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患者から研究者への質問:GBS/CIDP 共通
(revised 2005-11)

ーーこんな事を研究してほしいーー
ーーこんな統計を取ってほしいーー


(A)分類
 GBS とか CIDP とかいうのは症候群であって、個々の病気ではないと説明されます。従って
『疾患部位(末梢神経の何処がダメージを受けたのか?)、直接の原因(どの免疫がどのような異常な振る舞いをして、神経のダメージに至るのか?)、間接の原因(どういう理由で免疫が異常な振る舞いをするのか?)が患者によって違っていて、この差違によって病気の細分が出来る』
と理解して良い筈です。となると、細分された病名によって有効な治療法も異なって来るのでは無いでしょうか? 患者の立場からしても、患者と言うのは病名が分かるだけで随分と安心できるものなので、それが細かく定義されていればいる程、安心度が違います。
 *例1a:軸索と脱髄を両方起こす完全断線型と、単純な軸索型との違いは何処まで分かっているのか?
 *例1b:これらの違いを判定する方法はあるのか?
 *例1c:回復の違いはどのくらいあるのか?
 *例2:神経の障害があるかないかだけでなく、神経のどの部位が何%障害を受けたというように定量的には検査できないのか?
 *例3:カンプロ菌以外の分子レベルメカニズムはどの程度分かっているのか?
 *例4:CIDP の多様な発症の仕方というのは、それぞれ違う原因なのか、それとも同じような原因なのか?
  *例5a:患者が最初に異常を感じてから CIDP と診断されるまでにどれくらいの期間がかかるか、その統計は取れないか?
  *例5b:同じく、CIDP の判定が出来る施設の最低条件は?
  *例5c:GBSと初診された患者の何%が実際にはCIDPか?
  *例5d:CIDP 患者の何%が初診でGBSと診断されたか?
 *例6a:CIDP の中でも、脱髄がだらだら続くタイプと、再発の時に集中的に脱髄するタイプとの区別は、どの程度判定できるのか(特に自己診断法はあるのか)?
 *例6b: 更に、この2つのタイプに対する治療方法は、一般的にどのくらい違うのか?
 *例7:神経生検で実際にどのくらい判定がはっきりしたか、について統計は無いか?

(B)末梢神経だけで説明できない症状
 GBS や CIDP は、症状も発症も様々で、その多様性ゆえに診断の確定も難しければ、患者も不安を持ち続けます。これらの多様性の系統的リストがあると非常に助かります。
 *例1:重い GBS の場合、運動神経の他に感覚神経も被害を受け、更に酷い場合は末梢神経のみならず中枢神経も被害を受けるが、これはどういうメカニズムなのか? 統計はどのくらいか?
 *例2:GBS や CIDP では人によっては視覚や聴覚に異常と障害があらわれるが、実態調査はあるのか。
 *例3:重い GBS の後遺症として分泌液の減少があるが、これは身体の総合的機能(消化・排泄等)にどう言う影響を与えるのか。
 *例4:CIDP の多様性について、リストなり統計なりは無いのか?
 *例5:現実的なCIDPの定義とは?たとえば、運動障害を伴わない感覚神経障害でも、IVIg が効けば CIDP の病名をつけるケースはあるのか?

(C)後遺症の理由
 軸索型ギランバレー(Axial GBS)の多くは後遺症を残し、その理由として『神経細胞は再生するが、細胞本体が再生しても、そこから延びる神経繊維が行き先が分からない』と云われていますが、実感としては違うように思われます。
 *例1:神経幹細胞の数や分裂能力が圧倒的に落ちた可能性はないか?
 *例2:神経幹細胞から運動神経へと分化する過程が阻害された可能性はないか
 *例3:もしも後者なら、必要以上に阻害している物質/抗体は特定出来るか

(D)神経のダメージの進行中における見かけの回復
 重い GBS の場合、神経のダメージ(断線)が進行中でも、シグナル電位に対する筋肉の反応が最適化する事によって、見かけ上回復する事(指がピクピク動くとか首が微かに動くとか)があるのではないかと思われるのですが、この件に関して研究はなされているのでしょうか?

(E)IVIg を巡って
 軽い症状の時の治療は、少しでも効果があれば別に最大効果にこだわる必要はありませんが、重症の場合は、最大効果を与える治療というのが必須になります。そこで、例えば、血漿交換と IVIg の併用とかを素人考えで思い付くのですが、これは IVIg 単独に比べて大差ないと言われています。でも、本当にそうなのでしょうか? 大差が無いという結論の根拠となる臨床統計は、私たちの知る限り比較的軽症の患者だけしか調べられていません。従って、重症患者の場合に本当に効果が無いのか気になります。血漿交換だけでなく、ステロイドとの組み合わせも興味深いところです。
 *例1:IVIg が効く理由の解明、及び IVIg と血漿交換の併用が(軽症の場合に)それほど効果が上がらない理由の解明
 *例2:重症の場合の血漿交換とIVIg の併用の効果
 *例3:IVIg とステロイドの併用について(ステロイドの種類と量、タイミング)
 *例4:IVIg にかわる薬の開発(IVIg が効く理由がはっきりしないと合成薬は難しいかも知れないが、例えば特殊な免疫抑制剤など)
 *例5:上記治療法における副作用

(F)重症患者の場合の2度目の治療について時期と方法
 呼吸器を必要とする全身麻痺が2ヶ月を大きく超えると、IVIg の再点滴の後に急速に改善する例が(複数の患者から体験談として)報告されていますが、再治療に関する文献が見当たりません。重症患者には重大な関心事ですので、なんらかの形の統計を出していただけると有り難いです。

(G)食事について
 筋肉の量に比例して必要なカロリーも減って行くと思われますが、実際には痩せているという理由だけで無理矢理余分に食べさせられる例が多い様です。その結果、数年後に成人病が問題になる話も聞きます。実際のところ、必要なカロリーというのは、理論的にも臨床統計的のもきちんと分かっているのでしょうか?

(H)予防について
 軸索型GBSの場合、日本では鶏肉を控えろと言われますが、ヨーロッパではそんな事は言われません。そもそもカンプロ菌など自己免疫の原因物質を完全にシャットアウトすることは不可能な筈で、抗原以外の原因がある筈ですが、それに関するアドバイスは見かけません。
 *例1:抗原が悪いというより、免疫の異常に反応してしまう事に問題があると思いますが、その対策はどうなっているのでしょうか?
 *例2:過労、精神的ショック、ストレス、睡眠不足、不摂生等、免疫を異常にするファクターはたくさんありますが、そのうちどれが一番悪いのでしょうか? ストレスと過労とどちらかを選ばなければならない事態と言うのは人生で往々に遭遇しますが、その場合、どちらを選ぶべきなのでしょうか?

(I)手術について
 ダメージを受けて回復の絶望的(極めて遅い)部位について、移植手術等である程度生活に困らない程度に回復させる手術がありますが、一般的に手術の功罪ならびに将来の展望はどうなっているのしょうか?
 *例1:近年注目されている神経幹細胞や ES細胞(いわゆる万能細胞)を使った神経再生は、 CIDP や GBS後遺症を対象とした場合いつごろ実用化しそうか?
 *例2:移植手術の場合(例えば手指とか向こう脛)、どのくらいの成功率でどのくらいのリスクがあるのか?
 *例3:移植手術によって、自己回復の能力が落ちる事はないか? たとえばリハビリの効果が落ちるリスクはないか?

(J)予後について
 *例1:各種(軸索型、脱髄型、完全断線=軸索脱髄型)タイプによる違い。
 *例2:年齢別では?
 *例3:体の部位別では?
 *例4:各筋肉で、正常な神経線の数の何パーセントが復旧したら、普通の機能を得られるか?
 *例5:断線型で、もしも少しでも神経が回復した場合、その神経の束(神経線の数)はどのくらいのペースで太くなるか? 特に回復開始が遅れた場合はどうなのか?
 *例6:リハビリの効果はどのくらいあるのか?
 *例7:成人病/内臓疾患になる確率が増加しないかどうか?
 *例8:老化(老人介護への依存)が早まる事はないか?

(K)リハビリの方法
 *例1a:各種(軸索型、脱髄型、完全断線=軸索脱髄型)タイプによる違いというのはあるのか?
 *例1b:症候群別(ギランバレー、CIDP、MS)で対応は確立しているのか?
 *例2a:指のリハビリ法(予防的)
 *例2b:指のリハビリ法(既に変形してしまった場合)
 *例3:1日当たりの最低リハビリ量とは
 *例4:積極的なリハビリと単なる使用訓練との違い
 *例5:関節の模型を神経内科やリハビリ科に置いて、関節に関する知識を患者にも持ってもらうようなシステムは出来無いか?
 *例6:ギブスの功罪(関節の変形を防ぐにはギブスは役立つかもしれないが、変形した関節を元に戻すのにはギブスは逆効果ではないのか?)

(L)リハビリ時の安全監理/留意点
 リハビリは最低量をこなさなくては効果が十分に上がりませんが、かといって多過ぎでも筋肉を傷めて回復を遅らせると聞きます。でも、そのさじ加減が不明瞭です。確かに適量というのは、人によって、症状によって、リハビリ段階によって違いますが、だからこそ目安になる上限(これ以上はいけない)というものが、症状別にあると助かります。適量以外にも、色々な留意点がありますが、これも症状別にあると助かります。
 *例1:中枢神経疾患(脳梗塞とか)のリハビリと末梢神経疾患のリハビリで配慮すべき点の違いはどんな事か?
 *例2:同じ末梢神経疾患でも、一過性の神経疾患(ギランバレー)のリハビリと進行性の神経難病(CIDP、 MS)のリハビリでの留意点の違いはどんな事か?
 *例3:病気進行期と停滞期と回復期でのリハビリでの留意点の違いは?
 *例4:重症の場合、どこまでが適当な負荷か、個別の患者の違いを超えて、指標的なものがあるのか?

(M)リハビリ以外の回復法
 *例1:ビタミン B12 は効くのか?
 *例2:新薬の開発は今の知識で可能か
 *例3:針は効くのか?(効くと言う噂があるが本当か?) 
 *例4:電磁的刺激は効くのか?
 *例5:これらの未解明手法は、副作用(例えば僅かに残存する神経線を傷めるとか)はないか?

(N)CIDP 再発への対策
 CIDP の場合、慢性的な進行を如何に遅らせるかというのは重要で、例えば、再発の徴候が早めに分かったら、早期治療によって急速な脱髄をかなり防げるような気がしますが、それに関する研究は進んでいるのでしょうか? 
また、脱髄の繰り返しの防止の他に、度重なる脱髄からくる神経システム全体に渡る影響を如何に減らすかというのも CIDP患者の関心事です。特に後者の面では MS や ALS での研究が役に立つのでは無いかと期待できるのではないでしょうか?
 *例1:CIDP の完治率はどの程度か?
 *例2a:CIDP や GBS の再発の自己診断基準と言うものは出来ないものか?
 *例2b:CIDP の再発の徴候は、その慢性進行度(静穏時のダメージ状況)の度合いによってどう変化して行くのか(端的に言えば2−3回目の再発時の徴候と10回目の再発の徴候と50回目の再発の徴候の違いと言う具合に)?
 *例3:CIDP の再発の間隔はどういう分布をしているのか?
 *例4:CIDPで脱髄が進むと軸策も細くなり、神経の組成や筋組織の維持に必要な神経栄養因子が輸送されなくなると聞くが、この神経栄養因子を外から補給する事が有効かどうか?