いうまでもなく、Kirunaは北極圏である。はっきりいって北極圏でのオーロラ撮像はおもしろい。科学的興味をおいといたとしてもおもしろい。
最近はinternetが発達したとはいえ、リアルタイムでのオーロラ画像の配信というのはなかった。それは、単純に予算の問題かもしれないし、研究者間の政治的問題なのかもしれない。しかし、それは技術的問題ではないことは、明らかである。
実際KirunaのIRFでは、昨年より、リアルタイムオーロラ配信というサービスを行なっている。とはいえ、この表現は正確ではない。主体となったやっているのは、「和歌山県立みさと天文台」。IRF-Kirunaはその補助という立場だ。
このインターネット配信、なかなか素晴しい。実際に
http://misato.irf.se/sky_kiruna/index_j_js.html
を見ていただければいいのだが、現在のキルナの空が一目瞭然である。このページ、みにくいという話はあるが、それはユーザー側、ソフト側の問題であり、技術的に、実際配信できるということを証明している。昼間は雲のモニタ、夜はオーロラの実況中継である。
現在、われわれはソフト面での充実も目指している!!
フタアナはこの帰国中、同じ関西ということもあり、この「みさと天文台」を訪問した。急を迫られる用件は特にはなかったのだが、顔合せというかなんというか、やはり実際に会って話すというのは、ただ単にメールだけでやりとりするのとは何か違うという気がしたからだ。
同じ関西とはいえ、和歌山県は遠い。ホソカワ氏の結婚式の時に大阪のミサキ(和歌山一歩手前)まで行ったが、やはり遠い。このときは車だったからよかったが今回は電車。新快速で大阪まで行き、天王寺で乗り換え、和歌山駅を超え海南というところまで行く行程である。京都駅で海南まで自販機で買おうと思ったら、範囲外であるというぐらい遠いのである。
海南に到着してからがまた遠い。バスに乗り換え、美里温泉で降りて歩いて30分ということだ。しかも、そのバスというものが一日2本ということで、ほんとうのイナカである。もちろん天文台であるから暗いところ、即ちイナカがいいのは言うまでもないが。
しかし海南駅で予想だにしていなかったクリティカルな問題が生じていた。天文台のホームページに載っていた時刻表が古かったのだ。一日2本のバスの時刻が間違っているとは。しかも次のは3時間以上待ちだということだ。止むを得ないので行けるとこまで行って、携帯で天文台に連絡、担当の豊増氏に迎えに来てもらうことになった。
天文台に到着すると、NHKの取材陣が来ていた。前日に話題になっていた中国の有人人工衛星「神舟5号」の撮影に成功したというニュースの取材だった。豊増氏が対応していたのだが、
「撮影に成功したときどのような気分でしたか?」
という質問はどうかな、と思った次第である。人工衛星は普段から普通に見えるし、素人でも撮影しようと思えば簡単にできる。軌道要素さえわかっていればそんなに難しくないのだから。
それにしても中国の宇宙政策はすごい。日本はあっという間に抜かれてしまったし、抜き返すのは困難だろう。残念なことである。
Kirunaでの観測の話を煮詰め、研究室で晩御飯を御馳走になり、そうこうしているうちに観望会の時間になった。みさと天文台では毎晩3回、ばかでかい望遠鏡で星空を見せる観望会を行なっていた。ちょうど豊増氏が解説するということなので、参加した。参加者はフタアナを除いて6人、20代のカップル3組のようだった。
こういった業界にいると情報の一人歩きに辟易させられることもある。最近のニュースでは「観測史上最大級の磁気嵐」は事実である。日本でもかなりの場所でオーロラが観測されたようであり、実家の方の新聞ではトップ記事(県内初の観測)だったが、本当に実際に裸眼で見えたかどうかは別である。また、「火星6万年来の大接近」とかは事実である。が、他の年の接近に比べ、一般の人が想像するよりもその差は小さい。「火星探査機、火星衝突」はもはやコメントする気にもなれない。確率的にないとは言いきれなかったのは事実ではあるが、あの記事を読んだ限りではほぼ確実にぶつかるという印象を受けてしまうのは非常に問題だ。
火星大接近の時には渋滞が発生したという話の観望会、この日は何の天体イベントもない平凡な日だったのだが、6人という人の入りは結構多いと思う。周りに本当に何もないところなので、この観望会だけを目的に来る人たちなのである。理科離れと言われて久しいが、まだまだ捨てたもんじゃないと思いつつ、和歌山在住のヨシヒロ邸に向かうのであった。