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リハビリ記録その47

2006-10-3
山内正敏

 暑くて乾燥した7〜8月が終るや、8月末に突然温度が下がって一気に秋に突入し、例年にない天候不順の9月のまま、下旬からは何度も銀世界になって、例年より冬の到来が早いようです。ただ、ここ5週間は手術だの国際会議だの(2件)風邪だので、天気の善し悪しに拘らず余りリハビリを出来る状況でなかったので、余り影響はありません。

 会議は1件目がキルナで開かれた光学会議で、それ関係のvisitorの歓迎が4晩続けてあった事を除けば大した事は無かったのですが、それでも、最終日に初めて介護無し(ずっと日本人たちと行動を共にしていましたが)で100キロ離れたアビスコまで行って来たり、街から40キロ程のエスレンジ宇宙基地に病気後初めて行ってみたりしています。アビスコに介護無しで行けたのは、自力で尿袋を空ける事が出来るようになったお陰で、介護の勤務時間を気にせずに外出できるのは助かります。エスレンジ(水曜の午前中のみ)の方は会議室が最上階のエレベータの無い所だったので、トイレの度にスタッフに頼んで階段で車椅子ごど運んで貰うなど、結構不便な思いをしましたが、一応なんとかなりました。スウェーデンでも車椅子の人間が訪問しないような所ではこういう事もあります(ちなみに最上階を除けば車椅子対応になっていた)。
 こういう、車椅子に対応していない所は、昨年までなら行かなかったのですが、今年は少し違っていて、ちょっと挑戦する気分になっています。春のストックホルム出張のホテルも若干のトイレの問題がありましたが、秋の2つ目の会議(北フィンランド、1つ目の光学会議の1週間後)に至っては、ホテル兼会議場が全く車椅子に対応していないリゾートで、それがある程度分かっていたにも拘らず、車で色々運べる事を考慮してあえて挑戦しました。キルナからの距離の 510km は昨年のトロムソ(390km)に毛の生えた程度ですが、レンタカー2台で一緒に行動したので、往復とも片道8時間かかってしまいました(昨年は5時間)。さすがに腰が痛くなりました。飛行機の8時間より腰には悪いようです。
 それにしても想像以上に酷いホテルでした。会議場を目玉の一つにしている大きなホテルのくせに、ホテルの何処にも車椅子トイレが無く(それどころか、公共トイレは男女を問わず全て入り口の間口が狭くて車椅子が通らない)、ドアも全て手動式で、例えば玄関ですが、2つの重いドアの間のスペースが不十分で、介護1人だけではかなりつらいものがあります。会議場に至って完全に健康な人間の為のもので、入り口に段差が2段あるばかりか、会議場までの廊下がきつい登りと下りのスロープのペアになって、しかもその登り切ったところに重いドアがあるから、手助けが2人(一人は車椅子を支え、一人はドアを開ける)いなければ通り抜ける事すら出来ません。まあ、これがリゾートホテルというものなのでしょう。食事の内容の酷さ(昼食2000円でジャガイモとスープだけ)が過去最悪(全ての参加者が最悪と言っていた)なのもまさにリゾートで、日本のリゾートよりも酷いリゾートホテルというのが世の中には存在するようです。
 もしも何も知らずに行って、行った先がこんなでは戸惑いますが、今回は予約の際に「身障者用のトイレが無い」「会議場には段差がある」という点だけは押さえていたので、今回に限ってはリハビリの成果として何処まで出来るかという挑戦の意味合いもあり、結果としてトラブルが無かったので、余り文句はありません。しかも、今回は会議自体が2日半と短かったので、出来ない事は省略して我慢すればよく、結局、良い経験(自信+教訓)だけが残ったと思います。

 一番問題になった事(というか今後への留意点)はトイレで、これは何度旅行しても変わりません。とにかく、館内で唯一行ける入れるトイレが自室のトイレだけで、しかも会議場から自室に行くのに介護1人では足りない訳ですから、結局、昼食以外の休憩時間にトイレに行く事は諦めざるを得ませんでした。如何に車椅子非対応とは言え、これはちょっと予想外で、午前も午後も4時間以上トイレを我慢するのは、講演に集中するという意味では良いものではありません。自室のトイレとて全然身障者向けでなく、たまたま車椅子がギリギリ入る広さでしたが、入り口の段差がきつくて、今みたいにかなりの腕力が無いと出入りにすら支障をきたします。もちろん手すりのようなものがある筈も無く(これは前もって分かっていた)、大きな方はキルナから持って来た歩行器で移動して用を足しておりました。
 もっとも、車椅子対応が全然駄目なのはリゾート内だけで、一番近い街(30キロ離れている)は完全に身障者対応でした。キルナへの帰りに立ち寄った観光街もそうでしたから、リゾート以外は問題ないようです。例えば、最終日の昼食/夕食を食べたレストランもそうで、この日は介護を連れずに往復8時間かけて(片道80キロだけど、あちこち立ち止まった為)ロシア国境まで行って来たのですが、この日の方がトイレに関しては会議中より余程楽でした。トイレというか身障者対応はリゾートだけの問題のようです。ちなみにロシア国境を見るのは今回が初めてで、立ち入り禁止地帯(国境の両側2キロほどが立ち入り禁止)のすぐ外からロシア領内とおぼしき小屋等を川越しに眺めておりましたが、いや、北欧どおしの国境と全然違ってロシア国境というのはそれだけで雰囲気があります。そのうち国境を越える日もあるでしょう。
 日程自体は4泊5日と楽なものでしたが、車での8時間移動が3日もあったので、身体的にはハードスケジュールで、これに2件の発表(2件目のレビューは出発前朝5時までかかって準備が終らなかった)があった訳ですから、1つ目の会議が無くてもくたくたになっている所です。本来なら、帰り次第1週間の休暇を取るべきですが、2つ目の会議の参加者の一人が、そのままキルナに滞在して色々と共同研究の打ち合わせをした為に、休暇を2週間延ばして(=今週)、会議から帰った後もフルで仕事をしたら、無理が祟って、その翌週(先週)はとうとう酷い風邪を引いてしまいました。たまたまインフルエンザが市内で流行っていて、それに罹ったらしく、10日経った今もまだリハビリが再開出来ません。疲れだけの風邪なら数日、疲れていない時のインフルエンザでも数日で治るのですが、両方となるとさすがにきつい。今にしてみれば、訪問者を無視して休暇を取るべきだったと後悔しています。そもそも、無理のし過ぎでギランバレーにかかったのですがら、その教訓を生かすべきで、先月のような無茶はしてはいけません。結局、身障者に全く対応していないホテルでサバイブする方法より、この事が今回の出張の最大の教訓のような気がします。

 会議以外で大きい事といえば手術がありました。排尿機能のない(リハビリ中の)私は、4年前に下腹に穴をあけて、尿管を膀胱から直接出しているのですが、服が擦れたりと、常に刺激があるため、次第に(良性の)腫瘍が拡大し、それが余りにも大きくなったので、今回初めて、その腫瘍を摘出した訳です。簡単に済むと思っていたら、執刀開始から縫合終了まで30分以上(膀胱部1針、腹部4針)の大手術になってしまいました(4年前に穴をあけた時の方が早く終了した)。取り出した肉塊は想像以上に大きく、直径2センチほどで、念のために現在検査に出しています。
 この手術をしたのが1回目の会議の前半で、かなり大きい手術だったにも拘らず、その夜から3夜連続夕食会(手術当日はミーティングを兼ねていた)で、手術の3日後にはアビスコに行っている訳ですから、無茶と言えば無茶ですが、別に体を動かす訳でないので、影響は無く、傷口は今でも奇麗なままになっています。ただ、腫瘍が再び出来るのは避けられないので、それが拡大しないようにする対策が頭の痛い所です。尿管の問題はそのままプール用のパンツの問題(水が傷口に入るのを防ぐパンツ)でもありますが、今まで使っていた製品(シリコンパンツ)が痛んだので、新しく注文した所、旧製品は製造中止となり、新しいタイプは不十分で水が入って来るため、この対策も頭痛の種となっています。

 さて、今年の旅行が終ったので、来年の話(準備は早い程良い)ですが、5月末/6月上旬当たりに日本行き(宮崎/福岡)、9月にフランス出張を予定しています。そういう心づもりにしていたら、これらの旅行の予定を立てるのに大きな影響のある新しいEU規則がここ数日のうちに2つもなされて(但し、片方は以前のEU決定が来年1月1日の期限を前に騒がれるようになったらしい)、ちょっと戸惑っています。一つは機内持ち込み(セキュリティー通過)の制限で、特に液体100ml以内というのは、消毒液など、かなり多くの人が困るような気がします。幸い、飛行機は何度か経験済みで、消毒液が大量に必要な訳でもなく、荷物の量も大体分かっているので、何とか対応出来るとは思いますが、不便になるのは否めません。
 もう一つは労働時間の新規定で、曜日によらず、仕事の終業から翌日の始業まで11時間あけなければならないというものです。これは介護のみならず全ての病院にも(研究所ですら)影響の出る決定で、スウェーデンの病院の場合、大抵は午前シフト(6時半〜15時)と午後シフト(13時〜21時半)を交互に繰り返す仕事表なのですが、これが不可能になります。私の場合、現在週末を7時〜22時(途中連続3時間休憩)という1人シフトにしているのを8時〜21時にしなければなりません。幸い、この夏以来、介護無しで夜を寝るようにしているので、キルナにいる限りは新しい規則に対応出来ますが、出張や旅行となるとそう言う訳には行きません。とにかく、もしも例外規定が無ければ、海外出張が事実上不可能になる(=常に介護を2人連れて行かなければならない)訳で、身障者の事を考えれば例外規定が無い筈がないですが、少なくともキルナ市の担当者は例外規定を知りません。そんなわけで現在、例外規定の有無を調査中です。どう転ぶにせよ、旅行等にかなりの制限がつく事は確かです。

 最後に軽い話です。先週、お茶会用にスライドを作りましたので、暇を持て余している方はどうぞ。pdf 17ページ( 300KB )で、登場人物が2名出て来ますが、いずれも研究所の教授(一人は元所長)です。
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