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リハビリ記録その54

2007-5-6
山内正敏

 例年に比べるとやや不順な春ですが、それでも4月14〜15日に一気に雪解けが進んで、ほぼ例年並みの日に夏靴で外出出来るようになり、お陰で気持よく歩いています。

 早速、研究所から自宅までの8キロ弱を2時間弱で歩いた他、昨年以来いつも記録を計っている6キロコースを1時間22分で歩き(昨年のベストを6分も更新)、スピード、スタミナともに問題ない事が確認されています。但し、今夏の目標は、そっちではなく、むしろ膝バンドを使わずに歩く訓練で、こちらの方も本格的に始めました。具体的には、肘歩行器を使って最長7キロ近く(昨年の最長とほぼ同距離)を3時間かけて歩いた他、低い普通の歩行器でも1キロ半程歩いて、一気に昨年の倍の距離になっています。この分だと今夏のうちに普通の歩行器でも5キロぐらい歩けるようになるかも知れません。
 そんな訳で歩行器ばっかりやっていたので、松葉杖の訓練がおろそかになっていますが、それでもバランスは良くなりつつあるようで、特に腰に無理の来ない歩き方が自然に出来るようになったのは大きな進展です。バランスの進展は平行棒でもあって、先日は円盤形のバランス器(平板の独楽みたいいなもの)の上に乗って、一瞬両手を離す事が出来ました。ただ、松葉杖で本格的な練習をするには、外はまだ寒過ぎるし(手がかじかむ)、第一、スリップ防止の砂利が清掃されていなくて、とても松葉杖を使える状況でないので、あと半月は歩行器が主体となると思います。
 バランスと言えば、直立した時にバランスを取る取り方が徐々に変化しているようで、昨年までは膝を棒のように伸ばして、腰だけでバランスを取っていましたが、今年に入ってから(特に先月から)膝の筋肉をもバランスに使うようになって、それを筋肉レベルで体感するようになって来ました。これは上述の膝バンドを使わない歩行訓練とプール訓練の賜物で、個人的にはやっとこのレベルまで来たんだという感慨もあります。

 4年以上前(2003年1〜2月)に遡りますが、電動式歩行器にもたれ掛かりつつも立つ事がやっと可能になって、いよいよ歩行訓練を始めようとした時に、体操療養師から言われた事が、膝関節を守る為に「膝を伸ばしすぎない」ようにするバンドを付ける事で、私とて、元気な頃にランニング等で「膝に無理をかけたら関節を痛める」という事を知っていましたから、以来、筋肉の弱い所の関節を保護すべく注意してきました(足首や手首もそうで、唯一注意が足りなかったのが、もともと特に弱い右腰)。この「関節保護」がリハビリで最重要な注意事項の一つである事は、どの病気でも同じだと思います。
 問題は、関節を守る為の膝バンドが(コルセット同じく)、関節を守る代償として筋肉の再生を妨げる事です。そのあたりの手加減具合は非常に難しく、膝の筋肉をなんとか無理無く使わなければなりません。特に私の場合は、刺激によって神経を回復させなければならない事から、単なる筋肉の回復よりも更に質的な難しさがあります。いろいろ試したものの、足のウエイトトレーニングや自転車は、膝筋肉ではなくて背筋や大腿上部の訓練にしかならず、結局、当初はプール訓練しか膝筋肉を刺激する手段がありませんでした。そんなわけで、膝筋肉(神経)の刺激は本当にゆっくりとしか進まなかった訳です。しかし、体全体のリハビリを3年ほど続けるうちに、肩や腹や腰の筋肉が回復して来て、肘歩行器に寄り掛かれば、膝を殆ど使わずに歩けるようになり、これ幸いと、昨年から、肘歩行器+膝バンド無しの組み合わせで歩き始めました。この訓練の成果が、今になって膝筋肉の回復として現れているようです。一旦回復し始めたら、1〜2年で相当に回復が進む事は経験で知っていますから、非常に喜ばしい事であるとともに訓練にも新たな意欲が沸くというものです。
 このように、新しい訓練は膝筋肉の新しい回復をもたらしていますが、それはプールでも同じです。つい1ヶ月前に始めた階段2段目(水深80cm)で手を使わずにしゃがむ訓練や、2ヶ月前に始めた階段3段目(水深65cm)での膝頭に手をついての昇降も膝筋肉に効きます。今年の目標にぴったりのメニューですが、こういうメニューが可能になったのも、膝のみならず他の筋肉がある程度回復したお陰で、リハビリに順番というものがきちんとある事を物語っています。
 プールは他に階段5段目(水深35cm)で中腰になる訓練をしていて、これでやっと膝が普通の人並みにきちんと曲がるようになりました。また、階段1段目で立ち上がる訓練も始めました。これは手放しでも可能ですが、それだと腰に無理が来るので、両手で水を一掻きして立ち上がるようにしています。立ち上がると言えば、低い椅子からテーブルに手をついて肘歩行器に立上がる事も出来るようになりました。高い机(食卓等)だと以前から両手を机について立ち上がれていたのですが、喫茶店のような低い机ではずっとだめで、それがこのほど、片手をテーブルに、片手を肘歩行器の手すりに載せてバランスを取りながら立ち上がる事が可能になりました。
 ちなみに、これに初めて成功したのが市内の喫茶店で、丁度、半年働いてくれた「当たり」介護の最後の日に、ねぎらう為に半年ぶりに行った時に出来たので、最後の最後に進展の一つが見られて満足しています。こうして彼女が辞めたあと、今日からは昔の(矢張り若い)介護が戻って来て、介護の陣容自体は、40歳代半ば、30歳代半ば、20歳代前半と引き続いて変わりません。で、各世代の介護を複数持ってみて一番感じるのが、介護というのが肉体労働だと言う事で、外を歩くこと一つをとっても、各世代の反応が全然違っていて、殆ど歩けない40歳代、寒いと言って歩くのを嫌がる30歳代、平気で歩く20歳代、という構図になっています。今日も20歳代介護という事で、さっそく外を2時間余り歩いて来ましたが、この「週末2時間歩行」というのは私や20歳代介護には当たり前でも、30歳代の介護となると天気次第で(風が吹くと1時間になってしまう)、40歳代介護に至ってはそれも無理なので、始めから彼女の時間割は平日のみに組んでいます。

 こんな具合で、体の回復もリハビリも5年半経った今でも順調ですが、それに伴なって仕事の方も忙しくなって、仕事内容だけ見れば100%働いているのと変わらない気がします。まあ、それが週35時間以内(通勤込み)で済むから、ここのシステムの無駄の無さには凄いと言うか恐ろしいと言うか、ただ感心するばかりです。なんせ移動時間というものが全く無いし、会議などの雑用も少ないですから確かに無駄は少なくなる筈です。ただし、雑用が無い訳ではありません。特に、ここ1ヶ月は(例年の事ですが)来年度予算の申請書に明け暮れて、あと、大学院生向けのコースを何故か受け持って、僕の仕事が何も出来ませんでした。そういえば、年末年始も他人名義の研究をやっていて、この半年で僕の名義の仕事をしたのは2ヶ月以下です。でも、2ヶ月もあれは幸せというのが昨今の中堅研究者の世界だし、他人名義と言っても研究には違いないので、やはり恵まれていると言うべきなのでしょう。
 理由はともかく、何も出来ない一ヶ月を何とかクリアした現在、落ち着いて今後しなければならない事を(締め切りのあるもの)をリストアップしてみると、なんと6月末まで休み無く働かなければ間に合わない感じです。これって病人の世界じゃないよな、とも思いますが、半分は自業自得でもあるので文句の行き先がありません。まあ、病気にならない程度にリハビリで精気を養いながら、出来るだけ気楽に処理しようと思います。何が悪かったかと思い返すと、太古地球のモデル(生命の起源がらみ)と、 二酸化炭素問題 と、それに絡んだ次期ESA(欧州宇宙機構)宇宙ミッション(2020年頃)の提案に手を染めてしまった事で、特に宇宙ミッションは、今にしてみれば提案なんかするんじゃ無かったとは半分思うものの、他に誰も提案しないような内容(化石燃料消費に伴う大気の宇宙流出の変化)なので、諦めて正式な提案書を書かざるを得ない気分です。まあ、体がノーと言えば諦めるだけの話ですが(注、結局、政治判断で今回書くのは見送りになりました)。
 そんな訳で、とても日本に旅行している暇はなく、取りあえずは9月のフランス出張に専念し、その後に日本行きの時期を考え始めるのが無難な気がします。ここまで分からなくなると、いっそのこと、飛行機の中で自力でトイレに行けるようになるまで次の日本行きを延期した方が、リハビリの目標として良いかも知れません。もちろん、今年の秋にも可能かも知れませんが、これは全く分からない訳で、無理をしないという原則に基づけば、この目標を来年に設定するのが無難だろうと思います。果たして、来年秋までに飛行機のトイレに行けるようになるか? もっとも、そんな遠い目標の前に、取りあえずは、今週木金(1泊2日)のストックホルム出張と日曜の合唱発表会をクリアーしなければなりません。

 最後に軽い話をいくつか。一つは、久々にコンサートを聴きに行った事で、スウェーデンで20年以上活動している Real Group というアカペラ5人組がキルナに来たので、(歩行器で唯一入れる)最前列中央で聴いて来ました。私がこのグループを聴くのは2度目で、前回は15年程前です。日本にも時々行っているグループで、DVDも売っているようです。オフィシャルサイトや YouTube検索 でビデオを見れば分かるでしょうが、無伴奏ながらも、アンプ(ミキサー)を巧みに利用して、ベースやドラムの音を人間の声で見事に再生して、軽い曲を沢山歌うグループで、合唱をやっている人間としては目が離せません。今回は最前列に座ったお陰で、どのようにして各種の音を誰が出しているかが良くわかり、コンサートを二重に楽しめた気がします。
 二つ目は、先月書いたNHK 衛星放送「地球アゴラ」の件で、かなり厳しい生放送条件(実質2分の持ち時間)にも関わらず、何とか一般向けメッセージが出せてほっとしています。もっとも準備の方は最後まで問題が色々とあり、誠意を持って対応して貰ったからこそ協力する気になりましたが、今後に色々な改良点を残したのは確かです。で、その時のメッセージをかいつまんで書くと、要は研究とリハビリを両立を無理無く(ボランティア無しに)出来るシステムが存在しうる、という事と、税金が事実上、保険の役割を果たしているという事でしょうが。そのうちまとめます。
 他に軽い話もちょこちょこ書いています。とにかく今年は人類初の人工衛星(スプートニク)から50年であり、国際地球年(昭和基地が始まった元)の50周年でもあって、それ記念の軽い書き物は書かなければならない気分なので、少しずつ書きためて行こうと思います。
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