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リハビリ記録その75

2009-2-1
山内正敏

 暖冬のキルナですが、そのぬるま湯を吹き飛ばす様な大火事が4日前にあって、火事に一番弱い身としては、少し気に掛かりました。その他は山あり谷ありのいつも通りの日々です。

 1週間前に日帰りでストックホルムに行って来ました。朝7時発の飛行機で行き、夜23時30分着の飛行機で帰って来たので、アパートからだと18時間半も歩行器で外に出ていた事になります。ストックホルム日帰り自体は2年前に車椅子で行っていますが、その時は会議で一つ場所に留まっていたので、トイレや休む場所などの問題がありませんでしたが、今回は大使館と移民局を歩行器で回る日程で、トイレや座る所の確保が必ずしも保証されておらず、質がかなり違います。もちろん、半年前のストックホルム観光(4泊)で或る程度自信はありしたが、時間の長さに加えて、路面や気候も違って、凍結あるいは滑り止めの砂が撒いてある道路という最悪の路面状態(キルナよりはマシかも知れませんが)で、難度は昨夏よりかなり上がっています。
 更に新しい試みとして、ストックホルム空港では誰とも待ち合わせず、そのままタクシーでストックホルムに行き、介護とは大使館で待ち合わせました。アパートを出てから大使館に着くまでの4時間半を単独行動で過ごした事になります。もちろん、これは日帰りという事で預ける荷物が無かったから出来た事ですが、いずれにせよ、将来の日本行きに向けて良い滑り出しです。大使館から夕方までの移動に介護に付き添ってもらい、結局、8時間程一緒にいて貰いましたが、もしも途中でバスや電車の代わりにタクシーを使っていたら、介護を必要とするのは半分以下で済んでいたかも知れません。空港に至っては、トイレと靴ひも以外殆ど介護を必要としない場所のようです。
 一番の心配事であったトイレ(身障者が働いていない大使館には、日本大使館に限らず身障者用のトイレが無いのが普通)は、歩行器がトイレの個室に入らなかったものの、個室に椅子を置き、そこに座って尿袋を空けるという事で、全く問題なく終わりました。移民局は子供(赤ん坊)連れが多いので、ちゃんとした身障者用の(というか赤ん坊の着替えの為の広い)トイレがあり、空港はもとより問題ないので、一日の行程としては観光の時よりは楽だったようです。
 トイレ以外で困った事もあって、それは移民局の入り口です。窓口に行くには階段があり、横に申し訳程度にエレベーターがあるのですが、これを動かすのにはいちいち係員にエレベーターの操作をお願いしなければなりません。その係員は階段の向こう側の隠れた窓口に居り、インターフォンすらなく、要するに介護に係員の所に行って貰わないとエレベーターが動かないという、何とも情けない仕様でした。逆に言えば、ビザを必要とする身で同時に階段の昇降の出来ない身障者の総数が少ない事と、そういう身障者はビザを必要とする身であっても介護が必ず付いている事を意味しています。福祉のソフト面がハード面に比べて非常に進んでいる証しでしょうか。
 今回の現地介護は、昨夏お願いした介護会社に再びお願いした結果、昨夏と同じ人が来ました。介護と云うのは時給が全国でほぼ一律な事から、田舎と都会とで相対的に給料が違う事になり、要するに、ストックホルムの介護のレベルというのはキルナに比べて低くなります。この介護だと、昨夏も今回も30分以上遅刻するし、バスや電車の交通機関について何も知らないという問題があります。でも、私は困らないし、何より、2年前まで頼んでいた介護会社(全国組織)から斡旋させる人よりは遥かにマシな人で、加えて、段差なんかで肩につかまる事が出来るのが有り難く(小柄な人だと頼み難い)、次回の3月も同じ人に頼む事になっています。もっとも、たった1日で、電車に乗り違える事1回、バスに乗り違える事1回で、そして、乗り違えた後の事後処理も悪く、さすがに閉口しました。もちろん、彼女の交通機関音痴を知っていた私が油断したのが悪い訳で、急がば回れで、公共交通機関は使う際は、介護でなく私が完全に確認しければならないものだと再認識しました。ストックホルムに住んでいるからといってバスや電車の路線が分かっていると限らない好例でしょう。ちなみに、彼女も含めて大抵の介護は『任せて』とは言うので、それを鵜呑みにするが危ないという事になります。
 バスは4回利用しましたが、今回は何故が段差のあるバスに当たる事が多く、最大で3段の段差を登ってバスに乗っていました。昨夏と違ってためらい無く上れ、過去半年の階段訓練が多いに役立ったと実感しました。バスと云えば、全てのバスで乳母車を必ず見かけ、乳母車で場所が埋まって私がバスに乗れない事すらありました。こちらの市バスには歩行器と乳母車の共通のスペースが乳母車(歩行器)2台分あるのですが、それでは不十分な感じです。観光地でなく住宅街でバスに乗ったせいかもしれませんが、この分だと将来はもっと乳母車のスパースを取ったバスが開発される気がします。ちなみに歩行器でバスを使っていたのは私ぐらいで、これは冬で寒くて身障者がもっぱらタクシーを使っているせいだと思います。
 何はともあれ、今回のストックホルムでバスに対する閾値がますます下がったので、次の目標はキルナ市の長距離バス(片道1時間以上の距離)に乗る事です。本人の負担は介護の運賃まで含めればタクシーのほうが安い筈ですが、もともと自転車・バス派の私は、バスで行ける所をタクシーで行く事に(時間の制約が無い限り)抵抗があるし、それにリハビリと云う目的ではバスの方が良いので、知り合いが来た時にでも一緒にバスで(少なくとも片道は)出掛けてみたいと考えています。

 最後に火事の話の続き。
 空気が乾燥して木が燃え易い上に、暖房と断熱のある家で無いと生きて行けない北極圏では、火事に対する警戒も高いのですが、そのキルナで、よりによって小中学総合校舎(生徒数255人、教師数22人)が4日前に全焼して大騒ぎになっています。学校は4セクションに分かれていますが、37人の消防士の努力も虚しく、4セクションとも全焼して何も残っていません。もっとも、隣接したアパート群に燃え移らなかっただけでも儲け物で、これが強風の日に起こっていたら大惨事になるところでした。死傷者が無かったのも不幸中の幸いでしょう。
 火元が体育館だった事から、不審火らしいと云う事で、気持の悪い日が3日程続きましたが、今朝のニュースで児童3人による火遊びが原因だったと発表があり、放火魔でなくて胸を撫で下ろしているところです。犯人がいずれも15歳未満なので、警察発表では年齢性別共に伏せられていますが、3人とも女の子という所までは新聞に出ていました。体育館の中で火遊びをしていたのが原因です。
 いったい、子供が馬鹿な事をするのは世の常で、そのリスクに対する対策を考えるのが大人が仕事であり、しかも、ラップランドでは大きなテントの中で焚き火をするのが当たり前なので、室内で火を燃やす事は必ずしも非常識ではありません。ただただ、彼女たちは、体育館の床が燃うる事を知らなかったのでしょう。そう考えると、なぜ、子供が誰もいない体育館に入り込めたかが問題で、同時に、なぜ火災報知器の発動が遅れたかが問題です。消防署の話によると、火災報知器が鳴って直ぐに現場に駆けつけた時には延焼し過ぎて手遅れだったそうで、これは考えてみれば、私のように逃げ遅れる可能性の高い者にとっては恐い話です。今回の事件を機に、報知器の点検や設定とかで見直しがあると思いますが、やはり、何よりも何か起こったら自力で脱出するだけの脚力腕力だけは回復させたいものです。
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