8月5-8日にかけて東北大からユキヒロ氏はじめ3人がキルナ近郊の エスレンジ(Esrange)というところで観測を行なうという連絡があった。 フタアナは地球物理学を専攻としているのだが、実は「観測」をしたことがない。 京大の地球物理では、3回生の時には幅広い分野をということで、 演習科目を用意しているのだが、 「なんやら実習」とか「ほにゃほにゃ演習」で 阿蘇とか別府とかに行く講義には抽選で外れたし、唯一、観測に近いのは 「左京区内の水準測量」と「京大の地下での精密重力測定」だけだ。 ということで、折角のチャンスなので、お願いして5,6,7の三日間、 エスレンジでの観測に同行させてもらった。
エスレンジは、キルナから40-50キロ程度だろうか、車で30分強の所である。 ここは、観測気球の打ち上げや回収用の観測ロケットの打ち上げをやったり、 人工衛星からのデータなどをでっかいパラボラを使って受けたりするような、 一般的に「宇宙物理の研究してるんだ」といって想像されるようなところである。
ちなみに最近はどうなっているのか知らないが、 エスレンジでは「あけぼの」という人工衛星のデータ受信を行なっていた。 日本ではこの作業を衛星の運用と呼び、宇宙研の人工衛星は、 科学者が毎日二人程度、週交代でこの作業を行なう。 フタアナは大昔、エスレンジ(地名)とエスバンド (電波の波長帯のことで、携帯電話とかで使われている) を混同していて、何の話をしているのかまったくわからかったことがある。
待望の5日。東北大からのゲストがやってきた。ユキヒロ氏の他には、 南極越冬の経験者であるミツテルさん(ノブと南極で半年かぶっているはず)と M1のオオクボ君だ。 東北大は観測とはいえ、修士から積極的に海外経験を積ませてくれる。 このシステムはかなりいいことだと思う。
さて今回観測するのは、雷に伴なうELF波動やVLF波動である。 ELFは3Hzから3kHzの電波で、 「やまと」とか「たつなみ」との通信にもつかわれているようである。 一方、VLF波動はもうちょっと高周波で、3kHzから30kHzの電波だ。 作業内容を簡単に言うと、ミツテルさんのELFのセンサーを地下に埋め、 オオクボ君のVLFのアンテナを近くの木にくくり、 それぞれ観測小屋まで電線を引っぱる。ただそれだけのことである。
5日午後。到着した彼らとともにエスレンジに出発する。 途中、トナカイに遭遇するも、こちらはもう慣れたもの。 とはいえ、また写真を撮ってしまったのだが。
エスレンジ到着後、受付で宿泊やら入構やらの手続きを行なう。 何のサービスかわからないが、受付のお姉さんが 一人ずつポラロイドで写真をとってくれた。 これは受付横の掲示板にはりだされる。 帰りにいただけるものかとも思ったが最終的にはもらえなかった。
続いて観測サイトへ行く。宿泊するのは受付のそばであるが、観測サイトまでは さらに3キロ程度登ったところにある。観測サイトは小高い丘のうえで、 電話ボックスよりちょっと大きいぐらいの5-6個の小屋がならぶ。 これらのうちの一つが東北大が貸りているものらしい。 この中には、雷やオーロラを撮影するためのカメラや通信、制御用のコンピュータなどが 格納されていた。 途中、鍵がかかったフェンスがあるのだが、これはトナカイが入らないために あるという話だ。ホントかどうかは知らない。
ELFのセンサーを埋める場所や、VLFのアンテナ(金属棒2本)を付ける位置を検討したり、 部品の動作確認をしたりなど、 2-3時間の作業の後、御飯を食べにキルナに戻る。 「南京飯店」で食事し、スーパーで買い物。 ところで、ここまでの2-3時間の野外作業、最もくるしかったのはモスキーツ、蚊である。 薮の中での作業のため、大量の蚊、蚊、蚊。 作業を取りあえず切り上げたのも、蚊のせいとも言える。 ということで、ここで「虫除け」を購入。 ところがこの虫除け、なかなかアヤシイ商品である。 まず色、黄色3:7茶色の混合。つぎに匂い、山椒。そして広告写真。全裸のおっさんが 河辺でバイオリンを弾いているのである。 店員に確認したところ、間違いなく虫除けということでそれを購入。 しかし問題は誰が先に塗るかである。
「うわーすげーニオイ」
「これ塗ったら、かぶれんるんじゃないか」
「蚊にさされた方がいいんじゃない」
と言う感じ。一種の罰ゲーム。
しかし、最終日には
「意外と効いてる」
「たっぷり塗るのがいい」
「こまめに塗らんといかん」
などなど。やはりいかに見た目がやばそうでも、広告がアヤしくても、
商品は信頼性が一番だということだ。
ということでエスレンジに戻り、再度夜のお仕事。 ところがここでハプニング発生。オオクボ君のVLF波動観測用の装置が破損。 ICが一個逝ってしまわれたのだ。
ということで翌日6日の午前中はIC探し。 配線し直しということなので、フタアナはユキヒロ氏と街への買い出しに出る。 食事にキルナまででてくると2時間以上かかってしまうので、 食材を書い出してエスレンジのホテルで自炊をすることにしたのだ。
と、スーパーで「すごいもの」を発見。これ、実はスウェーデン名物(?)であるが 食べたことはない。早速購入決定。しかし買ったはいいが、食べ方がわからない。 ということで、エスレンジの受付のお姉さんに聞く。 が、わからないとの返答。スウェーデン名物ではないのか? それでも食堂のコックさんに聞いてくれて、「調理済」で販売されていたことが判明した。
「すごいもの」は晩御飯においといて、昼飯(カップラーメン)を食べてから作業再開。 フタアナは特別何をしたわけでもない。 ケーブルをひっぱったり、オシロのぞきこんでたりしただけ。 作業をしたのはミツテルさん&オオクボ君である。
しかしそこがフィールドワーク。特別何をするわけでもなくても時間の経つのは早い。 そして、疲れが出るのも早い。いつの間にやらすぐに晩飯だ。 ついに「すごいもの」が皿に出される。それは、、、、、「ざりがに」。 ざりがにを食べることになるとは誰が予想していただろうか。
調理済とはいえ、匂いが残っている。こ、これは、、、水槽の匂いだ。 一気に食欲減衰。ゲテモノは結構食べられる方だと思うがこれはちょっときつい。 形状は「えびたすかにわるに」である。ちょっと固いが無理ではない。 味もそれほど別段悪くない。 しかし、匂いがきつい。 コックさんによると、頭をチュウチュウ吸う(エビと一緒だ)と言うが、 さすがに無理。 あ〜手にも匂いが付いている。オレンジ果汁で手を洗い、何とかごまかす。
ゲテモノにも二種類あると思いません? 一つは、「形状(原材料含む)」がきついもの。蜂の子とか、イモムシとか、カエルとか。フタアナはこっちは比較的イケる。 もう一つは、「匂い、味」などがきついもの。今回は明らかに後者でした。
カニやエビ、生魚を食べられない人の気持を4人で噛みしめ、作業に戻る。
ミツテルさんのELFセンサーの埋没位置も決まり、穴掘りの作業。 センサーを埋めるため、幅50cm、長さ2m、深さ50cm程度の穴を掘る。 結構石がちな地面のため、4人交代でかなり時間がかかった。 意外と木や草の根っこも多い。 道具もいまいちのものしかなかったことも敗因の一つかもしれない。
さて一方、オオクボ君の方はケーブルも張り終え、オシロスコープにつなぐ。 かなりきれいなデータが取れている。やはりこの辺の電磁環境は良いらしい。 連日の夜中までの作業になってしまったので、翌日のため、ちょっと早め(といっても23時)に切り上げる。
さて7日、フタアナの滞在最終日。 これまでのトラブルがなければ、この日の午前中が 目標だったということだが、さすがにちょっと無理。 でもこの日の夕方に山内さんがお宅に御招待していただけるということだったので、 それまでには終わるようにがんばりましょう。
まず、昨日とれてたオオクボ君のデータの再確認。 「ツーーーーーーーーーーーー」 な、何のデータも来ていない、、、、、 「なぜだ、なぜなんだ?」
アンテナを触っても信号なし。おかしい。ケーブルを辿ると 途中に何かに噛まれたあと。断線である。 うさぎかねずみか知らないが、こんなもの食いやがって。 くそぉ〜。
昔、ノブが峰山での「イノシシ事件」(イノシシにケーブルをくいちぎられた)を 京大のセミナーで発表していたのを思いだした。 たしかにこんな事件が起こるとセミナーででもしゃべらずにはいられないことを 初めて実感。多いに共感するに至る。
このかまれた部分は半田で何とか復旧したが、昨日の今日だから何らかの 対策を取らないといけない。 ということでケーブルを30センチぐらい高架することに決定。 ユキヒロ氏&オオクボ君が高架のための材料を購入に行っている間、 フタアナはミツテルさんのセンサー埋めを手伝う。 精確な東西南北の測定、水平の測定、そして、埋没。 たったそれだけのことだが、実際の作業は3時間以上。 やはりフィールドワークは時間がかかるんだね。 この日は途中から、IRFの風間さんも登場し撮影班(1人)として合流作業を見守る。
今回わかったこと。撮影班は絶対に必要である。 後々の発表資料のためやホームページに載せるなどの目的だけでなく、 トラブルがおこった際の原因究明のためや、拡張の際にも必要なのだ。 が、意外と軽く見られてしまうし、作業していると撮影することを忘れてしまう。 なかなかむずかしいものである。
高架の作業は時間がかかると思われた。50本の杭を打ち、そこに電線を張るのだ。 しかし、5人でやると意外と早く終わり、機器の最終チェック。 無事に、ELFもVLFも両方データは取れているようだ。 周辺を片付け、山内邸に向かった頃はいつの間にか夜9時。 まだまだ夜になっても明るい北欧とはいえ、時間の感覚がまったくなくなってしまう三日間だった。 皆一様に疲れており、山内邸に向かう車中を静寂の空気がつついんでいた。