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リハビリ記録その183

2018-2-4
山内正敏

 日本と同じくキルナも例年より寒く、外での歩行訓練には向かない日々となっています。

 1月は日本に一週間滞在し、16年半ぶりに宇宙研に行ってきました。病気になって以来、秋か春の気候の良い時しか日本に行っていなかったので、道路の凍結とか心配しましたが、好天には恵まれました(というか結果的に見事に雪を避けた行程になった)。とはいえ、キルナに戻る前日に介護ともどもインフルエンザにかかって熱を出し、やっとのことでキルナに戻り、その後も数日寝込んでしまいました。元々休暇を数日余分にとっていたこともなり、ゆっくり休めたのが功を奏して、翌週には回復したものの、松葉杖などの訓練は未だに不調で、日本行き直前の好調(病院の廊下往復170mを34往復=5.8km=1時間45分の記録更新)は見るべくもなく、プールでは12月より軽めの訓練にもかかわらず、翌3日間、背中の筋肉痛に悩まされたりしていました。それでも負荷を落として室内用自転車を1時間こぐとかしているので、全く駄目な訳ではありませんが。
 今回の日本行きでは、宿を2泊+2泊+2泊+1泊という転々とする日程を組んだのと(それがインフルの原因かも知れないけど)、行きの飛行機で機内のトイレを使用したのと、国内線で格安会社を試したが大きな挑戦で、最近の大型機のトイレには手すりがあるお陰で、スムーズ(移動には介護の手助けが必要だったけど)に出来て、今後の長距離旅行が計画を組み易くなっています。もっとも帰りはインフルにかかっていた上に乗り継ぎの空港で歩行器を使えず(日本のチェックイン窓口はそういうアレンジ能力がない)に20時間以上座らされたため、腰痛が非常に悪くなって、1週間ほど、その理由だけで夜がほとんど眠れないという困難もありました。どうも、今後はトイレより腰痛(座り続けることを強要される)問題のほうが重要になりそうです。
 東京ではJR、地下鉄、私鉄(全部ラッシュ時間を避けた)と全てに乗りましたが、私鉄以外は問題だらけでした。まず東京のJRはどの電車も誰も席を譲りません(地下鉄と私鉄の利用者は席を譲る傾向にある)。たとい立っている人が少なくてかつ次の駅で降りる場合ですら譲らないので、声をかけて譲ってもらうしかありません。こんなのでパラリンピックを迎えられるとは思えず、訪問者への手引きに「身障者や具合の悪い人は、座っている人に声をかけて下さい」と書く必要があるように思えます。あるいは手すりのある座席を一つだけ独立させて、両側に手すりをつける(立ち上がる時に手すりが必要だから=これは身障者に限らず老人など、杖を必要とする人全般に良い)ことで、健康な人が座りにくくする物理的対策が必要かも知れません。JRは地下鉄や私鉄に比べて列車とホームの間も広いので、そのあたりの注意書きも必要でしょう。身障者(それに近い人)の全員が駅員に必ず声をかけるとは限らないからです。
 次の問題は東京都営地下鉄で、1月11日に本郷3丁目で降りたところ、ホームにいた駅員に「エレベーターが故障です」と言われて、結局地下5階から階段を(手すり+介護の補助)で登らざるを得ませんでした。聞けば3月まで更新工事で動かないとのこと。私は前もってホームページでバリアフリー情報をチェックしており、そこには「今月は1月17日だけがメンテ」と書いてある(=他の日は使えるという保証をしている)だけで、地下鉄に乗り込んだ蔵前駅にも、車内にも、エレベターが使えなくなっている情報はありません。分かっていたら、同じく区間を走る都バスを使っていたはずです。さらに本郷3丁目の駅員は「エレベーターでどうぞ」と言ってきます。エレベターが身障者(や老人)にとって最も危険(巻き込まれる恐れが極めて高い)な移動手段であることを全く理解していないことが分かります。結局のところ交通局が身障者のことを全然考えていないのでしょう。だから教育も未熟でホームページでの連絡も未熟なのだろうと思います。
 歩道も酷く、淵野辺駅の近くのホテルから宇宙研への移動は、歩道があまりにも危険なので、少し遠回りながら歩道のない路地を歩かざるを得ませんでした。これは上野から春日通を蔵前まで歩いた時も同様です(ただし、蔵前から浅草や、蔵前から銀糸町は歩くのにそこまで困らなかった)。問題は車の出入りのための斜め坂が大量にあるところに、点字ブロックという、足の弱い人間には危険な障害があることで、40年前の「身障者者=目の不自由な人」というパラダイムを未だに引きずって町づくりをしている弊害といえるでしょう。今は色々なタイプの身障者の最大公約数で対策を立てるべき時代なのに、そのあたりが完全に時代遅れになっています
 この他にも日本の「身障者対策」が間違いだらけなのが目につきましたが(パラリンピックが近いので、そういう目で見てしまう)、これは近いうちにまとめて朝日デジタルに書きます( 交通機関ならびに 歩道)。

 さて、最近の大きなイベントはもう一つありました。木曜に行なった膀胱結石除去のための膀胱鏡手術です。2cm以上の結石が5個。年輪のようになった色パターンから10年以上かけて少しづつ大きくなった結石で、結果的に休憩なしで2時間(見通しでは1時間だった)の大手術となりました。ただ、手術の間に感じた痛みは、腰(骨盤と大腿骨の付け根)と背中(この日の朝に限って酷い筋肉痛で原因は不明)ばかりで、お陰で尿道・膀胱は、痛みをあまり感じず、意外と楽な手術だったというべきか、それほどまでに腰痛が悪化していることを憂うべきと言うべきか判断に迷うところです。あと、結石を削り取って行く様子をモニターで見ることが出来たので、それが面白くて気がまぎれたというのあるでしょう。そういうわけで手術自体は上手くいっております。
 なんでも膀胱ロウ(膀胱に直接穴をあけて尿道を確保するやりかた)だと膀胱内に細菌が溜まり易く、それによって結石も出来易いそうで、まだ数年のうちには同様の手術が必要だとは思います。それがちょっとうんざりです(特に年をとってからだと辛そう)。

 最後に無駄話です。
 キルナーナルビク間の鉄道は、実は世界で一番「一日当たりの通過重量の総量」の多い、極めて過密な路線で、同時に、「いちどきに車輪を通してかかる加重」も世界一の、すなわちレールがもっとも頑丈な路線なのですが(だからこそ複線化の話がずっとくすぶっている)、この加重を更に上げる計画が進んでいます。それは、軸重負荷32.5tonまでレールが支えられるように更に改良する工事で、これにより積み荷(鉄鉱石)を1車両あたり10tonに増やして(比重8近い処理済み鉄鉱石を入れるのでワゴンを丈夫にすべく積み荷の数倍重い)、列車あたり640ton積載可能にするそうです。平行して全ての列車を56両編成から68両編成にすべく、離合所の長さも640mに延長する工事も半分終わっています。新幹線が全長400mしかない(しかも中は人間で車両は軽い)ことを考えると、途方もない長さと重さです。というか、こういった世界一は私も数年前まで知りませんでした。鉱山関係は、まだまだ面白い話が転がっていそうです。

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