しか保護されませんが、文芸音楽では「作者の死後の著作権」が認められていて(それ自体は良い事でしょう)、それが昔25年(まあ妥当)だったのが今は50年もありますが(長過ぎる)、これを更に「孫まで金銭的恩恵を受けるべき」、「知的財産の保護」との名目の元に、70年に引き上げられようとしています。理由はいつもの「アメリカからの外圧」という奴で、これをやって儲かるのは確かにアメリカですが、それでも日本政府は「今年中に延長問題を解決する」とアメリカに約束しています。解決とは延長に他ならず、70年になると、例えば「タイムマシン」「透明人間」「宇宙戦争」を書いたSFの父ウェルズ(1946年没)も著作権の対象になりますから、おちおちSFすら書けない、という由々しき事態だし、それ以前に、絶版になった本(死後50年後に市場で手に入るような本なんて極めて限られている)が青空文庫ですら見られなくなるという事で、古典愛好者としては非常に困っております。
 この問題に関して、青空文庫では延長反対の署名(2月末締め切り)をしていますので、関心のある方は 趣意書のサイト をどうぞ。
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