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リハビリ記録その188

2018-7-1
山内正敏

 4月5月と対照的に寒風の吹きすさぶ6月で、とうとう恒例のバーベキューが出来ずに春が終わってしまいましたが、昨日午後から回復し、今日はやっと夏日和となって短パンでの日光浴ができました。といっても日本の小春日和程度ですで、汗は全くかきませんが。

 6月の目玉はルーマニア出張で、ドナウ・デルタに5日間滞在しました。ブカレストから車で6〜7時間かかるような田舎で、ホテルの身障者対応もお粗末でした。ホテル・会議場を通して、歩行器・車椅子が通る幅のある入り口のある個室トイレが皆無で、あちこにち段差があるほか、二階の会議室(螺旋階段を24段昇降する)は2人の肩を借りて昇降せざるをえませんでした(手すりがない)。唯一身障者対応と謳われた寝室すら、トイレに手すりは無く、便器も非常に低くて、実質上、身障者の宿泊は無理でしょう。
 とはいえ、その分自然環境はよく、毎日カッコウが鳴いていたり、ホテル以外からの雑音が皆無だったり、植生が故郷を思わせるもので、花も沢山咲いていたりと、身障者未対応に見合うだけのホテルではありました。散々色々なところを経験したり、低い便器でも、それに合わせて歩行器の手すりの位置を一番低いところに設定出来るだけの脚力がついたのも、このようなホテルでも満足出来た理由に挙げられるでしょう。
 肝心の会議環境も田舎故にあるいみ理想的で、ネットが時々通じないので会議に専念出来るし、ホテルの外で飲み食いできないので全ての食事が会議のメンバーと一緒という、ある意味、色々な相談をするのには理想的な缶詰状態だったといえます。
 ホテルは世界自然遺産のドナウ・デルタの縁なので、エクスカージョンでドナウ・デルタにも行く機会がありました。その内容は実はワイルドツアーで、ボートとトラックでの移動に加えて、途中、一切の建造物に近づくことがないという(つまり、身障者施設はもちろんのこと、普通の旅行者用トイレすらない)、始めから知らされていたら行くのをためらったかも知れない代物です。しかし、考えてみれば、日本行きの飛行機10時間に比べれば全然楽な話で、途中「リハビリの新挑戦」を実践できて、ツアーの内容ともども、多いに満足しています。
 ハイライトは、約50mの木道を、前の人の肩に捕まり同時に後ろから脇下を支えてもらう形で渡りきったことです(往復)。ビデオも撮ってもらったのですが、まだ手に入っていません。とりあえず今までに入手した写真は こちらです。
 金曜午後に会議の終わったあと、土曜の飛行機に乗るのは時間的に無理と判断して、日曜朝の飛行機にした結果、土曜の半日が自由となったので、ブカレストまでの(時間的に)中間に当たるコンスタンチェに金曜夜泊まり、土曜朝に黒海で泳ぎました。水温22度で、指先に神経(+筋肉)の届いていない私には、一回当たり30分程度が限界で、そのたびに砂浜で体を温めるスタイルを3回繰り返しております。海で泳ぐのは約20年ぶりになります。3年前に湖で泳いではいるけど、海は潮の流れがあったり、波があったり足が届かなかったりするので全然違います。また、4年前にギリシャの海につかりましたが、膝立ちできる深さまでしか入っていません。
 このコンスタンチェの海岸は、深くなったあと、再び浅くなるというのを繰り返す遠浅で、要するに足の届く高さの部分と間に足の届かないところがある遠浅になっており、初心者には最適の海岸と言えます。それ故に家族連れが多いそうです。あと、黒海ということで潮の満ち干がほとんどないのも初心者向けと言えるでしょう。なので私の海水浴再開には最適の海岸でした。会議主催者の一押しというのは馬鹿になりません。
 と、良好なルーマニア出張でしたが、スタートは最悪でした。キルナを日曜朝9時に出る飛行機が装置のトラブルでキャンセルになり(機体に入ったのにおろされた)、次の飛行機まで8時間以上待たなければならなかったからです。その間に飛行機がない、というのがキルナなのです。乗客の中には家に一旦家に帰る人もいましたが、私は(今回はキルナの介護を使わずブカレスト合流の予定だったので、突然の半日のために介護を新規にアレンジするのも面倒だった)空港で時間をつぶしました。8時間遅れた結果、ストックホルムからの接続便も夜になり、ブカレスト空港着や午前2時、ホテル入りが午前3時で、にもかかわらず午前8時に専用バスが迎えにくるスケジュールは変わらず、そこから7時間の移動で、さすがに1日目午後(というか夕方)のセッションはくたくたになってしまいました。なので、帰りに余裕を持たせたのは正解だったといえます。
 さて、話は変わり先月書いたバクテリア性の膀胱炎ですが、やはり治っておらず(臭いもおかしい)、新たな薬の投与を始めましたが上手く行くかどうかはわかりません。ちなみに臭いの方は新しい尿袋が悪いのではないかと疑っています。直ぐにどうこうする問題ではないので、時間をかけて治す予定です。

 例によっての無駄話は、ドナウ・デルタの感想です。
 一番の印象は、世界自然・生態系遺産に「初期に選ばれただけのことはある」というものです。近年の世界遺産申請騒動を聞くと世界遺産というものが商業主義の延長のような気がしてしまうのですが、ドナウ・デルタをみて、実はそれが本来の目的から大きく逸脱していることをようやく理解しました。というのも、遺産に登録されていなかったらドナウ・デルタは観光開発で今頃はメチャメチャになってだろうと想像出来るからです。それほどに素晴らしい原生態系と自然地理(デルタの形成過程を実感出来る)でした。
 興味を引いたのは、盛り上がった土地で森林と草原の境界がはっきりしていることで、そうして森林と草原が細長い縞模様を形成していることです。質問してもマトモな答えはなく、ウィキペディアにも載っておらず、未だに答えは分かりませんが、参加者と相談した結果、海が引いたあとに残った土は塩分を含む故に木が育たず(場合によっては砂丘のまま)、そのあとの細分化した支流沿いに上流の土が運ばれて、そこに森林が出来たのではないかというもので、その縞模様が未だに残っているのは、陸地化のあとの牛や羊の放牧で全ての苗が食われてしまったんのではないか、と想像しています。実際、草原や砂漠の方が、森林より1-3m高くなっています。となると、世界の砂漠化の原因の一つに牧畜業(放牧)があるということになりますが、これは別の話でしょう。
 で、そうやって砂漠化とか陸地の隆起とか黒海とか考えているうちに、黒海とカスピ海を標高ゼロでつないだで、カスピ海を外海につないだらどうなるのだろうかと考えてしまいました。恐らくカスピ海内外の降水量は増え、結果的にアラル海を救い、ついでに地球温暖化による海水面上昇を緩和しそうな気がします。まあ、そんなことをしたら、大きな環境変化をきたしそうですが、SFとかシミュレーション実験としては面白そうです。

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