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リハビリ記録その82

2009-9-6
山内正敏

 8月19日に初霜を記録したキルナはすっかり黄色い秋景色になっています。本来なら秋とともにオーロラが見え始めるのですが、太陽活動の異常な低さを反映してか、オーロラ活動も極めて弱いままです。

 この夏も例年と同じく長距離の歩行訓練で明け暮れました。パワートレーニングに比べて脚力が有効に付くとは限りませんが、少なくとも筋力のスタミナはついたようです。
 一番長い歩行は17kmで、有名なアイスホテルのある村・ユッカスヤービまでアパートから歩きました。今までで一番長い連続歩行が10km弱だったので、大幅に更新した事になります。この日はユッカスヤービで昔ながらの露天市が立ったのと、たまたま「スポーツ少女」の介護担当だったので、露天市を見るついでにトライしました。緩やかな下りが多いコース(全部で150m以上も下る)だったので、予想タイム3時間半〜4時間で歩き始めましたが、実際に3時間29分で歩いた(ペースが落ちなかった)ので、タイムもさることながらベストの予想通りに歩けた事に大いに満足しています。休憩は11km地点で(丁度2時間地点)で7分とっただけですが、最後までほぼ同じペースを維持する事が出来て、スタミナだけは十分に回復している事が分かります。
 この歩行に気を良くして、彼女の担当が終わる前に(昨年と同じく夏休みだけの臨時介護)、もう一度同様の距離を逆向き(登り)に挑戦しました。スタートはユッカスヤービの少し手前の彼女の家で、距離は1km以上短くなりますが、アスファルトの代わりに砂利道2キロ弱が入るので、坂が登りである事も勘案すると、よりきついコースです。さすがに最後にへばってしまいましたが、とにかくこれも無事に歩き通しています。
 このように距離には強くなりましたが、スピードはと言うと昨年とあまり変わっていません。研究所からアパートまでの8kmを何度か歩いているのですが、去年のベストよりも5分(5%)短縮するのがやっとです。もっとも、8kmを1時間36分というのは十分に速い訳で、これ以上の大幅な更新は難しいでしょう。ちなみに400mトラックをぐるぐる歩くタイムトライアルでは、昨年の5000m(12周半)53分丁度に対し、今年が50分丁度なので、そういう見方でみれば十分な記録更新です。
 2ヶ月前にも書きましたが、速くなったのは主に下りで、それに自信を得て、今年は初めてキルナ市のランニング・ウォーキング大会の6km部門に参加しました。高低差が全部で100m以上もある坂道コースです。初めの2km弱で30m登り、そこから急坂を20m下って、そのあと再び15mゆっくり登った後に急坂を70mも下りって、その後は殆ど登り(一ヶ所10m下りがある)、平坦道は全体の一割程度しかありません。問題は急坂の下りで、それで昨年は参加を見合わせました。実際、それは正解だったみたいで、度重なる急坂は想像以上にきつくて、最悪の想定よりも10分遅く、1時間30分もかかってしまいました。昨年だと完歩すら出来なかったかも知れません。
 大会には乳母車だの犬連れの子供などいましたが、彼らにも一回目の下り坂で置いてきぼりを食って、2度目の坂などは完全に一人(+介護)で歩いておりました。幸い、この下りの途中で10kmコースの人と合流するので、ゴールまでひっきりなしに抜かれて、孤独は感じておりません。逆に言えばこう言うイベントでない限り歩きたくないコースとも言えます。
 歩行訓練は歩行器以外にも膝バンドなしの松葉杖を週に1〜2回のペースでやっていて、こちらは1.7kmの標準コースが大体1時間50分前後で歩いていますが、ようやくコースの殆ど(急坂を除く)を交互杖(3点確保でなく、片方の杖を常に上げた状態で一歩進む)で歩くようになりました。ちなみに2ヶ月前は3点確保で同じスピードでした。確かに歩行の安定感が増したのを実感しており、今夏の目標は十分にクリアーしたと云えるでしょう。
 今夏の目標と云えば、通勤でのバスの多用があります。7月のローフォーテン旅行ですっかり自信がついたので、天候の許す限りバスを使っており、当初の予想よりも遥かにタクシーの頻度が減っています。なので、毎回バス代 20 SEKを払うのが面倒になって、とうとうバスカード(40回分)を買ってしまいました。冬になればさすがにバスと云う訳には行きませんが、既にバスカードを10回以上使っているので、この分だと今年中には無くなってしまうかも知れません。バスの本数が非常に少ない当地では、バスは事実上の通勤バスで、研究所員と余分な雑談を楽しめます。その意味でもバスは結構楽しいものです。
 脚力関係では、地べたに座った状態から歩行器に立ち上がる時に、介護無しで自力で立ち上がる事に成功しました。実はこれは昨夏の目標だったのですが、その時は歩行器を何処かの壁に向けて動かないように固定してやっと出来る(だから普段は介護が代わりに歩行器を固定する)というもので、不完全な達成で終わっていました。今回ので初めての自力となりますが、これもまだ地べたが滑らない(試したのは全天候性トラックで一回だけ)という条件と怪我をしていないという条件(ローフォーテンで転倒した時は怪我の為に介護の補助があっても立ち上がるのが厳しかった)が付いているので、まだ完全ではありません。少なくとも冬に雪の上で同様の歩行器立ち上がりを試す必要はある様です。
 ローフォーテンの時の転倒怪我の原因は、疲れている時にサンダル(足首固定器無し)が凸凹セメントに引っ掛かった為ですが、こう言うのは日の浅いうちに克服しておきたいので、上記のユッカスヤービ17キロの翌日(疲れが残っている時)にアスファルト道で同じ条件(足に何も補助具を付けない状態のサンダル)で再挑戦しました。場所は1時間弱の散歩によく使う比較的平坦な3.5-4kmコース(坂は当然ある)です。倍の時間(1時間53分)がかかったものの、アスファルトでは問題ない事、つまり路面の問題だった事を確認しました。今の所、足に補助具を使わない歩行ではこれが一番長い距離で、その後はこの手の訓練はしていません。8月になるとクノット(knott、英語名 black fly)という吸血虫が急に増えて、とてもゆっくり歩いていられなくなるからです。それで、この手の訓練は当分お預けになります。
 夏の脚力訓練と云えば、歩行以外に3輪自転車がありますが、これはあまりやっていません。というのも、今までの訓練のやり方がちょっと怖くなったからです。
 一昨年の秋、アパートから600mほど離れたところの登り坂に車減速の為のbump=アスファルトの 盛り上り障害写真2) が出来て、歩くのすら不便になりさすがにキルナ市に文句を云って、これが身障者の通行を妨げる(=法律違反)であることを認めさせたほどですが(でも予算不足で別の方式に作り替えるところまで至っていない)、それが坂道にあるので、登り部分は瞬間的に酷い傾斜で、去年はこのbumpを越えて自転車訓練をするのをためらっておりました。だから、これに挑戦するのは今年の自然な目標で、すんなり達成された所までは良かったのですが、その何回目かの練習の時に、下りの際のbump越えで減速が不十分でパンクしてしまって、介護の待っている所(アパート前)に着く前に空気が完全に抜けてしまったのです。空気が少ないと平地でも大変ですから、ましてや上り坂(コースはbumpのあとの一番低い所まで行ったところから逆にアパートまでだらだら登りになっている)ではなおさらで、とうとう漕げなくなって、介護を大声で呼んで、やっと歩行器に移りました。これが一ヶ月前。パンクは直ぐに修理したものの(介護に経験が無かったのでちゃんと教えてやった)、こういう経験をするとパンクが怖くなります。
 今回はたまたま介護の待っているところから僅か50mのところで停止したので、介護が直ぐに来てくれましたが、いつもそうとは限りません。太陽の出る暖かい日でないと、介護は外で待たずに建物の中(コースの見通しが出来ない場所)で待っている事が多いのです。そういう時にパンクをしたら、パンクから10分以上して僕が戻って来ない(今のコースは往復10分かかる)が分かってから、やおら僕を捜しに来る訳で、そのあいだ僕はずっと自転車の上でブレーキを保持しながら待たなければなりません(坂道ばかりだからブレーキをしないと下り始めて簡単に転倒する: リハビリ記録33 参照)。それを考えると往復3分以上かかるコースは躊躇われます。でも3分以下のコースでは外を走る楽しみも坂もあまりありません。そんなわけで、ちょっと今は3輪自転車そのものをためらっている状態です。自転車に何かがあった時に簡単に降りられるように、支え無しで立てるまでは自転車で外を走るのは厳しいかも知れません。

 最後に例によって無駄話です。
 キルナはノルーウェーに近い事からノルーウェー人の訪問も多く、ショッピングセンターの食料品売り上げの何割かにノルウェー人が寄与しているくらいです。当然、ノルウェー人向けの天気予報webでもキルナの予報は見られるし、逆にスウェーデン人向けの天気予報webでナルビクの予報は簡単に見られます。ところが、この両者の予報が全然違う事が往々にしてあります。しかも自国の方が必ずしも正しいと限りません。どちらも政府系の気象庁の予報なので、数値予報のスキームがそれほど違う筈がありません。考えられる違いと云えば観測所の広がりですが、そのデータをやり取りしていないのか(まさかそんな事はないと思う)、あるいは計算方法の違いなのか良く分かりません。いずれにせよ、一番実績のある天気予報シミュレーションでこの有様ですから、「シミュレーション」というものの実体がどれほどあやふやなものかを分かります。
 ちなみに、金融危機のお陰で「経済シミュレーション」なるものが単なる宗教(検証などの裏付けのない仮定を基に予測という名の「予言」をする行為)である事が分かったにもかかわらず、世の中には未だに「科学分野のシミュレーション」を科学そのものと勘違いする嫌いがありますが(科学記事を読むとそういうのが余りに多い)、そういう人はスウェーデンとノルウェーの天気予報の違いをしっかり見て頂きたいものです。
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