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リハビリ記録その46

2006-8-27
山内正敏

 キルナに来て初めての(或いは観測史上はじめてかも知れませんが)温暖乾燥夏で、特に8月は朝から雨という日が1日しかなく(しかもほぼ毎日最高気温が20度前後)、毎日平均4時間以上外に出て3輪自転車か歩行訓練をやっておりました。日焼けも十分にしたので、今冬は余り風邪を引かずに済みそうです。しかし、その夏休み特別訓練モードも終わり、 1週間前から新学期が始まって、明日から研究所で学会、1週空けて半月後からはフィンランドで学会、と、トレーニングどころではない日々を控えております。

 それにしても良く歩き回った8月でした。過去4週間の練習量は、連続1キロ以上の練習だけを見ても
7/31-8/6: 松葉杖3km、歩行器18km、肘歩行器(膝バンド無し)2km、3輪自転車19km
8/7-13(プール再開2回): 松葉杖8km、歩行器17km、肘歩行器(膝バンド無し)4km、3輪自転車25km
8/14-29(プール2回): 松葉杖2km、歩行器38km、肘歩行器(膝バンド無し)10km、3輪自転車29km
8/21-27(プール2回、新学期): 松葉杖2km、歩行器20km、肘歩行器(膝バンド無し)21km、3輪自転車18km
トータル(プール6回):松葉杖15km、歩行器93km、肘歩行器(膝バンド無し)37km、3輪自転車92km
という具合で、歩行だけで150キロ、自転車が90キロという量になります。
 私にとっての歩行は普通の人のジョギング以上の労力で、ようやく、マトモに練習をしたという気分に浸った夏でした。これだけトレーニングして成果が出ない筈が無く、ほんの2ヶ月前と比較しただけでも
 普通の松葉杖:最長1時間(1キロ)、時速1キロ弱 → 最長2時間半(4キロ)、時速1キロ半
 普通の歩行器:最長3時間(7キロ)、時速3キロ → 最長休憩込み5時間(15キロ)、時速4キロ半
 肘歩行器(膝バンドなし):最長1時間半(2キロ)、時速1キロ半 → 3時間半(7キロ)、時速2キロ半
 3輪自転車:最長1時間(平地9キロ) → 最長1時間40分(坂道15キロ)
という具合に大きく進展しています。このうちの歩行器15キロというのは1週間前の土曜日に弁当を持って遠足に出かけたもので、途中からは舗装道ながらも車止めの向こう側を片道40分程歩いていました。車止めの向こう側ですから、最後にそこに行ったのは病気の前(5年前)で、懐かしい景色を楽しんだのは言うまでもありません。車で行けない所が歩けるのですから、次の目標は、松葉杖で山道という事になります。2年後には可能な気がします。
 夏の後半は膝バンドを使わない訓練(肘歩行器)を増やしています。膝バンドが使えるようになったので7月は松葉杖をよく使いましたが、腰のバランスに自信がついてきた今となっては、むしろ次のステップとして、膝を支える筋肉のリハビリが最重要課題です。そういうわけで、肘歩行器が増えました。ちなみに、上記には算入していませんが、プール訓練をすろ際も、膝バンドなしで病院に行くようになりました。雪の降る前に出来るだけ自信をつけて、雪の上でも膝バンド無しで歩きたいものです。
 プールの方は、1ヶ月半ぶりの再開なので6月に比べて若干劣っている事を覚悟していましたが、夏の各種訓練が充実したものだったお陰で、6月に出来た事は再開後も出来ていて、今は更に新しく潜水の訓練を始めました。とはいえ、尿管を保護する為のシリコンパンツに空気が入ってしまうので、なかなか上手く潜れず、未だに1メートルしか進めません。脚力と腕力が全然足りないと痛感します。と同時に潜水が目標として良いとも感じています。

 充実したトレーニングのおまけとして、体重が4キロ近く落ちた事も報告しておきます。重いギランバレーにかかった人の大多数が、筋肉を失った反動として脂肪だけが身体につく「実質」肥満の問題を抱えており、その原因の一つに、おせっかいが、見た目の痩せているのだけを見て「食べろ食べろ」と騒ぐ事実があります。運動神経が回復しなければ、いくら食べていくら運動しても食べたものは肉とはならず脂肪になるだけです。私の場合もその例に漏れず、元々68キロあった体重(脂肪はほとんど無し)が発病1ヶ月半で48キロに落ちた後、
2002-5 : 48kg
2002-10: 52kg
2003-5 : 59kg
2004-5 : 63kg
2005-5 : 64kg
2006-6 : 65kg
という具合に1年で10キロ、2年で15キロも太りました。神経が無いのに1年で10キロも筋肉がつく筈が無く、現に15キロ太ったあとは年に1キロのページでしか太っておらず、これがそのまま筋肉の回復と思われます。回復初期の方が回復が早いという「減衰効果」を考慮しても、回復開始後の1年は3〜4キロが限界でしょう。残りは脂肪としか思えません。という事は、体重は依然として病気前より少なくても、その半分が余分な脂肪だと考えるのが正しく、更に「筋肉に対する脂肪の比」という見方をすると、寧ろ太り過ぎの可能性すらあります。
 幸い、この夏、ようやく、気分爽快な訓練が出来るようになったお陰で
2006-7 : 65kg -> 63kg
2006-8 : 63kg -> 61kg
という具合に体重が落ちました。筋肉が確かに実感として増えていますがら、脂肪が4キロ落ちた事になります。とはいえ、今でも病気前より皮下脂肪は確かに多く、逆に言えば、確かに今まで太り気味だった訳です。減量のお陰で、身体は軽く感じ、疲れも残らなくなりました。例えば、かなりきついトレーニング(2時間クラス)を1日2回やっても今なら全然平気です。この事からも、減った4キロが全く不要な脂肪だった事が伺われます。更に、今まで甘いと感じなかった果物が非常に甘く感じられたりする特典もあり、できるだけ今の脂肪率を守るようにしたいものです。もっとも、これから仕事が忙しくなってトレーニングの時間確保が大変で、取りあえずは向こう3週間(1週間会議2つ)で食べ過ぎないようにしなければなりません。

 会議と言えば、2年前にアメリカに行った時に、不測の事態をかなり心配しましたが( リハビリその22 )、今回のイギリスのテロ未遂騒ぎを見ると杞憂ではなかったようです。機内持ち込みを制限されては、とても長距離飛行機に乗れません。だから、今回の騒ぎが2年前にあったら、アメリカ出張は確実にキャンセルになっていたでしょう。2年前でなかった事に胸を撫で下ろすと共に、戦争当事国に身体の不自由な状態で旅行するのは無謀に近い事なのだと痛感しました。

 最後に冥王星騒ぎです。いったい、惑星の研究をやっているのは惑星科学/地球科学専攻の人間であって、天文学の連中ではありません。しかるに、天文学の連中が惑星を定義してしまいました。そんな訳で、「大騒ぎ」という状況に、少なくともスウェーデンの同僚からは反発がありました。実際、今回の定義は惑星が円軌道に近い太陽系のみで成り立ち、200個以上は発見されている太陽系外惑星には当てはまりませんから、不満の残る定義ではあります。ただし、ここで異論を言っても大人げない訳で、私は天文学会の定義を科学の前進と捉える事にしました。日本の惑星科学会も、科学の1歩前進という形で今回の決定を捉えているようです。 彼らのサイト を見ると、マスコミの報道とは随分感触が違いのが分かると思います。
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